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2014年4月号より

講師を育てて利益を上げる「新・家元制度」とは何だ?
未来デザイン研究所社長 前田 出

未来デザイン研究所社長 前田 出

まえだ・いずる 1954年和歌山市生まれ。和歌山市内でインテリアコーディネーターとして活動の傍ら、アマチュア劇団のプロデューサー兼キャストとしてミュージカルの全国公演を行い10万人を動員。「ふしぎな花倶楽部」の組織化をプロデュースした後、楽習フォーラムを立ち上げる。現在は未来デザイン研究所社長、一般社団法人生涯学習認定機構代表理事を務めている。

約5万人の講師を育成

―― 前田さんは「新・家元制度」を提唱していますが、そもそも新・家元制度とはどういうものですか。
前田 新・家元制度は、協会を設立し、講座を開講、受講生は認定試験を通れば今度は講師として教える立場に回ります。

古くからの家元制度というのは、家元がいて、生徒がいる。生徒が師範の免状をもらって教える側に回るまでには、膨大な時間とお金が必要で、ほとんどの人が最後まで生徒のままです。生徒でいるかぎりお金もかかるし時間も使う。それに対して新・家元制度は、生徒が認定試験を受けることで先生になり、今度は教える側に回るというものです。

―― どういうきっかけでこの制度を考えついたのですか。
前田 最初、日本ヴォーグ社の「ふしぎな花倶楽部」を手伝ったことがきっかけです。この組織を拡大するために、押し花の先生たちに、“商品をつくる”技術を教えました。結婚式でもらったブーケを押し花にして、それを額装して記念品として家に飾ってもらう。

でもそれだけでは広がっていきません。そこで、長野オリンピックのジャンプ団体で日本が金メダルを獲得した時に受け取った花束を、押し花にして額装したのです。これはすべてボランティアでやったのですが、それをNHKや全国紙で報じてもらった。そうしたところ、認知度が一気に高まり、1つ3万円ほどする額を3000本売った人も出るなど、記念の花を額装するムーブメントが起きました。

しかも商品を売るだけでなく、その技術を生徒に教える。学んだ生徒は今度は先生として独立し、教える立場になる。これによって、市場がどんどん広がっていったのです。

―― 単に技術を教えるだけでなく、市場も創出してあげるところがミソですね。
前田 次に手がけたのがビーズです。押し花の成功モデルを他に展開しようと考えたのです。

コロネットという会社をつくり、「好きを仕事に!」をテーマに楽習フォーラムという団体を立ち上げました。ここでビーズの技術を教える講師を養成し、その講師が新たに講師を育成するスキームをつくりあげました。講座で使う教材は、楽習フォーラムが提供します。こうして講座を30ほど用意し、4万7000人の認定講師を養成しました。

―― どうやって認知度を上げていったのですか。
前田 このビジネスを成功するためにはブランディングが不可欠です。まず、認定資格を権威あるものにしなければなりません。そこで、当時文部科学省所管だった財団法人日本余暇文化振興会監修・認定を受ける必要があった。そのためにも、きちんとした教科書をつくり認定基準を明確にする。審査を通るためにはこういう準備が不可欠でした。

でもそれだけでは認知度は高まりません。そこで目をつけたのが「女性自身」でした。女性自身は毎号のようにビーズ特集を組んでいた。そこで編集部に掛け合い、共催で銀座三越でビーズイベントを開催しました。このイベントは6日間で3万5000人を集客、大成功に終わりました。さらに首都圏でカルチャー教室を展開しているサンケイリビング新聞社とも提携し、カルチャー教室でビーズの認定講座を開講することができました。こうした仕掛けにより、1年目で2000人の受講者を獲得することができたのです。

このように、当初は自らが講座を開いて生徒を募集していましたが、2年目からはビジネスモデルを転換し、認定資格を取った生徒たちが先生となり開講する際のサポートに回りました。つまり顧客が、生徒から講師に移ったのです。

年収4000万円の講師も

―― ビーズの資格でどれくらい稼ぐことができるのですか。
前田 いちばん多い人で年間4000万円の収入を得た先生もいましたが、ほとんどの人が月に5万~10万円ほどです。でもパートに出て働くのではなく、自分の好きなことを人に教えて同じくらいの収入を得られるのです。

私はよく、「6つの報酬」という言い方をします。資格を得て、自ら先生になることで、まずお金を得ることができます。第2にポジションという報酬です。結婚して「〇〇さんの奥さん」と呼ばれていた主婦が、資格を得ることで先生というポジションを手に入れることがきるのです。これが講師の満足度を高めてくれます。

3つめの報酬は、やりがいです。教えることで生徒たちに感謝される。ありがとうという言葉をもらうことにやりがいを感じるのです。4つ目はスキルアップ。講師になったあとでも、さらにレベルの高い講座を受けることで、自らを高めていくことが可能です。5番目は仲間が増えることです。同じ趣味のSNSを通じて自らの作品を発表しあうことで、仲間が増えていく。普段は会えなくてもイベントなどで会う機会もありますから、それまでの身の回りだけの小さい世界が一気に広がります。

そして最後が、人間力という報酬です。同じスキルを持っていても、生徒の集まる講師と集まらない講師がいます。それが人間力の差です。生徒に満足してもらうためには自らの人間力を高めなければなりません。

―― その成功体験を基に、新・家元制度を提唱するに至ったわけですね。この制度では、まず一般社団・財団法人の協会を設立するところから始まります。なぜ協会なのですか。株式会社ではダメなんですか。
前田 ビーズの講座を始めた時は、社団法人設立のハードルがものすごく高かった。ですから、楽習フォーラムは任意団体としてスタートしました。

それが2008年に一般社団・財団法人法が制定され、簡単に社団・財団が設立できるようになりました。これによって、公益性をもった事業を展開するのがやりやすくなった。こうした組織であれば、理念と収益の両立ができるのです。

この法律ができるまではNPO法人を立ち上げるしかなかったのですが、NPOは基本的に利益を追求できません。一方、株式会社は、理念よりも収益を追求することを株主から求められます。その違いは大きいですよ。

―― 前田さんはいまでは自ら協会を主催するのではなく、協会を立ち上げるのをサポートする立場に徹しているんですか。
前田 いまでは新・家元制度を広めるための活動が中心です。コロネットも2年前にオールアバウトに売却しています。生涯学習認定機構という一般社団法人の代表理事を務めていますが、この社団自体が、新・家元制度を普及させるためのものです。そのための講座を開講しています。

私には夢があって、新・家元制度を利用して、1億円以上を売り上げる協会を、2020年までに200つくりたい。すでに70の協会ができ、そのうちの8つで1億円を突破しました。

日本健康食育協会の健康・食育マスター講座では、すでに1000人を優に超える人が資格を取得しました。チェーン定食屋の大戸屋では、200人以上いる店長全員がこの資格の保有者です。

―― それにしても200も協会を立ち上げることができるんですか。そんなに市場があるか疑問です。
前田 いくらでもありますよ。ホビークラフトの市場規模は3000億円と言われています。そのうち押し花は50億~70億円程度です。それでも十分ビジネスになったわけです。ニッチな市場でも、そこでナンバーワンになれれば、十分に可能です。

この制度を利用すれば、資金がなくても起業できる。これが新・家元制度の最大の目的です。

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WizBiz代表・新谷哲の著書「社長の孤独力」(日本経済新聞出版社)

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