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eスポーツってなんだ?|月刊BOSSxWizBiz

ちょくちょく耳にするようになったeスポーツという言葉。そしてコンピューターゲームのプロ、億単位の賞金、ゲームがオリンピック競技に? ──ゲーム業界に押し寄せる新たな潮流とは? 本誌・小川純/撮影・横溝敦

ゲーム界のガラパゴス化

スポーツというとサッカー、野球や陸上、水泳といったものが思い浮かぶ。しかし、eスポーツ(エレクトロニック・スポーツ)といわれてパッとどんな競技か思い浮かぶ人はそう多くはないはずだ。

「eスポーツについては、その語源から説明しないとわかりづらいかもしれませんね」

こう話すのは日本eスポーツ協会(JeSPA)事務局長の筧誠一郎さんだ。

東京ビッグサイトで開かれた「LJL 2017 Spring Spilt Final」/c2017 Riot Games, Inc. All right reserved

「日本ではスポーツという言葉は『運動・体育』ととらえられますが、本来の意味は『楽しむ・競技』というものです。そのため欧米ではチェス、ビリヤードもスポーツとして認知されています。ですから、海で行うものはマリンスポーツ、車ならモータースポーツになります。これと同様にエレクトロニックの上で行われるものはすべからく『エレクトロニック・スポーツ』で、eスポーツというようになりました」

ここ最近eスポーツが注目される理由は、産業としての将来性、経済効果の側面からという理由もある。

ゲーム産業市場調査会社の米国Nwezoo社によれば、2017年のeスポーツの売り上げは756億円と推定され、20年には1636億円になると見込まれている。公表されている14年のFIFAの売り上げは2554億円だから、この数字からもeスポーツの経済効果の高さがわかるはずだ。

「韓国ではeスポーツの大会に数万人規模の観客を集めたり、大会の賞金総額もうなぎ上りで一昨年には賞金総額が20億円を超える大会も行われました」(筧さん)

この賞金総額20億円を超えるゲームとは『DOTA2』というもので、その内容を一言でまとめると、5人対5人で相手方の本拠地を取り合うというもの。日本でゲームというと、スーパーマリオやドラゴンクエスト、最近ではスマホゲームが思い浮かぶが、eスポーツはこれらとはまったく違ったゲームなのだ。日本は市場規模ではゲーム大国だが、その内容はズレており、世界の潮流からハズれ、ガラパゴス化が進みつつある。

また、高額賞金の大会が日本で開催できない背景には、景品表示法、風営法、賭博場開張図利などの法律が壁になっていると指摘されている。

では、eスポーツのゲームというのはどういったものか。

eスポーツのゲームに共通しているのは、どのゲームも対戦型で、スタート時にレベルの差はない。そのため日本で人気のキャラクターを成長させながら進めるドラゴンクエストなどのRPG系のゲームはeスポーツにはなりにくい。eスポーツのゲームはFPS、MOBA、スポーツ系、格闘系、OCG、RTSという6つの分類に分けられる(右参照)。この6つの分類がいわば種目にあたるというわけ。

なぜ、日本は遅れたのか

なぜ、日本は世界のeスポーツの潮流から遅れてしまったのか。それには日本独特のゲーム事情が大きく関係している。

「日本には優秀なゲーム機メーカーが多く、ゲームといえば、家庭内でこのゲーム機を使って1人、もくは家族や友だちと楽しんできました。しかも、最近までゲーム機は外に繋がらないスタンドアローンなものでした。しかし、海外のゲーム市場はゲーム機とPCが半々で、PCゲームはネットが繋がったことでチャットをしながら楽しむという文化が生まれ、ネットゲームへと発達。それが他者との競技、eスポーツへと進んでいきました」(筧さん)

もちろん、日本にもPCのネットゲームがなかったわけではない。2000年代のはじめごろ、ネットワークゲームが盛んな韓国から多くのタイトルが入ってきている。しかし、メジャーにはなりきれず、マニア的な存在として受け止められていた。

その後ゲーム機もネットで繋がるようになり、スマホゲームの広がりもあって、日本のゲーム環境が大きく変わってきた。さらに「eスポーツが注目された要因の1つは、海外の素晴らしいタイトルの1つのリーグオブレジェンド(LOL)が日本に入ってきたことです」(筧さん)というのが昨今の日本のゲーム事情だ。

eスポーツの盛り上がりを肌で感じているのが、eスポーツ専門番組「eスポーツMaX」(毎週木曜日午後8時~/同深夜0時30分~再放送)を担当するTOKYO MX事業部副部長の哘(さそう)誠さんだ。

「この番組自体は14年3月から放送が始まったのですが、ここ1、2年で固定のスポンサーが付くようになっています。また、一般の方も参加できるイベントを去年9月のゲームショーと同じタイミングで開いたのですが、500人以上が集まりました。また、今年3月に行ったイベントもオールナイトイベントだったのですが、入場者は350人集まりました。番組のプレゼント応募数も朝と昼の帯番組と同じくらい寄せられ、そういう意味では、番組的にも取り組んでいてよかったというような時期にようやく入ってきたように感じています」

5月21日には東京・新宿の「フーターズ」で番組スポンサー対抗戦の公開収録が行われた。これはイベントではないが、一般客も多い中でモニターにはゲームの対戦模様が映され、戦闘が激しくなると歓声が上がるなど、ナマの現場では予想以上の盛り上がりを感じさせている。

3つの団体

ここにきて急激に動き出した感のあるeスポーツだが、実は07年に大きな動きがあった。

JeSPA専務理事で、日本野球代表「侍ジャパン」のネーミングを考案した元電通の平方彰さんが当時についてこう話す。

JeSPA事務局長・筧誠一郎さん

「07年のマカオで開催された第2回アジア室内競技大会でeスポーツが正式種目になりました。当時、僕は電通の企画業務推進部長で、電通はJOCのマーケティングパートナーだったことから、竹田(恒和)会長から、eスポーツには協会もなく、OCA(アジアオリンピック評議会)にはJOCが選手派遣をしなければならないので、電通で協会を作れないかと相談があったんです」

この話を受けて平方さんは、西村康稔衆議院議員を委員長にした「日本eスポーツ協会設立準備委員会」を設立する。

「僕はゲームについては素人ですが、スポーツコンテンツという部分では、電通の中でも経験や実績もあります。そこでeスポーツをスポーツコンテンツとして考え始めました。しかし、はっきり言ってしまうとeスポーツはゲームのスポンサーイベントなんですよね。確かに当時も人気はありましたが、ゼネラルルールはありません。そこでeスポーツを広めるにはワールドスタンダードで考えることが必要で、それを実行するには、サブライセンスや肖像権、著作権といったことも視野に入れて取り組まなくてはならないと思いました。

