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2018年8月号より

【BOSS×WizBiz】「介護」の先に「共生」を目指す地域密着型デイサービス 香丸 俊幸 クローバー社長
香丸 俊幸 クローバー社長

香丸 俊幸 クローバー社長

こうまる・としゆき 1972年5月1日生まれ。東京都出身。株式会社セブン-イレブン・ジャパン、株式会社ベンチャー・リンクを経て経営コンサルタントとして独立。IT企業や外食企業の役員などを歴任して2010年に株式会社CLOVERを創業。「人が幸せになるコミュニティつくり」をコンセプトに地域密着型デイサービスや放課後等デイサービス、飲食店、経営コンサルティング等の経営をしている。

──クローバーの事業内容を教えてください。
主に福祉事業を手がけています。地域密着型の「お泊まりデイサービス」(通所介護を利用し、そのまま施設に宿泊も可能な介護サービス)を都内に7件、発達障害児童向けの放課後デイサービスを1件。そのほか、飲食店やコンサルタント業などです。

──介護業は現在約10兆円市場で、なお拡大中。特別養護老人ホームは全国で約52万人の入所待ちとも言われていますが、デイサービスの状況はいかがですか。
デイサービスは土日休みで9時~17時までの利用時間、自宅まで送迎して入浴や昼食、レクリエーションを行い、帰宅する、というサービスが一般的です。事業所は全国で4万カ所以上。意外かもしれませんが、これはコンビニとほぼ同じ規模です。事業所数としては飽和状態を迎え、今後は淘汰されていくでしょう。

そうしたなかで、クローバーは年中無休で、20時頃まで延長可能、必要に応じて宿泊もできるというサービス内容。共働きで17時に帰宅できない家庭でも利用しやすく、介護者が旅行に行くため2泊3日でお預かりするなども可能。前日からの緊急宿泊対応ができる場合もあります。1日10~18名ほどの利用をいただき、うち宿泊される方が5名ほどです。

──事業所は、千駄ヶ谷、神楽坂、代々木上原、広尾、四谷、参宮橋、本八幡。都心の高級住宅地ばかりですね。
立地選びには戦略があります。介護事業者に支払われる介護報酬は、事業所の立地にかかわらずほぼ一律。つまり、家賃や人件費が安い場所で営業したほうが利益が出やすい構造です。逆に言うと、都心部は介護施設が開業しにくく、競争率は下がるということです。利益率も下がりますが、利用者が増えればバランスがとれる。価値の高いサービスを提供し続ければ勝てると考えています。

スタッフが発見し、提案

──サービスの強みと特徴は。
強みはケアの手厚さ。利用者のプロフィールを出来る限り細かくヒアリングし、そのうえで、通常のレクリエーションやケアに加え、一人ひとりに合わせた個別のケアを行っています。たとえば、利用者が住んでいた街や結婚式を挙げた場所に外出する。ほかにもオリジナルの歌を作ったり、ダンスをしてミュージックビデオを作ってみたりと、ユニークなレクリエーションをその都度行っています。こうしたサービスはマニュアル化しているわけではなく、スタッフがケアを通して自ら発見し、提案してくれる場合がほとんどです。

スタッフからのアイデアに出来る限りノーを言わないという姿勢も特徴かもしれません。ダブルワークを歓迎したり、スタッフが子供を連れて出勤することもできます。待機児童問題が解決されないなか、働きながら自分の子供もみたいというスタッフの要望によるものでしたが、子供がそばにいることで、利用者のお年寄りをすごく元気づけることがわかりました。ほとんど無表情だった認知症の利用者が、子供を見て笑いはじめたり、1キロの重さも持てないはずの利用者が、赤ちゃんを抱き上げることができたりと、不思議なことも起こりました。子供は最強のスタッフかもしれません。

いかに利用者に親身になり、気遣ってくれるスタッフを採用して育てるかは非常に重要です。現在社員は約40名、パートも含めると70名というところ。スタッフは特別養護老人ホームから転職してきた方、音楽や演劇や書道などのアーティストなどもいて実にさまざまな経歴です。出来る限り私自身が面接して選んでいます。

「世話」ではなく「役割」を

──今後の展望をお聞かせください。
現在は年商5億円ほど、5年で倍増が目標です。今の事業を引き継ぎつつ、新しい介護のかたちを模索しています。「注文をまちがえる料理店」(認知症の方がウエイターのレストラン)や「認知症カフェ」(認知症の方や家族が交流できるスペース)はすばらしいアイデアです。単に世話するのではなく、利用者に役割を持ってもらう発想ですね。

介護とシナジーがある新事業も考えています。たとえばケアサービスの事業所の近隣に保育園をつくり、地域のなかで介護と保育を連携させる。将来的には、介護施設・障害児ケア・保育園・学童保育などを融合した「シェア金沢」のような共生型福祉施設を、都内のビルで運営したい。そこでは年齢や性別を問わず、健常者と障害者、子供や認知症の方がまざって生活し、それぞれが施設内で特性に応じた役割を持ち、差別がありません。

──最後に、クローバーを起業した経緯を教えてください。
創業は2010年。コンサルティング会社で働きながら独立を目指すなかで、300ほどの業態をリサーチし「お泊まりデイサービス」が今後伸びていくと考えました。そして、業界研究の過程で、当時の介護業界のハードな労働環境や離職率の高さを思い知りました。自分なら、もっとサービスレベルを上げ、スタッフがモチベーションを持てる職場をつくれると考え、起業したという経緯です。

ですが、もっとさかのぼると、母親が経営していた小さな飲食店を若い頃から手伝っていたことを思い出します。母はお客さんのプロフィールをすべて把握していて、店舗が地域の交流所として機能していました。いま、地域密着型の事業に打ち込んでいるのも、私自身がそうした環境で育ったからかもしれません。

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WizBiz代表・新谷哲の著書「社長の孤独力」(日本経済新聞出版社)

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