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2014年10月号より

原 邦雄 スパイラル・アップ社長に聞く
スパイラル・アップ社長 原 邦雄

スパイラル・アップ社長 原 邦雄

はら・くにお 1973年兵庫県生まれ。96年大阪工業大学を卒業し日本食研入社。5年後に船井総研に転じる。その後、ラーメンチェーンに転職し、下積みから店長までを経験。覆面調査会社シーズを経て、2011年スパイラル・アップを設立した。クラレ、クラボウを設立した大原家の末裔でもある。

船井総研からラーメン屋へ

―― 原さんはコンサルタントとして、「ほめ育」というのを提唱しています。その名のとおり、ほめることによって社員を育てようということです。昔からよく「ほめて伸ばす」とはいいますが、そこにフォーカスを当てた経営指導というのはあまり聞いたことがありません。
 「ほめ育」という言葉を使うようになったのはこの1年半ほどのことですが、2011年5月にスパイラル・アップを設立してコンサルタントとして独立して以来、ほめて育てる経営を提唱しています。

―― どういう経緯で、ほめ育に行きついたのですか。
 その前に、これまで僕が歩いてきた道を説明したいと思います。

僕は大学時代まで空手をやっていたのですが、武道家というのは、根拠はないのに妙な自信を持っている人が多い。僕もその1人で、大学時代に、自分は日本一の営業マンになると決めました。

そこで選んだのが日本食研です。この会社は営業マン全員の成績を公表しており、3年で1位になれなかったら辞めるつもりで入社しました。ところが十何位にはなれても1位になれない。そこでもう2年頑張ったのですが、最高位は9位どまり。これは向いてないと判断して退職しました。

次に入社したのが船井総研です。日本食研時代から、僕は自腹で船井総研のセミナーを受講していました。そこに登場する講師が、若いにもかかわらず、出席した社長たちを相手に堂々と話している。これだ、と思い、今度は日本一のコンサルタントを目指して船井総研に入ったのです。

週に3日は徹夜するようなハードな仕事でしたが、やりがいはありました。でもそのうちに、もっと現場を知りたいと思うようになってきた。というのも、企業の売り上げは、社長ではなく、現場がつくっている。ところがコンサルタントの多くは現場を知らない。そこで実際に現場に飛びこんでみました。

―― 何をしたんですか。
 船井総研を辞め、知り合いのラーメンチェーンの社長に頼んで入れてもらい、皿洗いから始めました。

それまでは年商何百億円の社長の相手をしていたのに、ラーメン屋では包丁も持てず、伝票もろくにつけられない。18歳の女の子にボロカスに言われる始末です。

―― 周りからは呆れられたでしょう。
 元同僚もラーメンを食べにきてくれたのですが、僕とは目を合わそうとしない。何しろ叱られっぱなしでしたから。

―― 全然ほめられていませんね。
 それでも、しばらくすると仕事にも慣れ、店長に昇格することができました。

―― 元コンサルとして経営ノウハウはしっかり持っているし、下積みを経験し現場も知った。怖いものなしですね。
 ところがそうではありません。その店のスタッフがどんどん辞めていき、最後は僕と副店長の2人しか残りませんでした。まだ若く、身体の無理もきいたから、なんとか店を回せましたが、夜、店を閉めたあと、1人でどうしたらいいか考え込む毎日でした。ダメ店長の烙印を押されたのもこの頃です。

転機は店長として2つ目の店で迎えました。店を替わっても、僕は何を変えたらいいかよくわかっていませんでした。そんな時、スタッフの1人から、「うちのMVPは誰ですかね」と言われたのです。「何?それ」と思いました。それまでスタッフが頑張っていると思ったことはなかった。一人ひとりがもっと働けば売り上げはもっと上がるのに、というのが正直な気持ちでした。

でもスタッフの言葉を聞いてから、少し考え方を変えてみると、ある女性スタッフがMVPにふさわしいことがわかりました。シフトにも貢献してくれていたし、日々、成長してむずかしい業務もこなせるようになっていた。このように、スタッフそれぞれについて、いいところを探してみました。

そのうえで、月に1度、店を閉めたあと全員で食事しながら、スタッフのいいところをほめ、最後に今月のMVPを発表し、全員で拍手を送るようにしたのです。そうしたところ、売り上げはどんどん上がっていく。しかもそれまで8人シフトだったものを5人で回せるようにもなりましたから、利益を大きく伸ばすことができた。これが、ほめ育の原点です。

毎月1度のほめ育シート

―― この経験をもとに、コンサルタントとして独立したんですか。
 その前にもう1社あります。シーズという覆面調査会社が大阪に進出することになり、その第1号社員となりました。ここの覆面調査は、人や会社のほめるところを探すというもので、これもいまの仕事に結びついています。

忘れられないのは、橋下知事時代の大阪府の仕事を取ったことです。当時、府の施設や職員のリストラが話題になっていました。でも職員の誰もが最初は志を持って入ってきたはず。それを僕が探します、といって調査の受注に成功しました。調査を終えレポートを提出した時は、橋下知事の発表の仕方も考えました。最初に「やっぱりダメでした」などと言ったら、職員はやる気をなくしてしまう。そこで、最初に「思ったよりよかった」というようにアドバイスしました。民間に比べればけっしてよくない。それでも第一声をこうすることで職員自らも変わろうという気になるのです。

この仕事が評価されてシーズの仕事は順調に伸びていきました。それを見届け、いよいよ独立することにしたのです。

―― クライアントはすぐに見つかりました?
 半年間は苦労しましたが。串カツチェーンの仕事を引き受けてからはとんとん拍子で、いま70~80社のコンサルティングを行っています。

―― ほめ育とは具体的にどんなことをするのですか。
 最初に「ほめ育シート」をつけるところから始めます。部下一人ひとりに対して「ありがとう」「成長したところ」「期待するところ」などを具体的に書き込み、月に1度、部下に渡します。これだけで職場の雰囲気は大きく変わります。

―― 社員にしてみれば、上司が自分の仕事をきちんと見ていることがわかり、それが励みになるんでしょうね。
 おっしゃるとおりです。見ていることの証拠がほめ育シートです。これに加えて「ロジックツリー」と呼ぶアクションシートなどを活用することで、売り上げは劇的に伸びますし、社員の離職率も激減します。

―― 外食産業だけに通用する手法ですか。
 そうではなく、どんな業種でも基本的には同じです。最近では、介護業や学習塾からの依頼が増えています。介護の現場では社員の離職率の高さが問題になっています。ほめ育によってこれを防ぐことが可能です。

―― 今後はどのように展開していく予定ですか。
 このほど、日本ほめ育協会という一般社団法人を設立しました。この協会を通じてほめ育コンサルタントを増やし、それによってほめ育を普及させ、日本の企業が元気になることを願っています。

さらには海外展開も視野に入れています。すでにロサンゼルスに会社を設立し、活動を開始しています。これをヨーロッパ、アジアへも広げていきたいですね。日本で成功したものは海外でも通用する。そう信じています。

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WizBiz代表・新谷哲の著書「社長の孤独力」(日本経済新聞出版社)

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