その後08年に韓国・釜山でeスポーツのシンポジウムが開かれた際に、こうした考えを発表したんです。また、このとき韓国の音頭で国際eスポーツ連盟(IeSF)が設立されましたが、われわれは準備委員会でしたし、こうした国際組織はゲーム大国の日本が音頭を取らないと、という思いもあり、委員長の西村さんとも相談して参加はしませんでした。

その後も将来的にはeスポーツもIOCに加盟するならワールドスタンダードな視点で考えることが重要で、ゲームの人気だけや、メーカーの意向で仕様が変わってしまうのはまずいと言ってきました。結局、その枠が越えられず、スタックした状態になっていた。しかし、世界では億単位の賞金総額の大会が出るなどして注目が高まり、とにかく前に進めようと15年に一般社団法人としてJeSPAが立ち上がったというのがこれまでの経緯です」(平方さん)

現在、日本でのeスポーツに関する団体はJeSPAに加え、日本eスポーツ連盟(JeSF)、e-sports促進機構の3つの団体があり、それぞれが活動している。そのうちの1つ日本eスポーツ連盟はこれまでに韓国人プロゲーマーに日本でのプロアスリートビザを取得させるなどの実績を残す一方、IeSFにも加盟している。

eスポーツプロチームのデトネーション・ゲーミングの代表でJeSFの共同代表理事を務める梅崎伸幸さんは次のように話す。

「JeSFは、eスポーツチームや選手を大切にしている団体で16年11月にIeSFに正式加盟しています。そのため日本で唯一の国際的なeスポーツの窓口になっています。また、超党派の議員連盟と連携して、法改正にも積極的なロビー活動を行っています。JeSPAさんからはいろいろな話はきていますが、JeSPAさんはチームや選手からの不満が多いんです。近い将来は団体を統合といったこともあるのかとは思いますが、今はお断りしています」

一方のJeSPAの筧さんは次のように話す。

「JOCにどういうかたちで加盟するかなんですね。JOCには『国内統一団体を加盟させる』という規約がありますが、ゴルフの団体は5、6ありますが、日本ゴルフ協会がJOCに加盟しています。国際大会に参加する際は団体間で話し合って決めています。そういったやり方もあるので、団体同士が仲が悪いわけではないので話し合いで決められればと思っています」

また、前出の平方さんは協会として取り組まなければならないことがあるとこう指摘する。

「日本のゲーム喫茶は風営法で12時以降の営業は禁止されています。しかし、マンガ喫茶は24時間OKでそこでゲームをやっている人がいる。こうした法律改正や健全にeスポーツを楽しめる場所を作ること。また、学校教育、例えば部活動などにeスポーツが取り入れられるような活動をしていくことが重要です」

eスポーツが動き出したとはいえ、越えなくてはならないハードルはまだ残されている。

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名経営者30人の名言・格言|月刊BOSSxWizBiz

椎名武雄 日本アイ・ビー・エム社長

「親(会社)を説得したこと。これは相当気をつかいますよ。親のいうことばかり聞いていたんでは会社はつぶれてしまう。だから椎名が言うならしょうがないやというところまでもっていくのが大変だった。これは逆に考えればよくわかる。日本の企業の海外子会社が、日本の言うことばかり聞いていたら、うまくいくわけがない。それと同じで日本アイ・ビー・エムの玄関に星条旗を掲げちゃだめなんだよ」
(1992年11月号・社名、肩書は掲載当時のもの)

75年に日本IBMの社長に就いた椎名氏は、約18年間社長を務め、93年1月に北城恪太郎氏に社長を引き継ぐことを発表、これはその直後のインタビューで発せられた言葉だ。長い社長生活のなかでの思い出として本誌に語られたものだが、「日本法人の独立性」に腐心したことがうかがえる。

椎名氏は、外資系企業でありながら経済同友会の副代表幹事を務めるなど、日本の財界にも影響力を持ち、終身雇用や顧客第一主義等、日本企業以上に日本的経営にこだわるスタイルでIBMの社会的認知度を高めた、その立役者だと言える。

親会社である本国が関与してきても、「いざとなったら、こっちも啖呵を切るからね。お前ら何を言っているんだ、これは俺のテリトリーだろう、こっちにもプライドがある」と意見を押し通したという。

99年に椎名氏は会長を退任。以降、日本IBMは2001年から12年連続で減収決算となり、リストラ・減俸に追われることになった。寂しくも12年から外国人が日本IBMの社長に就いている。

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経営者インタビュー

飲み口でろ過「浄水器を携帯する」ドイツ生まれのブリタ式発想法 ブリタ・ジャパン社長 マイケル・マギー

汗ばむ季節になり、外出先にもペットボトルのミネラルウォーターや緑茶を携帯することが多くなった。そこに、飲み口でろ過するという新発想で〝携帯する浄水機能付きボトル〟を売り出したのが、ドイツ生まれのブリタ・ジャパンだ。「そういえば」と、ブリタのテレビCMを思い出した方もいるだろう。そこで同社のマイケル・マギー社長に、販売の手ごたえや戦略、ブリタの考え方などを聞いた。

鈴木 篤 エイチ・ツー・オー リテイリング社長

キモは小型カートリッジ

── 「ブリタ」といえば、ドイツの家庭用ポット型浄水器ブランドとして日本でも人気ですが、今年2月に、“浄水器を携帯する、という新習慣”〟いうコピーで、浄水機能付きボトル、要は外出先で補充した水道水も飲み口でろ過をするという、「fill&go」(以下フィル&ゴー)を発売しました。〝おいしい水を買わずに飲めるという新提案〟というコンセプトでしたが、ここまでの販売の手ごたえはどうですか。
当初のプランニングの段階では、かなり高い販売目標にしていました。まったく新しい商材でしたので、昨年対比とかそういうものがなく、新しい市場を作り出すという意気込みです。価格的にも、割とアグレッシブな単価を設定(実売価格で2000円前後。交換式のカートリッジが3個セットで同1900円前後)したのですが、いまのところ予定通りに推移しています。今回の商品は、ボトルウォーターの市場をヒントに開発したものですが、実際に使っていただいて、ご満足いただいたという声もたくさん返ってきていますし、販売も順調ですね。

── 日本以外でも販売している商品なのですか。
台湾と欧州の一部、ドイツと英国ではすでに販売しています。特に1年ほど前から先行販売した台湾でも好評で、大成功を収めていると聞いていますし、どの国であっても、水道水の中に含まれる塩素などを除去し、美味しく水を飲みたいという欲求は、万国共通なものとしてあるでしょう。

── 商品の開発過程で苦労された点は何ですか。
さきほど言いましたように、ヒントとしてはボトルウォーターの市場が伸びているので、そういうニーズを取り込むのに我々でしかできない商品を、というのが原点でした。携帯して持ち歩く商品なので、性能は高く、しかも小型で扱いやすいものというのがキーワードです。

