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2016年12月号より

【BOSS×WizBiz】「地方に答えがある」パソナが地方創生に注力する理由
南部靖之 パソナグループ代表

南部靖之 パソナグループ代表

なんぶ・やすゆき 1952年生まれ。兵庫県神戸市出身。76年関西大学工学部卒業。卒業直前の76年2月に起業し、人材派遣会社テンポラリーセンター(現パソナ)を設立、社長に就任。93年社名をパソナに変更。2007年に持株会社パソナグループを設立、代表に就任。

パソナグループが「地方創生」として地域活性化に取り組んでいる。兵庫県の淡路島をはじめ、東北、京丹後、岡山で雇用創出、就労支援の施策を展開し、全国の自治体と共同で地域活性化事業を進めている。なぜいま地方なのか。パソナグループ代表の南部靖之氏に、その狙いを聞いた。

地方に定住できる環境

―― 人材派遣のイメージが強いパソナですが、最近は「地方創生」というテーマで取り上げられることが多くなってきました。
最近でこそ地方創生と言われていますが、パソナグループでは15年ほど前に、農業やコールセンター等のBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)センターで、地方に雇用を生んでいこうと取り組み始めました。当時は、フリーターやニートの増加が社会問題化していたので、東京ではなく、地方でそういった方々が活躍できる環境ができないかと考えたわけです。

もう1つ、団塊の世代が定年を迎える2007年問題がありました。今では、シングルマザーの問題、高齢者の貧困問題も出てきています。こうした様々な問題を解決する答えが、地方にあると考えています。なぜなら家賃もそれほど高くなく、物価も安い。賃金の格差はあるかもしれませんが、都会にいたとしても企業によって処遇格差は大きい。都会にはない魅力のある地方で、人々が経験や能力を活かして活躍できる雇用機会を広げることで、様々な問題の解決につながっていくと考えています。

昨年から政府でも地方創生が大きなテーマになりました。パソナグループでは、地方での雇用のための取り組みがきっかけでしたから、地方創生なんてかっこいいものではありませんでした。農業で雇用を創出し、地域を活性化しようと始めました。

淡路島の「チャレンジファーム」では、南部代表自ら農作業に出ることも。

―― 淡路島には特に力を入れているようですね。
淡路島で農業を始めたのは08年からです。独立就農を目指す「パソナチャレンジファーム」、10年には廃校施設を活用した地域活性化拠点として「のじまスコーラ」を立ち上げました。そもそも農業に取り組み始めたのは、03年に秋田県で始めた農業インターンプロジェクトからです。その後は青森県や和歌山県で同じく農業人材の育成事業を開始しました。

そして、農業を通じた地域活性事業が広がって、昨年4月には京都府京丹後市の道の駅を「丹後王国『食のみやこ』」としてリニューアルオープンしました。そのほかにも岡山県で道の駅「くめなん」の運営を受託するなど、グループで全国各地で地方の雇用に関する取り組みを進めています。

地方には東京や都会にはない豊かさがあります。自然環境があって、文化・歴史もある。食事も美味しい。こうした豊かさを求めている人もいます。ようやく最近、地方創生と言われるようになって、地方を活性化しよう、地方のシャッター通りをなくそうと言われていますが、実態はまだまだ厳しいものがあります。私たちは、淡路島での取り組みを1つのモデルにして、全国で地域活性に取り組んでいきたいと考えています。

―― 都市部に若者が集中する状況は変わっていませんね。
いまだに東京、東京と言われ、学校を卒業すると、仕事を探しに若者が東京に集まっています。だからこそ魅力的な産業や新しい働き方ができる環境を淡路島につくって、「人材誘致」による地域活性を目指しています。そして最近は、地方に定住できるか、定住人口をどう増やすかを考えています。観光客を増やすことも大切なことですが、みんながそこに住めて豊かな生活を送れるためには、新産業が生まれることが大事なことです。

