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2013年2月号より

オフィスの置きドーナツで目指すは3年後に1万社

高橋 昌兵  亀戸ファクトリー社長

たかはし・しょうへい 1978年3月生まれ。明治学院大学卒業後、中央青山監査法人に入社。その後、ソフトウェア会社、及び対中国専門鉄鋼商社で、公開準備のための予算・経営計画策定、経営管理体制整備などに取り組む。2009年にクオリティ・オブ・ウェルスを設立。昨年、亀戸ファクトリーの社長に就任した。

病気の店主に代わって経営

―― 高橋さんは大学卒業後、監査法人を経て、コンサルタントとして独立したそうですが、それがなぜ、いま亀戸(東京・江東区)でドーナツ屋を営んでいるんですか。
高橋 このドーナツ屋は、もともと両国にあったけれど立地が悪くて人が来ない、どうにかならないかという相談がありました。そこで店に行って食べてみると、味は悪くない。揚げドーナツでなく焼きドーナツだから日持ちもする。だったら、店の場所を変え、さらに私はキヨスクにコネがあったから、そこに販路を広げていけばなんとかなるのではと考えました。

それで私自身も出資して、店を亀戸に移して再スタートを切りました。それが2011年7月のことです。ところが、わずか4カ月後の11月に店主が病に倒れてしまった。それで私が経営を引き継がざるをえなくなりました。それまでは顔を出すのは週1ぐらいだったのに、週3になり、いまでは毎日ここに来ています。おかげでコンサルタント業は休業状態です。

週に1度オフィスにドーナツを補充、1個100円で販売する。

―― でも1軒のドーナツ屋のビジネスでは、それほどの規模が望めないのではないですか。
高橋 そこで改めてこのビジネスをどう展開していくかを考えました。キヨスクの販路をさらに拡大するという道もありましたが、あまり1つのところに依存したくはなかった。といって当社に特別な商品開発力があるわけではない。だったらどこに強みを持てるかと考えたら販路しかない。その販路でも面白いのはオフィスだろう。ということでたどりついたのが「オフィスドーナツ」でした。

グリコの置き菓子ってありますね。オフィスにグリコのお菓子を置いて、食べたぶんだけお金を支払うというシステムです。でもグリコは焼き菓子は扱っていない。だったらドーナツをオフィスに置いてもらっても競合しないと考えたのです。

われわれが作っているドーナツは1個100円です。このドーナツ数十個と集金箱を置き、1週間に1回、補充と集金を行なう。これをまず試験的に友人の会社でやったのですが、けっこう評判がいい。これはいけると判断して、12年1月から本格的に始めました。

―― それから1年で、どのくらいのオフィスに置くようになったのですか。
高橋 200社以上になりました。平均すると1つのオフィスで週に30~40個のドーナツが売れていますが、六本木ヒルズにあるグリーさんのように、1日100個以上売れるため、毎日補充に行っているところもあります。

これを13年6月までに1000社にまで増やす。そして3年後には1万社にまで拡大することが目標です。このビジネスは、顧客が増えれば増えるほど1社あたりのコストが下がります。現在、損益分岐とんとんのところまで来ていますから、これからは、どんどん利益が大きくなる予定です。

―― うまくいけばいくほど、競合相手が現われて競争状態になるような気がしますが。
高橋 これは陣取り合戦です。ですから先に入ったほうが絶対有利です。たとえばグリコさんが入っているところに、ほかの菓子メーカーが入ろうとしても置かせてもらえない。ドーナツも同じです。ですから、できるだけ早く多くのオフィスを押さえたい。そうすれば他社が参入したくてもできなくなります。

販売ルートは物流インフラ

―― 今後どういう展開を考えていますか。
高橋 いまは山手線の内側を優先的に開拓しています。そうやってビジネスモデルを固めたうえで、大阪や名古屋などの地域にも出ていきたい。その場合はフランチャイズ展開も考えています。

そしてこの販路をきちっと確保すれば、次にこれがインフラとして機能するようになるのです。つまり、このルートに乗せる商品はドーナツだけではないということです。わかりやすいところでは、すでにドーナツと一緒にドリップコーヒーも乗せていますが、それ以外にも、よその会社がテストマーケテイングの装置としてこの販路を使うことも可能です。新商品を、そのターゲットとする人が多く働く職場に置いて様子を見る。

飲食関係だけではありません。現在、試験的にやっているのですが、会員制の高級ホテルに宿泊できるクーポン券を、オフィスドーナツ限定で配布しています。あるいは地域を限定して、その近くにあるお店のクーポン券を一緒に置いて店舗誘導を図ることもできる。インフラがあれば、さまざまな活用法が考えられるんです。

―― いずれは株式上場も視野に入れているんですか。
高橋 3年後に、ドーナツを届けるオフィスが1万を超えれば、売り上げは5億円ぐらいになるはずです。その頃には上場したいと考えています。

―― それにしても、人生の転機というのはどこに転がっているかわからないものですね。とはいえ、いくらコンサル先の経営者が倒れたとはいえ、もともとは手伝いで始めたこと。ドーナツ屋を休業するという選択肢もあったでしょう。
高橋 もちろん考えました。コンサルタント業も順調でしたし。でもいままでは人のお手伝いをしてきたわけですが、自分が主体になって会社を経営すると違う面白さがあることに気づきました。

私自身、店頭に立ってドーナツを販売したんですが、お客様の顔が見える。何よりうれしかったのはリピーターができたことです。一度いらしたお客さんがまた来てくれて、おいしかったと言ってまた買ってくれる。これはコンサルタントにはない喜びでした。

―― 昔から自分で会社を経営したいとは思っていたんですか。
高橋 高校時代から独立したいとは考えていました。大学時代には公認会計士を目指して専門学校にも通っています。ところが会計士試験には落ちてしまい、監査法人に就職しました。

でもこれが幸いしました。監査法人では特定の業界を担当するのではなく、業務プロセスのシステムや会計処理の方法論などの業務コンサルを行ないました。おかげでいろんな会社の業務プロセスを見ることができた。これは勉強になりました。この経験がいまも活きています。

その後、ソフト会社に転じて公開準備をし、次いで商社で働いたあと、29歳の時に独立しました。昔から30歳までには起業したいと考えていましたから、その夢をかなえることができました。

そしてクライアントから紹介されたのが、このドーナツ屋でした。本当に人生、何があるかわからないものですね。

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