開発のポイントは、何と言っても新開発した、高性能かつ小型化を両立させた「マイクロディスクカートリッジ」でしょう。このカートリッジは、直径5.5センチメートルの円形で、厚さ6ミリ、さらに重さが7グラムという軽量さです。そして、カートリッジ1個当たりのろ過能力は水150リットル。これは、500ミリリットルのペットボトルウォーターで300本分にもなり(フィル&ゴーは600ミリリットル)、活性炭の表面積を合計するとサッカー場約1面分の広さに相当するのです。

── 購入した消費者の声も、ダイレクトに入ってくるものなのでしょうか。
ええ、当社では「ブリタクラブ」という20万人からの会員組織の活動を行っていて、そこから直接いろいろな声をいただいています。たとえばフィル&ゴーのキャップはヴィヴィッドなカラーで4色展開していますが、「可愛い」とか、「家族で使い分けができていい」など好評で、色に対するフィードバックが思った以上にたくさん返ってきていますね。プラス、便利で手軽に持ち歩けるということと、ペットボトルを捨てなくていいとか、環境を意識された声も上がってきています。

また、ブリタ会員になっていただいたら、会員様とのつながりを大事にしていきたいので、イベントを企画したりもしています。いまの時代は、オンラインでもオフラインでも直接、お客様から使用感やご意見、ご要望をいただける時代ですので、ありがたいですね。

ご家庭では、2リットルのペットボトルのミネラルウォーターを買い置きされるところが多いかと思いますが、ネット通販などでの宅配は別にして、お店から持って帰るだけでも大変でしんどいことですよね。そこで水道水を美味しく、かつ安全に飲めるソリューションとして、フィル&ゴーはとてもメリットが大きいのかなと思います。

── アマゾンなどで購入者のレビューを見ると、若干容器が大きいとか、飲み方を一工夫しないとゴクゴクとは飲めないといった感想や要望も散見されますが。
もちろんそうしたお声も承知しており、今後の商品展開に活かすかどうかの参考にさせていただいています。容器の大きさに関して言えば、通常の500ミリリットルのペットボトルより少し大きい程度ですが、製品の形状や容量もイノベーションの大事な要素だと思っていますので、貴重なご意見として受け止めています。

── 同じ市場ではないですが、「サントリーの天然水」など、既存のミネラルウォーター市場を取っていく考えもありますか。
同じ土俵とは捉えていませんが、一部、ニーズは重なっていますのでそこは需要を取り込めるのではないかと。ただ、その程度の話ですね。ペットボトル市場にも我々の製品にも、それぞれに役割があると思っていますし、それぞれの市場規模が大きく違いますから、おそらくほんの一部のシェアをいただけるかどうかだと思います。

── フィル&ゴーと直接、競合するような商品は、まだ出ていないですか。
数年前に、三菱レイヨンさんから「クリンスイ」という商品は出ましたが、この市場は規模としてはまだ小さいですから。実質的には、新しい市場を作っていくんだという意気込みで我々としては活動しています。

鈴木 篤 エイチ・ツー・オー リテイリング社長

オフィスでもなじむボトルデザインだ。

「水」には多くの事業機会

── もう1つ、従来展開してきた浄水ポットのほうですが、こちらも東レが「トレビーノ」という商品を出していますが、そうした競合品との差別化ポイントはどのあたりに置いていますか。
カートリッジのシステムが違ったりということはありますが、それ以外にもデザイン性や使いやすさ、利便性、そのあたりですね。そもそも、この商品カテゴリーを作ったのはドイツのブリタなので、歴史も他社より長いのです。ドイツでブリタが誕生して昨年で50年ですから、歴史もノウハウもあると自負していますし、開発の多くがドイツ本社で行われていますので、ドイツのデザインセンス、あるいはモノづくりへのこだわりも活かされているわけです。

── 商品ジャンルは違いますが、精密機器や自動車などで、ドイツ製の製品に対して、日本人の信頼感はすごく高いですしね。
はい、こだわりの多い文化だと思います。

── もともと、ドイツでブリタが創業した経緯はどんなものだったのでしょうか。
ハインツ・ハンカマーさんという方が創業者ですが、家庭で使えるろ過ピッチャーを彼が発案し、いまの製品とは姿、形も大きく異なりますが、水を、より美味しく飲むための製品を作る情熱がありました。余談ですが、彼は名前のハインツを社名にしたかったらしいのですが、残念ながらケチャップで有名なメーカーで先に、ハインツが社名に使われていたので断念し、ご自分のお嬢さんのブリタからとったそうです。ですからいまでも基本、ブリタは同族経営の企業ですが、ルーツは小さく事業を始めたという経緯ですね。

── マギー社長個人も、かなり前からブリタは使っていたのですか。
個人的にも以前から好きで、ブリタに入社することになったきっかけも、水という生活になくてはならない大事なものでありながら、日々の暮らしの中ではあまり考えずに接しているものが水ですので、いろいろなビジネス・オポチュニティがあるという思いから入社を決断しました。

── ブリタ製品はすでに、本国のドイツ以外での売り上げが全体の8割以上を占めているとか。
今後、さらにドイツでの比率は下がっていくと思います。いま現在、60カ国以上で展開していますが、成長が顕著なのはやはり海外ですね。

── その中で、日本市場の占めるボリュームはどのくらいですか。
そこは非開示ですが、メジャーな市場の1つであることは間違いありません。アジアが大きな成長マーケットだと捉えていますが、中でも味にこだわる日本のマーケットへの期待は大きいです。なので我々も、よりいまの市場を拡大することに努めていきたいですね。

── 日本では、さらにどんな展開を。
付加価値や新しい市場を作っていくことですね。既存市場の中でシェアを取り合うというよりは、まったく新しい価値を作りだしていく。フィル&ゴーは、まさにその第1弾だと思っていますけど、そういう根本的なイノベーションを目指していきます。

販路としてはかなり幅広く展開させてもらっていまして、オンラインでの販売ももちろんありますが、さらにブリタというブランドを知っていただきたい。ポット型浄水器もそうですし、フィル&ゴーも認知度がまだまだだと思っています。ブランドを知っていただき、製品も理解していただき、その良さをわかっていただくことが重要です。広告投資も大事ですが、店頭で実際に手に取ってご実感していただきたいので、量販店をはじめとした店頭販売には特に力を入れています。

「ヴィヴィッドなキャップカラーも人気の要因」とマイケル・マギー社長。

店頭での販売が特に重要

── マギー社長は過去、異業種の日本法人にいらっしゃったんですね。
かつてはフィリップス、前職ではスリーエムという会社にいまして、いまのブリタも含めてみんな、イノベーションという共通項があると思っています。前職も、基本はマーケティング系の仕事で、いかにして市場価値を作って買っていただくかの仕事を、スペシャリティにやってきています。スリーエムでの担当は文具市場でしたが、いずれにせよ、消費者が満たされていないところに、いかに新しい価値を提供していくのかが大事で、現在とは扱っている商材は違えど、ビジネスの考え方は同じだと思っています。