いまは東京の企業がコールセンター等を地方に作るようになりました。確かに雇用は生まれます。だけどもし、経済環境が激変して企業の業績が悪化すると、地方のコールセンターもダメになってしまいます。これは東京で稼いだ利益を地方で使っているにすぎないからです。

地方創生というのは、その文字のごとく、地方で新しいものを生んで、地方で利益を上げ、地方で払う。だから淡路島での取り組みは、地域に根付いた事業で、地域が持続的に発展できる産業を作ろうとしています。そのため時間もかかります。よく役員会でも怒られます(笑)。時間がかかるのは、産業を生み出しているからです。でも生んだあとは強いですからね。

「週の半分以上、淡路島にいる」と南部代表。

―― のじまスコーラはかなり軌道に乗ってきたとか。
そうです。「食・農・学・芸」をキーワードに、地域活性の情報発信基地として、また地域の交流の場として、様々なイベントを開催しています。パソナチャレンジファームで採れた新鮮野菜や、淡路島の特産品などを提供する直売所、レストランを設けています。淡路島に移住した人たちがそこで働き、定住しはじめました。年間約18万人の観光客にもお越しいただいています。

また、淡路島では若者の就労支援事業も行っていますが、兵庫県や淡路市が一緒に取り組んでくれました。10年には「半農半芸」という働き方を提案して、音楽家や芸術家らを全国から募りました。午前は農業で働いて、午後は音楽等の芸術を磨くという働き方です。3年間で300人が淡路島に来ました。地域活性や定住促進は、民間企業だけではやれることに限りがあります。県と市、地元の方々の理解があったおかげで、これまで島外から定住した人の数は、数十人ではきかないくらいいます。

―― 地方にとっては人口が減ることが大きな問題ですから、こうした前例を持っていることは大きな強みですね。
パソナグループがテンポラリーセンターという社名(1993年に商号変更)だった創業時からそうなのですが、当時の人材派遣や401k、ワークシェアリング、アウトソーシング、企業内保育所等々、いまでは普通になっている様々な事業や制度をパソナグループは先駆けて導入し、サービス提供をしてきました。企業理念は40年前の創業時から「社会の問題点を解決する」という不変のものです。まるでボランティア会社のようですが、時代に応じて生じる社会の問題を、私は会社という立場から解決するためにどうすればよいのかを考え、取り組んできたことが、これまでのパソナグループの事業になってきました。

―― 先ほどの話にもありましたが、地方を自立させる地方創生に取り組むには、投資と回収までの期間が長くなります。
起業した当時から、先が見えるような事業はやっていませんでしたから(笑)。人材派遣も法律ができたのは、創業から10年後です。女性の社会進出を支援するための仕組みとして浸透するのに10年はかかりました。アウトソーシングも、いまでこそグループ会社のベネフィット・ワンは株式上場もしていますが、福利厚生のアウトソーシングというサービスが浸透するまで5年くらいかかりました。最初から、いろんな社会の問題にメスを入れようとやってきたわけですから、それは地方創生であれ、変わりません。

ビジネスは地方から変わる

―― パソナは地方の起業家支援にも取り組んでいますが、実際、地方発のベンチャー企業はどのように見ていますか。
これは私の勘ですが、これからのベンチャー企業、特にITベンチャーは地方から興りますよ。日本の人口は減っていきますから、どうしてもマーケティングはグローバルになります。ということは、東京でも地方でも、世界を相手にする以上、大きな違いはなくなります。

そしてこれからは東京で、銀座でモノを売る時代ではなくなります。しかも若者に限らず、中高年の世代が存在感を発揮してきます。中高年の世代が資金とアイデアを出し、オーディション的に若者を募る。実際にビジネスをするのは若い世代です。アメーバのように、ある時は1000人の会社になり、ある時は1人の会社になるなど、専門家を上手に活用した極端なアウトソーシング化が進むと思います。

