「月刊BOSS」と、日本最大のビジネスマッチングポータルサイト「WizBiz」との提携に伴い、 19万社を超えるWizBiz会員の中から伸び盛りの企業を毎月1社をピックアップ。トップの事業への情熱に迫る。
2016年8月号より
秀實社社長 髙橋 秀幸
たかはし・ひでゆき 1977年千葉県生まれ。2000年日本大学商学部を卒業しファッション業界向け大手人材派遣会社に入社。セフォラ・ジャパンで化粧品販売、営業及び採用・育成などの最年少管理責任者を担当。08年組織人事コンサルティングファームで社長に就任。10年秀實社を設立し社長に就任。
特徴はマインドセット
―― 社員研修などの教育事業を展開する秀實社ですが、まずは社名の由来を教えてください。なぜ「実」ではなく「實」なのですか。
最初は秀志社と考えていました。人は誰にでも秀でた能力がある、そして人間それぞれが使命を持ち、その使命を果たすために自己研鑚を継続する。その志を持ち続けたいとの意味を込めました。
そのような時に恩師から「苗にして秀でざる者あり。秀でて實らざる者あり」という論語の一文を教わりました。種のまま芽を出せない人もいれば、芽が出ても花を咲かせられない人もいる、という意味です。そこで花を咲かせ続けられるような人財を輩出しよう、その種を世界中に普及させよう。そのためには決めたことは最後まで貫くという決意を込め、秀實社に決めました。
―― なぜ起業しようと考えたのですか。
私は19歳の時に、30歳までに社長になると決意しました。その後、11年間の歳月を経て、30歳でコンサルティングファームの取締役社長となり、企業向け教育研修と組織づくりのコンテンツを提供する事業を任されました。
ただし、社長とはいえ創業者ではありません。しかもオーナーと私が思い描いていたものが違ったため、私は自分を押し殺しながら仕事せざるを得なかった。組織づくりのコンサルタントとして全国を飛び回り、経営者にお会いして「会社の理念を経営幹部に浸透させることが重要だ」と言っておきながら、自分は創業者の理念に共感できないでいた。これは自己矛盾ですし、いつか限界がきます。それが2009年10月でした。社長を辞任し、翌年1月に秀實社を設立しました。
―― 事業資金は前職時代に独立のために貯めていたのですか。
いえ。資金はまったくありませんでした。最初のオフィスは間借りでしたし、次に銀座に移転した時も保証金を3分割にしてもらったほどです。
ただ幸いなことに、創業49日目にマザーズ上場のUBICさんに成約していただきました。これは本当にうれしかったですね。UBICさんは当時、米ナスダック市場への上場を考えており、その起爆剤となる社員を求めていた。その人財養成のご支援をさせてもらいました。
―― 社員研修を行う会社はいくらでもあります。秀實社の特徴はなんでしょうか。
マインドセットトレーニングというプログラムです。人が100人いれば100通りの考えがあります。しかし企業の場合、社員と経営者の判断基準が一致していないと、各自が活躍するチャンスを逃しかねません。当社の研修プログラムでは、役割やポジションに応じた「思考」「マインド」を形成するためにマインドセットを行うとともに、企業のビジョンを深く理解し自分のビジョンを再設定する「ビジョンメイキング」を行います。
最後にビジョンを実現するためのミッション(各自の役割)を明確にする。これにより会社と社員が理念を共有できるようになり、社員一人ひとりが使命感を持つようになる。これが私たちのやり方です。
これは秀實社についても当てはまります。創業当初は私が営業から研修まですべてやっていましたが、いまでは経営理念を共有する社員たちとチームとして動くようになりました。社員の採用でも、経営理念に共感してくれる人を採用する。企業活動の真ん中に経営理念を置いています。
―― 社員研修だけでなく、大学生の教育にも力を入れているそうですね。
ええ。次代人財養成塾「One‐Will(ワンウィル)」を設立しました。13年から始めて、この7月に第6回を迎えます。
いまの学生で、自分のなりたい姿を描ける人、自信をもって夢を語れる人がどれだけいるでしょうか。One‐Willは、学生たちに自分の使命に気づくための環境を提供しています。
年に2回、それぞれ3カ月間、著名経営者の特別講演や目標達成トレーニング、有力ベンチャー企業でのインターンなどを通じて、“情熱とチャレンジ精神を持った次代の日本を担う人財”を育成します。受講生は入塾期間の3カ月で劇的に変わります。それまでは与えてもらう世界しか知らなかったものが、与える世界があることを知るようになる。そのことにより、自分の使命や夢に気づいていきます。
―― 最後に、会社としての目標を教えてください。
もっともっと多くの人たちに私たちの研修トレーニングプログラムを知ってもらいたい。そのために、これまではすべて自分たちの手で普及させてきましたが、研修トレーニングプログラムそのものをOEMで販売することも考えています。
たとえばフランチャイズチェーンの本部にトレーニングプログラムを販売する。本部はこのプログラムを使ってフランチャイジー教育を行う、といった仕組みです。あるいは社内に講師を育成して、その講師がトレーニングプログラムを使って社員研修を行うという形もあるでしょう。
中期目標は、日本にある400万社の1%、つまり4万社に、当社のプログラムを使ってもらいたい。これを10年以内に達成します。
そしていずれは、日本の教育業界を代表する企業になりたいと考えています。社員教育、大学生教育だけでなく、ターゲットを上にも下にも広げていく。すでに高校関係者とは面談を重ねて自分たちに何ができるか検討を始めていますし、その先には中学校、小学校へと広げていく。さらには生涯教育にも関わっていく。民間の文科省を目指します。