── その2社以外にもキャリアはあるのでしょうか。
私のワーキング・キャリアはずっと日本で、実は親が宣教師をしていた関係で北海道で生まれ育ち、日本はいまではホーム・カントリーぐらいの気持ちでいます。途中まで日本の小学校にも通っていましたがインターナショナル・スクールに転校し、大学は米国(ミシガン大学のビジネススクールでMBAを取得)。さきほどの2社の前は、ジョンソン・エンド・ジョンソンにしばらく勤めていました。

── ドイツの本社には、各国のブリタの現地法人社長が定期的に集まるかと思いますが、最近は、どんな話題が多いのでしょうか。
多様化が1つのキーワードで、製品も日本で販売しているもの以外にもたくさんあるのですが、では、どういう製品をどこで売っていけばいいのか、どういうスピードで製品ポートフォリオを多様化していったらいいのか、そのへんの戦略が大きなテーマになってきていますね。

── 長期的にみて、ブリタの成長は日本でどう考えていきますか。
ポット型と、今回のマイクロディスク型製品と2本の柱で、まだまだ成長できると思っていますので、しばらくはこれらの商品の家庭内浸透率であったり、あるいは認知度をさらに上げて、いまの数倍規模までは伸ばせると思っています。その後は、日本ではまだ発売していない製品群もたくさんありますので、その中から適宜、日本市場にもマッチするものをチョイスして、さらなる成長に向けた多様化を図っていきたいですね。

── コンシューマー向け以外に、法人向けビジネスも何か手がけていくのでしょうか。
いま現在はないですが、海外にはプロフェッショナル・ビジネスというものは存在します。具体的には業務用製品のフィルターなどですが、そういうものも1つのビジネスアイテムとして検討はしていきたいですね。ただし、急ぐこともないと思っています。

ともあれ、先ほど言いましたように店頭での販売がとても重要なので、ここで正しくお客様にブリタ製品をご理解いただき、商品の良さも実感していただくということが、プライオリティの第1になります。

(聞き手=本誌編集委員・河野圭祐)

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経営者インタビュー

SNS炎上からテロリストまでテクノロジーで社会問題を解決 菅原 貴弘 エルテス社長

菅原 貴弘 エルテス社長
すがわら・たかひろ 1979年生まれ。東京大学経済学部経営学科在学中の2004年にエルテスを創業。社長に就任。ソーシャルリスクマネジメントの領域に着目し、リスク解決を手掛ける。昨年11月東証マザーズに上場。デジタルリスクマネジメント専業の企業として初めて上場(東証マザーズ)を果たしたエルテス。創業以来、サイバー攻撃や風評被害など、テクノロジーの発展とともに顕在化したデジタルリスクの問題解決を図ってきた。昨今では官民連携して社会問題にあたるなど、注目企業に成長している。そのエルテス社長の菅原貴弘氏に話を聞いた。

デジタルリスクで初の上場

── インターネットでの炎上や風評被害がよく報道されるようになりましたから、企業として認知されやすくなったのではないですか。
そうですね。しかし、SNSの炎上やフェイクニュースは、昔からあった問題です。何をいまさらと感じる人も多いでしょう。ネット上には間違った情報が氾濫しているという認識は、多くの人が持っていたと思います。それがようやく社会的、政治的な問題になってきました。

── 先日もDeNAがキュレーションメディアに関する謝罪会見を開きましたが、不正確な記事や著作権法、薬機法に違反する記事があったことで問題が広がりました。
今回のメイントピックの1つである著作権は、管轄が文化庁になります。文化庁は行政のなかでも民間に介入してこない、民間と民間で決着してくださいというスタンスのところです。なぜなら、特許庁のように申し込みや登録がされる場合は権利が侵害されているかどうかの判断ができますが、著作権は書いた瞬間に生じるものなので、引用された側が言わなければわからないからです。

引用された側もネット上のすべての書き込みのなかから見つけるのは不可能ですし、効率も悪いです。見つけて訴えるとしても、自分の著作権料よりも裁判コストのほうが高くなる。取り締まりが非常に難しく、健全化も難しいと言えます。その意味で、業界全体できちんと自主規制をして、権利を侵害しないようにするしかできないでしょう。

── こういった問題でも、エルテスの出番はあるわけですか。
たとえば、発信する側の企業から、著作権がきちんと管理されるようなフローを作ってほしいといった依頼ですかね。健全化するためのフロー、または健全化したのちの文言をコンサルティングしてほしいという話はあります。特にBtoCのネットビジネスでは、行政対応の作業が非常に多いです。たとえばネット上のコミュニティの場合、児童買春や児童ポルノといったトラブルが起こらないようにすることも健全化にあたります。こうした行政の要望にも応えられるサイトにする手伝いをコンサルティングする場合もあります。

特に弊社の場合、行政対応までコンサルティングしますので、上場したことで企業の側から問い合わせをいただくことが増えている。ビジネスとしては追い風になっていると感じますね。

── SNSなどで、企業の発信の仕方に関するリスクもありますね。
現在、どういった面での批判が集中しているのか、論点を掴んでおかなければいけないですね。たとえば女性蔑視といったパターンで炎上しやすい時は、似たようなことをしていると炎上してしまいます。ある自治体での話ですが、うなぎを女の子に見立ててスクール水着を着せて泳いでいるPR動画があったところ、うなぎ養殖を、女の子を監禁しているように思わせると大炎上になってしまいました。似たようなことをしていると、炎上が飛び火して連鎖していくことになります。

── 単発で事故やトラブルが起こることは仕方ないとしても、飛び火するのは怖いですね。
食品の異物混入も大きな騒ぎになりましたが、マスコミの方も炎上させる側になってきています。食品メーカーの場合、1件の異物混入については、お客さんの間違いの可能性もあるので、公表しないんです。食品メーカーと接しているぶんには、メーカーの言い分のほうが正しいと思います。購入した方の勘違いの可能性もあるなかで、1件だけで公表して自主回収するのはやりすぎです。それを隠蔽だと責めてくる人が増えている。マスコミの方もスクープを取りに来て変質しているように思います。

日本の炎上は「妬み」から

── 仮に何か不祥事があったとして、企業としては炎上を大きくしないために、どのようなことに気をつければいいのでしょうか。
人のせいにしないのが重要ですね。現場が暴走しましたというような発信は二次炎上するケースが多いです。現場の暴走と言っておきながら、実はマニュアル通りだったことが情報として出てくると、大変なことになります。基本的には、情報収集をしっかりやって、経験ある業者の力を借りて、きちんと対応すること。企業の広報の方で炎上を何度も経験している人は、そうはいません。初めての場合は動揺して、火に油を注ぐことになる可能性もありますから。

