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トップインタビュー

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2013年5月号より

ドラッカーの教えを企業に注入する経営コンサルタント
山下淳一郎 トップマネジメント社長

山下淳一郎 トップマネジメント社長

やました・じゅんいちろう 1966年東京生まれ。大学卒業後、中小企業取締役、上場企業取締役を歴任。2007年ドラッカーのマネジメントを活用したコンサルティングを行うトップマネジメントを設立した。著書に『なぜ、あのガムの包み紙は大きいのか』(角川フォレスタ)がある。

経営は組織の自律神経

―― 山下さんはドラッカーのマネジメントを活用したコンサルティングを行っていますが、ドラッカーとの出会いはいつ頃のことですか。
山下 21歳の時に『マネジメント』を読んだのが最初でした。でもまったく理解できませんでした。ドラッカーは「事業の目的は顧客の創造だ」と言っているのですが、当時の私は「事業は儲けるもの」と思っていました。だからドラッカーの言っている意味がまったくわからなかった。

何より、「マネジメントの父」のドラッカーだから、その著書を読めば経営の答えを教えてくれるものだと勝手に思い込んでいました。でもドラッカーの本に答えは書いてない。経営者が考えるべきことが書いてある。だけどその当時の私には、それを理解するのは無理でした。

―― それがどういうきっかけでドラッカーを真剣に取り組むようになったのですか。
山下 ドラッカーに真剣に取り組むようになったのは、中小企業で役員の任命を受けてからです。マーケティング部の仕事はマーケティングをすることです。営業部の仕事は、営業することです。同じように、経営者の仕事も経営することです。経営をするということがまったくわかりませんでした。「経営者は何をすればいいんですか?」当時の社長にそう聞きました。その時の答は、「まぁ、2、3年すればわかるよ」でした。

さきほどお伝えしたとおり、ドラッカーの本はもちろん、経営と名のつく著書は読み漁りました。以前には理解できなかったドラッカーの言葉がすんなりと入ってきました。そして多くの経営に関する本を読めば読むほど、ドラッカーほど、経営を体系的に示したものがないことに気づいたのです。

同時に、世の中の経営者が、経営をわかって経営しているわけではないことも知りました。経営をしている経営者はごくわずかです。名刺に取締役と書かれながらも、経理出身の人は相変わらず電卓を叩き、営業出身の人はこれまでと同じように営業に走り回っている人が多くいます。これが、実態です。

経営者の最大の責任は、組織の生存を確実にすることです。経営者としての仕事がわからないことは問題ではありませんが、わからないからといって、わからないまま勘と経験だけで仕事を進めてしまうことは極めて深刻な問題です。なぜなら、結果として、会社は経営不在の状態に陥り、事業が停滞してしまうからです。

経営を行ううえで必要なのは、賢さではなく真面目さです。「あらゆる事業に共通する拠り所となる大もと」と「あらゆる組織に共通する物事の道理」があります。それを「基本と原則」と呼びます。ドラッカーは、「基本と原則に反するものは例外なく破綻する」と言っています。ドラッカーは、この基本と原則を、誰にもわかるように列挙し、実施できるようまとめてくれた人です。

人間の体にたとえれば、各臓器はそれぞれ異なる役割を担っています。しかし、それぞれが勝手に動いているわけではなく、それぞれが関係し合いながら一つの生命体をなしています。同じように、会社をはじめとするありとあらゆる組織が、いろいろな部門で成り立っています。けっして、それぞれの部門が勝手に動いているわけではなく、それぞれが異なる役割を担い、関係し合いながら動いています。

人間の場合、自律神経というものを持ち、それが身体機能のバランスを取ってくれていますが、当然、組織はそのような機能はないわけです。

組織が成果をあげるために自律神経の役割を担うのが、経営者です。経営は、組織の自律神経なのです。

―― 2009年にいわゆる『もしドラ』が発行され272万部というミリオンセラーとなりました。おかげでドラッカーの『マネジメント』(エッセンシャル版)の販売部数も100万部を超えました。『もしドラ』についてはどう評価していますか。
山下 ドラッカーに興味のなかった人にまで裾野を広げたわけですから、著者の岩崎夏海さんの貢献度は大きいと思います。それまでドラッカーというと、とっつきにくい、あるいは昔の人だと思っていた人が多かったのに、現代になくてはならない考え方だということを多くの人が知るところとなりました。

「経営の接骨院」

―― でもこれだけ多くの人がドラッカーを読んだのだから、日本の経営の質はもっと高まってよさそうなものなのに、どうもそうは思えません。
山下 水泳の教科書を読んだからといって、すぐ泳げるようになるわけではありません。それと同じように、何でも時間はかかります。経営も例外ではありません。そもそも経営はこうすればうまくいくという魔法の杖ではなく、物の考え方です。また、どんなに優れた理論であったとしても、実際に、その会社を経営するのは、その会社の経営者本人です。

残念なのは、異なる期待や間違った解釈です。一番困るのは、ドラッカーを実践すれば儲かるなんて言う人です。ドラッカーは、そんなことは言っていません。

―― 山下さんはどうやってコンサルティングしているのですか。
山下 その会社にとって一番ふさわしい経営がわかるのは会社の経営者しかいません。その会社の経営に口出しをしたり、指導したりはしません。事業について徹底的に話し合う場を提供しています。具体的には、社長以下経営幹部5人を対象に、1カ月に1回ミーティングの場をもち、それを1年間続けます。

「山下さんは、経営の接骨院だ」と言われたことがあります。忙しい日常を送っていると、自分で気づかないうちに背骨が曲がってしまっていることがある。山下さんの仕事は知らず知らずに曲がった背骨をまっすぐにすることだ、と。そう言われればそうかもしれません。
―― では、山下さんは、自身が社長を務めるトップマネジメントという会社をどのように発展させていこうと考えていますか。
山下 会社を拡大したいという考えはありません。それよりも、私は、多くの会社に、経営の質を高めてもらいたいと願っています。またそれが自分の役目です。ドラッカーは、次のように言っています。

「ミッションからスタートしなければならない。ミッションこそ重要である。組織として人として、何をもって覚えられたいか。ミッションとは、今日を超越したものでありながら、今日を導き今日を教えてくれるものである。ミッションを失った瞬間、我々は迷い、資源を浪費する」

私が役員をしていた頃、その時の経営陣はまるで与党と野党のような間柄でした(笑)。経営陣の一人ひとりは、調整と呼ばれる根回しに奔走し、社内政治に労力を費やす状態でした。顧客を見ずに進められる事業がうまくいくはずもありません。会社として経営を円滑に進めることができず、業績にも影響していきました。その現実とは、まさに「ミッションを失った瞬間、我々は迷い、資源を浪費する」でした。

経営陣の一人ひとりは、いま以上に成果をあげようと骨身を削って仕事をしていましたが、優れた経営者が集まったとしても優れた経営ができるわけではない、ということを身をもって経験しました。いま以上に成果をあげるために、その時必要だったものは、いま以上に経営の質を高めていくということでした。私はそのような経験から、経営者は「ミッションからスタートしなければならない」と強く考えるようになりました。
忙しさに流されることなく、経営の質を高めていってください。

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