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2014年2月号より

「店子の経営相談承ります」元金融マンのビルオーナー
後藤専 オフィス・ゴトウ社長

オフィス・ゴトウ社長 後藤 専

ごとう・たかし 1966年東大阪市生まれ。90年滋賀大学経済学部を卒業し三和銀行入社。モルガン・スタンレー証券、ABNアムロ証券を経て、リーマン・ショック後、本格的に不動産ビジネスに取り組み、現在はビル7棟を所有する。著書『お金は行列に並ばない人のところにやってくる!』が刊行されたばかり。

モルスタのトップ営業マン

―― 後藤さんは三和銀行からモルガン・スタンレーなど外資系証券会社を経て、現在はオフィスビルやマンションなど7棟を持つビルオーナーということですが、まずはその経緯を教えてください。
後藤 滋賀大学経済学部を卒業して三和銀行(現三菱UFJ銀行)に入ったのが、バブルのピークの1990年です。そこに9年間勤めた後、モルガン・スタンレー証券に転職し、債券営業に配属されました。

―― その頃はすでに、銀行から外資系証券へという流れは一般化していたのですか。
後藤 まだ多くはなかったですし、だからこそ、私はその道を選んだようなものです。当時は銀行と証券会社ではまだまだ違いがあって、たとえば当時のモルガン・スタンレーの社員には英語はできるけれど敬語が使えないなんて人がいっぱいいた。その中で私は、敬語はきちんと使えるし、調べ物はきちんとする。銀行では当たり前のことですが、証券会社の中では少なかった。まだそういう時代でした。

―― 当然、成績もよかったんでしょう。
後藤 2000年から04年まで、東京のトップセールスマンでした。ただしこれは、実力というより運が良かったと思っています。

入ったばかりの私に、優良取引先が回ってくるはずもない。担当したのは、当時経営が悪化していた生保会社が中心でした。こうした会社はリスクが高いため、取引することはできません。それでも私は、毎日、連絡を入れて債券市況などを伝えていました。しかも生保危機が強まるにつれ、連絡を取る証券会社が減っていき、最後は私1人になったのです。

ところが、こうした生保を外資が買収していった。これにより、昨日まで要注意先だった相手が、健全な会社に生まれ変わっため、再び証券会社が営業するようになったのです。でも生保の担当者にしてみれば、どうせ付き合うなら、苦しい時も連絡を欠かさなかったところを選びたいというのが心情です。それで僕の指名が相次いだわけです。僕自身、将来的にそうなることを考えて連絡を入れていたわけではありませんでしたが、結果としてトップセールスマンになることができました。

その後、05年にはABNアムロ証券にヘッドハントされて08年まで勤め、09年から12年までは日本駐車場開発でタイの現地法人の立ち上げに関わっています。

―― いつから不動産を取得するようになったのですか。
後藤 不動産には前から興味がありました。価格の動きが株などに比べはるかに遅いから検討する時間があるし、収益を確実に計算することができる。投資するにはいい対象です。

そこで03年に渋谷のビルの1階部分の店舗を購入し、様子を見ることにしたところ、毎月、きちんきちんと家賃が入ってくるし、不測の事態も起きない。その時以降、買い場を探すようになりました。

そのチャンスが08年にやってきました。リーマン・ショックでビル価格は一気に半分近くまで下落したのです。私はその直前にABNアムロ証券を辞めていたこともあり、これを機に本格的に不動産を取得しようと考え、09年に入ってすぐに4棟のビルを買いました。

―― 地価は落ち続けていた時期です。ずいぶんリスクを取りましたね。
後藤 むしろ逆ですよ。ビルの価格が半分になったからといって家賃が半分になるわけではなく、ほとんど変わりません。ということは、エントリーコストが半分ですむのにリターンは変わらないということです。絶好の投資のタイミングでした。

―― 資金はどうしたんですか。いくら外資系証券会社にいて高給を取っていたといっても、それで足りるわけがない。銀行だって、融資には慎重になっていたのではないですか。
後藤 銀行出身ですから、資金調達はお手の物です。この時も、全額借金で購入しています。というのも銀行が不動産融資の審査をする時は公示価格を基準にします。ところが地価下落局面では、実勢価格のほうが公示価格よりはるかに早く下がっています。これを利用することで、自己資金を一切使わずにビルを購入することができました。

自己資金ゼロで事業開始

―― ところで後藤さんは、テナントの経営相談にも乗っているそうですね。コンサルをする大家なんて聞いたことがありません。
後藤 コンサルなんてものじゃありません。ただ僕は資金調達は得意ですので、それで困った人がいれば相談に乗ったりしていますし、それ以外にも何か手伝えることがあれば協力しましょうというだけです。

ビルオーナーにとって、最重要顧客はテナントです。大事にしない手はありません。それに下心もあります(笑)。ビルオーナーにとっていちばんありがたいのは、同じテナントがずっと居続けてくれることです。だからテナントと仲良くなっておけば、出て行くとは言えないでしょうし、2年に1度の家賃交渉の時も、家賃を下げずにすむかもしれない。だから計算ずくなんです。

もちろん、すべてのテナントと仲良くなっているわけではありません。全体からみれば3分の1にも満たないでしょう。でも、すべてのテナントに対し、有益な情報を送るようにはしています。無視されてもかまわない。でも常に気にかけているということがわかってもらえれば、それでいいわけです。

―― 保有するビルの数は今後も増やしていくつもりですか。
後藤 そのつもりです。でもいまは買うタイミングではないですね。いずれ地価が下がる時がくる。その時を狙っています。

―― ところで現在、茨城県で接骨院の開業準備を進めているそうですが、これは不動産業と関係があるんですか。
後藤 まったく関係ありません。これまで僕は金融業に携わり、現在は不動産業を営んでいます。でもこれだと、たまたまビルを買ったら儲かったと思われてしまうかもしれません。そこで何かひとつ事業をやろうと考えたのです。

僕が提供できるのは資金調達とマネジメントです。それで事業を始めるにはフライチャイズ・チェーン(FC)を利用するしかないと考え、いくつものFCの説明会に参加した結果、接骨院をやろうと決めたのです。

―― 決め手はなんだったのですか。
後藤 高齢化が進んでいますが、いまの団塊世代の人たちは健康志向が強く、スポーツジムで鍛えたりジョギングをする人も多い。でもそういう人が増えれば増えるほど、筋肉痛になったり腰を痛める人もいる。その意味で需要はこれから伸びていくと考えたのがまずひとつ。

同時に参入障壁が高いことも魅力でした。開業後しばらくの運転資金を含めると、6000万円の資金が必要です。これだと競合が現われにくいわけです。

―― 普通の人はそれだけの資金を用意できませんからね。
後藤 でも、この資金も全額借金です。ですからその気になれば誰でもやることができる。

なぜ僕が、不動産以外もやろうと考えたかというと、こういうチャンスは誰にだってあるということを知ってほしかったんです。資金がないから新しいことを始められないという人は多いですが、そんなことはありません。僕の持論ですが、すべての人にツキがある。好きなことをやって生きることができるはずなんです。

ですから、元手なんかなくても新しいことにチャレンジできる。僕はそれを、自分が新規ビジネスで成功することによって証明したいと思います。

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