── 企業からエルテスに依頼がある場合、広報担当の部署が多いわけですか。
そうですね。ツイッターを始めるのに、経営陣が炎上を気にするからルール作りをしてほしいとか。実は、炎上してから相談されても、できることは限定されているんです。なかったことにはできません。欧州では、言ってみれば「忘れられる権利」のような権利が認められていますが、日本は「知る権利」のほうが重要だという判例が出ています。

── 海外と日本で炎上の仕方に違いはありますか。
欧米だと、炎上は組織立っていて、匿名ではない。グリーンピースなどのように、名前や組織名を出して責めてくる。日本は陰湿で、匿名の個人が刺してくる感じです。

── その違いはどこから出てくるのでしょう。
日本は妬みのようなものが多い。個人のSNSでも、高学歴の人や大企業勤めだと、より炎上しやすい。内定を取り消してやろうとか、クビにさせてやろうとかが多いですね。企業の従業員や従業員の家族から炎上することもあります。例えばタレントが来店したとか、誰と誰がカップルで来ていたとSNSで上げる。ちなみに、女子高生のツイートで、その父親の企業が特定され、会社を辞めざるを得なかったような話も聞きます。

※エルテスが設立したデジタルリスク総研のレポート記事のアクセスランキング。ソーシャルリスク分野に加えて、企業内部の不正や金融犯罪の検知をはじめとしたリスクインテリジェンス分野における研究を進めている。

── 企業としてはどう対処したらいいのでしょう。
従業員については、ネットリテラシーに対する教育です。アルバイトの場合、一般人と従業員の境が難しいのですが、そこを教育するしかない。昔は法人と個人は別のものとして分かれて考えられていました。でも、個人は必ず学校や会社などの組織に属しているので、現代のような炎上時代だと、どこから燃え出すのかわかりません。

── 経営者が考えなければいけないデジタルリスクはありますか。
ほとんどの中小企業の経営者の方は、ウチはリアルの業務だから関係ないと言っていたりします。実際にあった話なのですが、ある飲食店で、なぜか火曜日に客が来ないと思ったら、ネットで火曜日が定休日にされていたという話があります。ネットの風評を多面的に見ておかないと、実は機会損失を起こしている可能性があるのです。

── エルテスは人工知能(AI)やビッグデータといった新しいテクノロジーにも注力していますね。将来的な展望を聞かせてください。
いまビッグデータでテロリストを見つけるということに取り組んでいます。2020年の東京五輪に向けて、それを完成させる。我々はフィンテックならぬ国防テックと呼んでいるんですが、いまや国防は日本国内で完結していけるようにしなければいけません。こういう分野にビッグデータやAIを使って貢献していくのが目標です。

ビッグデータでは、サンプルではなく全量調査を行うので、リスクは下がります。欧米ではすでに実現してますので、日本も早く整備したほうがいい。最近のテロリストはネットで犯行予告をするケースもあり、事前にリスクの高い動きをデータとして蓄積することで対応が可能になります。政府行政とも連携し、社会的リスクをテクノロジーで解決していく企業に成長したいですね。

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経営戦記

加留部 淳 豊田通商社長
かるべ・じゅん 1953年7月1日生まれ。神奈川県出身。76年横浜国立大学工学部電気工学科卒。同年豊田通商に入社。99年物流部長、2004年取締役入り。06年執行役員、08年常務執行役員、11年6月末より現職。学生時代はバスケットボール部に所属。座右の銘は着眼大局、着手小局。

近大とマグロ養殖でタッグ

〔昨年、豊田通商が近畿大学と提携して卵から育てるマグロの“完全養殖”事業に参入(養殖事業そのものは2010年に業務提携)するというニュースが大きな話題になった。11年に同社の社長に就いた加留部淳氏は、就任後初めての出張が近大水産研究所で、同研究所の宮下盛所長と意気投合。今後は豊通と近大のタッグで完全養殖マグロの生産を順次拡大し、海外へも輸出していく計画だ〕

もともと当社は人材育成には力を入れ、いろいろな研修プログラムを用意していますが、その中に若い社員の事業創造チャレンジのプログラムがあるんです。自分たちでまず研究し、社内外の先輩や識者の意見も聞いて新事業案を作らせるものですが、その過程で「ぜひ、近大さんの販売や養殖のお手伝いをしたい」と提案してきた社員がいましてね。

面白い事業プログラムだったので、当時の経営陣が「やってみろよ」と。で、動き始めて実際に予算もつけ、近大さんにもお話をしに行ってというのがスタートでした。こういう社内提案制度は、起業家精神の醸成にすごく必要だと思います。もう1つ、マグロの漁獲量が減る一方で、需要は日本や東南アジアを中心に増えているわけですから、商社のビジネスとして意義がある。会社としてもやる意味があるし、若い社員を育てる点でも有効、その2つの観点から全面的にバックアップしています。

もちろん、ほかの商社でも水産系ビジネスには力を入れています。その中で、我々は違う土俵で戦うケースもありますし、どうしても同じ土俵の時は、真っ向勝負だと当社の企業体力では勝てないわけですから、戦い方を考えないといけない。そこは全社員と共有しています。そういう意味でも、他社が手がけていないマグロの完全養殖事業は非常に面白いビジネスですね。

近大とマグロの完全養殖事業で提携。左端が宮下盛・近大水産研究所長、右から2人目が加留部社長(2014年7月の会見)。

〔近大とのタッグは話題性が大きかったが、豊通という会社全体として見れば1事業の域は出ていない。これに対し、加留部氏が12年末に決断した買収案件は全社横断的な規模だ。当時の為替レートで同社では過去最大となる、2340億円を投じて買収したフランスの商社、CFAO(セーファーオー)がそれ。CFAOは、30年には中国を上回る巨大市場になると目されるアフリカ市場で強固な事業基盤を持ち、とりわけフランス語圏の多いアフリカ西側地域で圧倒的な商権を持っている〕

過去最大の投資ですから、我々もものすごく慎重に考えましたし、私も実際に現場を見に行きましたが、先方も傘下の自動車販売会社の修理工場とか、結構オープンに見せてくれましてね。当社とはDNAが合いそうだなと。

もう1つ、彼らは自動車関連事業以外もたとえば医薬関係、あるいはオランダのハイネケンと一緒に合弁工場を手がけるほか、BICブランドのボールペンなど、プラスチック成型品の生産なども手がけていて当社と親和性が高かったのです。

海外に商社という業態はあまりないですが、彼らは自分たちのことをはっきり「商社だ」と言いますから。ですから豊通がやっている事業はすぐに理解してもらえましたし、右から左のトレーディングだけでなく、彼らは工場を持ってモノづくりまで踏み込んでいるので、(トヨタグループの豊通と)お互いの理解はすごく早かったですね。

