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2013年10月号より

オフィスの保証金を半額に潜在市場は30兆円!
豊岡順也 日本商業不動産保証 社長

豊岡順也 日本商業不動産保証 社長

とよおか・まさや 1973年東京生まれ。大学卒業後、国際証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)に入社するが7カ月後に父が倒れたため家業の物販会社を経営。その2年後、HIS協立証券に入社し、株式公開引受業務に従事。その後企業内起業でコンサルティング会社を立ち上げ、社長に就任。同社をMBOで取得独立したあと、2011年フィナンシャルギャランティを設立、今年現社名に変更した。

オーナー、店子、双方に利点

―― 日本商業不動産保証という社名は非常に堅苦しいですが、提供するサービスは「保証金半額くん」で、オフィスを移転する際の敷金・保証金を半額にするという、非常にわかりやすいものですね。
豊岡 ええ。通常ですと新しいオフィスを構えるには、ビルのオーナーに家賃の10~12カ月分の保証金を預けなければいけません。家賃が仮に100万円なら、10カ月分で1000万円です。店子にしてみれば、これだけの資金が寝てしまっています。中小企業にとっては、この負担はバカになりません。そこで、その半分を当社が保証しようというのが「保証金半額くん」です。

ですから店子にしてみれば、移転に際してのコストを低減することができるし、本来納めなければならない半分の保証金をほかに投資することも可能になります。さらには、ビルオーナーに何があっても、預託金の未返還リスクを半減することができるわけです。その代わり、当社は手数料として、年間に家賃の0.15~0.3カ月分の年間保証委託料をいただくというビジネスモデルです。

―― 半分を保証するということは、日本商業不動産保証が店子に代わって半額を納めるということですか。
豊岡 いいえ違います。もし店子に何かあって、家賃が未納だったり原状回復費が支払えなくなった時に、保証金の半分以内であれば当社が代わって支払うということです。ですから、最初の段階で当社が保証金を支払うわけではありません。

―― ということは、店子にとってはいいことづくめですが、オーナーにとっては必ずしもそうではないですね。本来入ってくる保証金が入らないことには、運用益を上げることもできません。
豊岡 経済状況がよく、空室率が低い状況ならそうかもしれません。でも、いまビルオーナーの最大の関心事は、いかにして部屋を埋めるかです。同じような物件なら、「保証金半額くん」が利用できる物件のほうが店子の負担は減りますから、それが差別化になる。あるいは、保証金を半額にすることで、月々の家賃を増やすことができるかもしれない。あるいはフリーレント期間を短縮できるかもしれない。

それにこのサービスを利用しようという店子に対しては、我々が与信審査を行いますから、オーナーにしてみれば、そのぶん負担が減ることになります。それだけ、オーナーにとってもメリットは大きいんです。オーナーの中には、本来、店子が負担すべき保証委託料を自分で負担してもいいというところもあるぐらいですから。

とはいえ、2年前に会社を立ち上げ、サービスを開始したのですが、オーナーに理解してもらうまでが大変でした。専門紙や損保会社と組んでセミナーを開き、説明して納得してもらう。そうやっているうちに実績もついてくる。そうすると、その実績をもとに大手のオーナーもこのサービス受け入れてくれる。おかげさまで、利用するケースはどんどん増えていますし、いまでは保証金が1000万円単位の物件も扱うことになりました。

―― それにしても、どうしてこうしたサービスがいままで存在しなかったのかが不思議です。豊岡さんはなぜこれを思いついたんですか。
豊岡 なぜこれまでなかったかというと、1つには時代背景もあると思います。先ほど言ったように、以前は貸し手市場でオーナーのほうが強気だった。それがいまでは完全に借り手市場です。オーナーの側が選ばれるための努力をしなければならなくなった。そしてもう1つが低金利です。金利が高ければ、保証金から得られる金利収入もバカになりませんが、いまではそれは微々たるものです。そうした条件が組み合わさってということがあると思います。

それに、このビジネスモデルは、単に保証金の半分を当社が保証するというだけではありません。店子に対して与信審査をしなければなりませんし、損害保険会社と再保険の契約もしなければなりません。そんな簡単なスキームではありません。

ではなぜ、このビジネスを思いついたかというと、この会社を設立する前、コンサルタント会社を経営していました。その時に、ある企業の財務内容を見ていたら、2000億円以上ある資産のうち、3分の1が保証金で眠っていることに気づいたのです。これを半減することができれば、数百億円を投資に回すことができる。それで、何かできないかと考えたのが最初のきっかけです。

それとは別に、あるビルのオーナーから、すでに2度、店子に逃げられたことがあり、与信業務のアウトソーシングができないかという相談を受けたこともありました。つまり、店子もオーナーも、保証金の問題ではそれぞれ困っている。それを解決するスキームがないかと考えた結果、このビジネスモデルが生まれたのです。

眠っている保証金は30兆円

―― ところで、豊岡さんは大学卒業後、最初に入ったのが国際証券(現三菱UFJモルガンスタンレー証券)です。そこから起業までの道のりを教えてください。
豊岡 もともと高校の頃から、いつかは独立したいという思いは持っていました。司馬遼太郎の『竜馬がゆく』を読んで、自分のためではなく世の中のために何かしないと存在意義がないのではと思うようになりました。

大学では国際政治を学んだのですが、その中に経済的安全保障というものがあることを知りました。だとしたら、この分野で何かできないだろうか。そう考えて、まず金融の道を選んだわけです。
ところが国際証券に入社して7カ月後に父が倒れ、家業を手伝うため退社せざるを得ませんでした。でも父が元気になったこともあり、HIS協立証券(現HS証券)に入り直し、株式公開引受業務に携わります。当時のHS証券は、できて間もないこともあり、なかなか幹事証券になることが難しかった。そこで企業にさまざまな提案をしながら、徐々に実績を残すようになり、主幹事も何社か務めています。

その主幹事を務めた1社とHS証券が合弁でコンサルティング会社を立ち上げることになり、社長に就任。その後、この会社はMBOによってHS証券から独立、現在にいたっています。この会社で、「保証金半額くん」のスキームを考えたのですが、ビジネス展開するには別会社でやるべきだと考え、2年前にフィナンシャルギャランティを設立しています。だけど、この社名だと何をする会社かわからない。下手をすると貸金業と間違えられてしまう。そこで、わかりやすいように、今年になってから日本商業不動産保証に社名変更しました。

―― 今後の目標は何ですか。
豊岡 会社としては、数年のうちに株式公開したいと考えています。しかしそれよりも、できるだけ多くの方に、眠っている保証金を活きたお金に変えていただきたい。

日本全体では預り金となっている保証金の総額は30兆円に達します。これが半減されれば、15兆円が新たな投資や雇用の確保につながります。このインパクトは大きい。

これまでは我々の営業活動は、ビルオーナーが中心でした。でもこれからは、店子にも積極的に働きかけます。移転やオフィスを拡大する時に相談してもらえれば、ビルオーナーと交渉して、このスキームを承諾してもらうことも可能です。

特に成長期のベンチャー企業は、すぐにオフィスを拡大する必要に迫られます。もしその時に保証金を半減できれば、そのぶん、人を雇うことができるし、それによって成長のスピードを上げることもできます。そういう企業にこそ、このサービスを利用してほしいですね。

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