わかりやすく言えば、映画のように、監督、役者、スタッフが集まって製作し、終われば解散して次の作品を探す。こういったことがビジネスの世界でも、特に地方でものすごく速いスピードで進むと思います。

資本関係のある親会社、子会社、孫会社が系列内で仕事を進める日本独特の仕組みから、小さな会社が集合して、プロジェクトが終われば離れるという仕組みに変わっていきます。すでにIT系の企業はそうなっています。そして規模に関係なく、力のある個人が台頭してきます。その表れがアメリカのIT企業のように、個人や数名でスタートアップした企業が、数年でグローバル企業にまで成長する例です。日本でも地方からそういった企業が出てきます。

―― 東京の人口が減って、地方に移住していくと。
東京オリンピック・パラリンピックが引き金になるかもしれません。土地も物価も上がっていくと、若者は東京に住めなくなります。給料は上がらずに家賃も食費も上がるわけですから、若者は東京から大脱走をするかもしれません。一部の企業では、地方に保養所兼オフィスを作ろうという動きもあり、その兆しはすでに見えています。民間企業、経済団体が本気になって地方にいけば、地方での雇用機会は大きく拡大します。

地方は東京にくらべ、生活費は安く、保育所も東京ほど深刻ではない。教育についても、いまや地方のほうが優秀な学生を集めるいい大学が増えています。あらゆるものが大きく変わる時期にさしかかっているのは間違いありません。

日本企業でも、重厚長大の大企業が厳しくなり、業態を変えていく企業が続出しているなかで、個人の働き方も大きく変わる下地ができてきました。そうしたなかで、地方はすべての問題を解決すると思います。雇用だけでなく、食糧問題やエネルギー問題を解決する答えのすべてが地方にあります。

(写真上)2015年4月にリニューアルオープンした京丹後の道の駅「丹後王国『食のみやこ』」。今年は道の駅のグルメ日本一を決める「道‐1グランプリ」を初開催。(下)廃校になった小学校を再生し「食・農・学・芸」をキーワードに2012年に誕生した「のじまスコーラ」。淡路島の特産品や新鮮野菜を提供し、様々なイベントも開催するなど、島内外から観光客が訪れる地域活性のシンボル拠点になっている。

―― そのような時代だからこそ、パソナは地方に答えを見つけに行くということですか。
パソナグループの人材ビジネスにおいても、常に時代を先取りしていかなくてはいけません。人材派遣や人材紹介、アウトソーシングなど、企業の細かなニーズに応じて、提供するサービスは異なります。働く人々のニーズも、フルタイムで働きたい人もいれば、スキルアップしたい、経験を積みたいなど様々です。私たちは常に時代を先取りして、次に求められるスキルを提示し、そのスキルを身に付けられる教育機会を提供することが大事です。

かつて、ワードプロセッサーが世の中に出たときは、オフィス内に急激に広がると考えて、メーカーと一緒になってワープロオペレーターの育成をしたものです。そのような対応をこれからもずっと繰り返していくことが必要です。いま伸びている事業にだけ、あるいは儲かる分野にだけ投資をするような経営をしていたら、きっと潰れていたはずです。

今の社会の問題を解決する答えはきっと地方創生にある。そう思って、私自身、この5~6年はほとんど東京にいない生活です。週の半分は淡路島に行っています。現実的にはまだ地方の人口は減っていますが、ここに来て国も地方自治体も地方創生と言いはじめ、多くの人の関心が地方に向けられるようになったので、先が見えるようになってきました。

―― 今後の展望として、地方に対してどうアプローチしていきますか。
今後は健康産業にも目を向けようと思っています。健康産業が産業として雇用を生み出せるような仕組みを淡路島で作りたいと考えています。そして、パソナグループの事業を「スマート・ライフ・イニシアチブ」と位置づけて、地方で産業を興し、地方で個々人が活躍できるようなサポートインフラを構築して、雇用の創造と地方創生を手掛けていきたいと考えています。

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