唯一、気になったのは若手社員の意識でした。若い社員が果たしてアフリカの地でビジネスをやってくれるのかどうか。そこで数人の若手に聞いてみたところ「この買収案件はいいし、アフリカは将来、伸びる市場だからやりましょうよ」と。そういう声に最後、後押しをしてもらえたようなところもあるんです。“一人称”という言葉を当社ではよく使うんですが、一人称、つまり当事者意識をもってやっていく気持ちがあるかどうかが大事ですから。

独自戦略を掲げる加留部氏。

フランス商社買収で攻勢

〔前述したように、CFAOは歴史的にアフリカ西海岸エリアの市場を得意とし、豊通は東海岸に強みを持っていたため、エリア補完も綺麗に成立した〕

地域的、事業的な割り振りで言えば、自動車関係はお互いの強みなのでしっかりやっていこうと。アフリカ西海岸で当社が細々とやっていたテリトリーは全部、CFAOに渡しています。物流の共通化なども進めて、お互いの事業効率を高めてきていますし、トヨタ車の販売や物流もCFAOと一緒にやっています。

当社としてはマルチブランドを扱うつもりはあまりなくて、トヨタと日野自動車、スバル(=富士重工)の商品を扱うわけですが、CFAOはマルチブランドなので、たとえば今年、アフリカでフォルクスワーゲンとのビジネスも決めました。

当社はケニアでトヨタ車を扱っていますが、CFAOはケニアにVW車を持ってくるわけです。CFAOは豊通の子会社なのにと一瞬、矛盾するような印象を持たれるかもしれません。我々はトヨタ車で現地シェアナンバー1を取りたいけれども、彼らもVW車でナンバー2を取ればいい。そういう組み合わせみたいなものができてくると思うんです。

いずれにしても、自動車関係のビジネスはお互いに共通しているので、この分野はオーガニックな成長で伸ばしていけるでしょう。一方、医薬品関係はいま、彼らもどんどん伸ばしていて、我々も日本の製薬メーカーを紹介したりといったサポートをしています。

〔豊通がCFAOを買収したことで、新たな効果も表れてきている。たとえば、前述したCFAOが合弁で手がけるハイネケンの工場運営会社。豊通の傘下に入る前は、CFAOの株主が収益はすべて配当で還元してほしいと要請していたため、新しい投資ができなかったのだが、豊通が入ったことでロングタームで事業を見るようになってくれたのだ〕

私もハイネケンの合弁会社社長に会って話をしました。先方も理解してくれて、生産国もコンゴだけだったのを別の国でも展開しようという話に発展しましたしね。さらに、フランス大手スーパーのカルフール。CFAOがカルフールとの合弁でコートジボアールで店舗を出しますけど、これも私がカルフールの社長とお会いし、アフリカ8カ国で展開することを決めました。

日系メーカーとではこんな事例もあります。ヤマハ発動機のオートバイを生産する合弁会社をCFAOがナイジェリアで作るのですが、彼らもヤマハとのお付き合いは従前からあったものの、それほど深かったわけではありません。

一方で、我々は日本でも(ヤマハと)いろいろなビジネスをやらせていただいているので、この合弁話を提案したら了承してくださり、出資比率も50%ずつでOKしてくれたんです。CFAOは豊通の資本が入っている会社だからと、全幅の信頼を置いていただけた。普通は、日本のメーカーが現地へ出るのに50%ずつというのはあまりなく、イニシアチブは日本のメーカー側が取るものだからです。

そういうCFAOとの協業ロードマップは10年スパンで立てていまして、私もCFAOの首脳もお互いに行き来しています。フェース・トゥー・フェースで、年に4回ぐらいは顔を合わせているでしょうか。それ以外にも毎月、テレビ電話での会議も1時間半ぐらいかけて実施し、いまの経営課題や将来の絵図などをお互い共有化するようにしています。

〔豊通には、TRY1という経営ビジョンがある。これは収益比率として自動車と非自動車の割合を均等にしていき、さらに20年にはライフ&コミュニティ、アース&リソース、モビリティの3分野の収益比率を1対1対1にするというものだ。CFAOをテコにしたアフリカビジネスの拡大も、TRY1計画達成に寄与する部分は大きいだろう〕

いまでもCFAOは1億ユーロぐらいの純利益を上げていますから、それだけでも我々は彼らのプロフィットを(連結決算で)取り込むことができますし、プラス、将来的な絵図という意味でも、お互いにステップ・バイ・ステップで各事業を伸ばしていくことで、TRY1の実現にすごく貢献するはずです。

〔総合商社といえば近年、資源ビジネスで荒稼ぎしてきたイメージが強かったが、資源価格の市況に大きく左右されるリスクがあることは、住友商事や丸紅が資源価格の大幅な下落などで多額の減損を強いられたことでも明らか。とはいえ、こうしたリスクテイクは、総合商社にとってはいわばレーゾンデートルでもあり、投資するしないの判断は難しい〕

資源といってもいろいろあると思います。いまさら石炭や鉄鉱石の採掘ビジネスにお金をガンガンつぎこんでもダメ。また、シェールガスやシェールオイルも私が社長になった頃に他社がみんなやり出して、社内でも「やりたい」という声が多かったのは事実です。でも、よく調べてみたら、当社はすでに周回遅れ、しかも1周でなく2周も3周も遅れている。「これでは高値掴みしてしまう可能性があるし、投資金額も大きいのでやめておきなさい」と、社内でかなり明確に言いました。

ですから、我々はもっとニッチで別な土俵で勝負していこうと。たとえば、チリで開発しているヨード。これはイソジンのうがい薬、レントゲンを撮る時の造影剤でも使うんですが、ヨード産地は日本、米国、チリと世界で3カ国しかありません。当社はその全部の産地で開発拠点を持っているので、将来的には取り扱いシェアを15%まで高めたいと考えています。

ほかにも、アルゼンチンではこれからの自動車ビジネスに直結する、リチウム関連の鉱山事業を昨年から始めましたし、豊通らしさというんでしょうか、ニッチキラーでもいいからウチらしさが出て、かつ上位の商社とも十分に戦えるビジネス分野でやっていこう、というのが当社の基本ポリシーです。

〔目下、前述したTRY1達成に向けて歩を進める豊通だが、現在の非自動車ビジネス拡大の基盤を整えたともいえるのが、06年に旧トーメンと合併したこと。トーメンが持っていた化学品や食料といった主力事業分野を得たことで、総合商社としての幅が各段に広がったのだ〕

実際、事業ポートフォリオが広がって、合併は結果として大正解でした。エネルギーや電力関係のビジネスはいま、一部を除いてすごくうまくいっているんですが、こうしたジャンルは豊通のままだったら絶対に出てきていないビジネスですね。

豊通はもともとが自動車関連ビジネスメインでしたから、農耕民族なんです。畑を耕して種をまいて、雑草をとって肥料や水をやってと。それが狩猟民族(=トーメン)と見事に化学反応したという感じ。狩猟民族の人も農耕民族から学んでもらえたし、お互いの良さを認め合ってすごくいい合併だったと思います。

業界ランクには興味なし

〔加留部氏は横浜国立大学工学部出身だが、就職活動では「とにかく商売がやりたくてしかたがなかった」と述懐するように、入社試験は商社しか受けなかったという〕

私は1976年の入社ですが、当時は就職が全般的に厳しくなり始めた頃で、「商社冬の時代」になりかけていた難しい時期。各商社とも採用人数を絞り、狭き門になっていました。それでも私はとにかく商社に行きたくて、最初に内定をくれたのが豊通だったんです。商社としては規模は小さいけれど、その分、若手にも仕事を任せてくれるんじゃないかと。トヨタグループだから財務基盤もしっかりしていましたしね。

〔豊通入社後は3年目に米国駐在となり、米国でのビジネスで5年間揉まれて逞しくなった後に帰国。国内で6年過ごして結婚後、再び渡米して9年間駐在した。こうした国際経験豊富な加留部氏だけに、昨年からは入社7年目までの社員を対象に、駐在でも長期の研修でも語学留学でもいいから、とにかく一度、海外へ出ることを奨励している。

ただし、加留部氏はほかの商社との戦いにおいては、純利益で何位といった相対的な物差しでなく、あくまで豊通としてどうなのかという基準で考えると強調する〕

2年か3年前、社員みんなにメールを打った時に触れましたが、何大商社とか何位であるとかは、私はまったく関心がないんです。自分たちが目指す方向に向かえているかが大事ですから。たとえば敵失があって他社の順位が下がったとします。仮に順位を純利益で測ったとして、「他社が失敗してウチが5位になったところで君たちは嬉しいか? 私は嬉しくないよ」と。

社員向けのメッセージメールは年に8回か9回出していますが、ある時、新入社員から「何位を目指しますか?」という質問を受けた時も同じことを言いました。各社ごと、事業ポートフォリオがかなり違いますし、順位は関係ない。自分たちのビジネスがどうなのか、常にそこを自問自答し検証することが正しい道だと考えます。

(構成=本誌編集委員・河野圭祐)

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星野リゾート全国展開の「起点施設」リゾナーレ八ヶ岳がフルリニューアル 星野リゾート リゾナーレ八ヶ岳 総支配人 長屋 晃史

百星野リゾートが手がける運営施設は、海外も含めるとすでに37施設(今年5月末現在)を数え、来年度中には大台の40施設を超えそうだ。その中で、同社の知名度が全国区になっていく起点になったのが本稿のリゾナーレ八ヶ岳である。

ワインリゾートの“深化”

1914年に開業した、星野温泉旅館をルーツとする星野リゾートは、長野県・軽井沢が発祥の地。同社が、軽井沢を飛び出して初めて再生事業に乗り出したのが2001年で、それが現在のリゾナーレ八ヶ岳だった。この施設は、もともとは総合スーパー大手のマイカル(かつてはニチイ)が1992年に山梨県北杜市の八ヶ岳山麓に開設したリゾナーレ小淵沢が前身だが、経営危機に陥ったマイカルはリゾナーレ小淵沢を手放さざるを得なくなる。そこで手を挙げたのが星野リゾートである。

リゾナーレ八ヶ岳の総支配人に2年ほど前に着任した、長屋晃史さんはこう振り返る。

ワインリゾートを〝深化〟させた長屋晃史さん。

「この施設は、世界的に有名なマリオ・ベリーニ氏というイタリアのデザイナーが手がけたデザイナーズホテルですが、当初は会員制でターゲットはカップルだったと聞いています。コンセプトイメージはイタリアの中世山岳都市ですが、夏とゴールデンウィーク以外はまったく人が来ない状況で、当時は売り上げも20億円程度と損益分岐点に乗っていない状況だったようです(現在の売り上げは昨年で43億円と倍以上)。そこで、01年に当社が取得してからはまず、施設の新たなコンセプトメイクや無駄な部分を削ぎ落とし、市場調査にも力を入れていました」

結果、ターゲットをファミリーに変えたのだが、当地は、言うまでもなく全国有数のぶどうの産地。そこで06年からは「ワインリゾート」というコンセプトを打ち出していった。

「ファミリーといっても、特に30代、40代のお母さんの世代の女性から圧倒的な支持をいただくことを目指し、八ヶ岳の素敵な暮らしをコンセプトに、こうしたお母さんがたの快適な滞在もキーワードに掲げていました」(長尾さん)

ただ、施設そのものは開業してから今年で25年、ワインリゾートを全面に掲げてからでも昨年で10年が経過している。2年前に長屋氏が着任した頃は、リニューアル投資の案を出し始めていた時期でもあった。

ぶどうの壁画を配したYYgrillの客席。

「私が実際にここへ赴任してみて気が付いたのは、ワインリゾートという割には、イタリアンレストランもワインハウスもスパも、ワイン好きのマニアの方だけに訴求した印象でした。そうではなく、来られた方々全員がワインリゾートを体感できるものにしようと考えたのです。そこをもっともっと掘り下げていかないと、うわべだけのワインリゾートになってしまいますから」

リニューアル投資は15億円を投じ、今年1月から4月まで3カ月間、リニューアルのために全館を一旦クローズした。一番こだわったのが客室である。全部で172ある客室のうち、101室を完全なスケルトン状態にし、エアコンの入れ替えやバス、トイレなどの水回りも一新した。また、客室の内装カラーもワインカラーとコルクをモチーフとした小物でワインリゾートを表現し、全部屋に共通で、壁面にはワインカラーで描いた赤岳や横岳などの八ヶ岳連峰の絵と、山の標高も記した(上の写真中央)。リニューアル後の宿泊客から、「壁画がとても印象深い」という声が数多く寄せられているという。

外来者向けの改装計画も

このほか、客室でも気軽にワインが味わえる、客室専用のオリジナルワインタンブラーやワインオープナーも常備。さらにウッドデッキを用いた屋外テラスや小上がりフローリングの設定、星野リゾートが日本ベッドと共同開発したオリジナル寝具など、快適な滞在のための要素にこだわった。

「もう1つのリニューアルの目玉が、ビュッフェ&グリルレストランの『YYgrill』の改装です。従来よりも50席分以上増床し、ワイン樽をモチーフにしたオリジナルサーバーの設置や、ワイン木箱を用いた壁とぶどうが描かれた壁画など、空間デザインの演出にもこだわりました。さらにお客様の目の前で、オリジナル鉄器と熱した石で仕上げるグリル料理なども大変、好評です」

まだまだある。宿泊者を近隣の提携ワイナリーへ案内したり、ワインハウスでは試飲だけでなく、そこで購入したワインを宿泊部屋に持ち帰ってゆっくりと楽しめるようにもした。レストランで飲むような長い脚付きのワイングラスではリラックスしづらい、という利用者の声を反映させているのだが、それが前述のオリジナルワインタンブラーだ。

リニューアル実施後、利用者にとって気になるのは宿泊料金だが、

「多少、上げていますが、今後もお客様の満足度や滞在価値を上げながら料金改定をしていく考えです。年間を通した平均の客室単価は3万8000円ぐらい(食事等は別)ですね。稼働率もおかげさまで、年間平均で78%ぐらいあります」

右側の八ヶ岳連峰の壁画が印象的な客室。

今後の滞在価値向上についても、
「今回、レストランと客室など宿泊事業はある程度、手直しができましたので、次は外来事業を一度、てこ入れしたいと思っています。イルマーレ(施設内の波の出る大型温水プール)も25年経って、まだ大きな投資がされていませんし、あの規模のプールは近隣にはないので、もう少し進化させて外来の方々にもPRできないかと。あとはベリーニタワー、我々はセント・リゾナーレと呼んでいますが、ここもまだ有効活用がされていません。外来の方向けに、何かシンボリックなソフトを注入できないだろうかと考えています」

リゾナーレ八ヶ岳が、さらにどんな進化を遂げていくのか興味深いが、まずは新装なったワインリゾートに、あなたも一度、誘われてみてはいかがだろうか。

(本誌編集委員・河野圭祐)

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【BOSS×WizBiz】リサイクル業から 「捨てさせない屋」へ 企業在庫もきれいに処分

山田正人 日本リユースシステム社長

山田正人 日本リユースシステム社長
やまだ・まさと 1977年千葉県生まれ。95年高校を中退後、個人事業として床下換気扇訪問販売を始めて、以後寝具・リフォーム営業代行、不動産ブローカーなどに従事したのち、放置自転車買取事業、中古品・再生資源原料の輸出専門商社と提携。2004年丸和運輸機関と資本業務提携を行い、日本リユースシステムを設立。代表取締役に就任。

私たちは捨てさせない屋

── 基本的な事業内容はどういったことでしょうか。
一般的にはリユース、リサイクル屋ですが、うちでは「捨てさせない屋」と言っています。メーンは日本で行き場がなくなった中古品を、途上国に届けるというビジネスです。現在、世界32ヵ国に生き物、車、家具を除いたいろいろな物を輸出しています。地域別の輸出先は、東南アジアが6割で、残りは中東、アフリカです。

── 「捨てさせない屋」というのは面白いですね。
どうすれば使える物を捨てさせない仕組みを作るか、ということから行き着いた結果です。「自分は何屋なんだ?」と考えたときにリサイクル屋ではなく、捨てさせない屋だなと思ったんです。この仕事では売ることはあまり難しくない。むしろ集めることが難しい。そこで捨てさせない仕組みをいかに作るかが勝負だと、1年くらいやってわかったことです。

── リユース事業というのは、どういったところがポイントになるのですか。
どこのだれから品物を集めるかでまったく変わります。当社はリユースになるわけですが、物流屋でもあります。実際、どこの国で何がいくらで売れるかは決まっています。ですから、500円でしか売れない商品を、1000円かけていては損をしてしまう。そこでどうコストを落とすか。これはロジスティクスにかかってきます。そこで当社では桃太郎便の丸和運輸機関さんから出資を受け、配送を終えて空荷になったトラックで回収してもらい物流のコストを抑えています。

また、商品をどこから集めるかについては、BtoBかBtoCかで違ってきます。エンドユーザーから商品を集める場合は、お客さまに喜んで物を出していただけるような仕組み作りがポイントです。

当社の現状はBtoBとBtoCの比率が7対3ですが、将来的にはこれを逆転させたいと思っています。前にも言いましたが、リユースビジネスではどうやって売るかではなく、どう集めるかですからね。

── 古着でワクチンというのも、その1つの方法ですか。
これはCSV(Creating Shared Value=社会的価値と経済的価値の共通価値の創出)というビジネスモデルです。リサイクル屋が買取りますといっても、持ってきてくれない人たちがたくさんいることに気がついたんです。

そういう方でも、リサイクルショップに持ち込めば売れるかもしれないと思っています。でも、お客さまとしては自分の思い入れのある服や、それなりの金額で買った服をリサイクルショップで二束三文で引き取られたら気分が悪いですよね。とはいえ、捨てるに忍びない。

ですが、それがだれかの役に立つのであればというような動機付けをすることで、品物を出してくださる方はいらっしゃいます。募金箱にお金を入れた瞬間、何かいいことをしたという気分になれるのと同じようなものです。

そういう方たちにはどうしたら物を出してくれるだろうかと考えた時に出た1つの答えとして、物を出すことで「世の中の役に立つ」「支援につながる」といった、心の満足という価値で物を交換してくれるのではないかと考えて、リクルートさん、JCV(世界の子どもにワクチンを 日本委員会)と、当社が組んでできたのが古着でワクチンです。今では平均すると月間1万人くらいの方からご利用いただいています。

在庫処分の「闇市」

── このビジネスを始めたきっかけは何だったのですか。
私はこれまで会社勤めはしたことはありません。いろいろな仕事を個人事業や、会社を作ってやってきました。そんなときにテレビでリサイクルショップの番組を見て「これからはこれだ」と思い浮かんだんですよ。すぐにその社長に会いに行って、「カバン持ちするから修業させて欲しい」とお願いし半年くらい修業して、独立させてもらったのが、この会社の始まりです。

── 事業内容に「在庫処分の闇市」というのがありますが、どういったものでしょうか。
これは今の会社を作る前からやっていたものなんです。企業がいろいろな理由から抱えた在庫を捨てさせない仕組みを作ろうと始めた、いわゆる在庫処分のソリューション事業です。簡単にいうとバッタ屋ですが、当社ではいろいろな手法を導入したソリューションと言っています。

企業が抱える在庫というのは、いろいろな理由があって、処分の方法についてもそれぞれ企業によって事情があります。

こうした在庫の扱いについては、大別すると5つぐらいのパターンがあります。

1つめが換金重視のパターン。このパターンは国内で売られようがどうでもよく、単にお金になればよいというものです。2つめは廃棄代はかけたくないが国内で売られて、値崩れやブランドイメージが下がっては困るというパターン。こうしたパターンは主に海外で何とかするというやり方になります。3つめは国内も海外もダメ。でも、処分費用をかけたくないというパターン。4つめは在庫を上手に活用し、寄付という形でCSRに活用するパターンです。5つめは儲かっている会社の在庫の活用です。

これらについては詳しいことはお話しできませんが、当社ではこうした企業の在庫処分、活用についてはそれぞれのソリューションを持っていますので、在庫でお困りのことがあればどんなことでも相談に応じられると思います。

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