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2012年12月号より

ネットカフェを全国で150店。次に目指すは介護のFC1万店

原田 健市  アクロス社長

1956年山口県生まれ。74年大阪工業大学を休学(のちに中退)して井上書店入社。82年京阪奈を設立しレンタルビデオ店開店。95年卸部門をアクロスとして分社。98年からマンガ喫茶を始め2000年からFC展開。04年に京阪奈社長を退任、アクロスに専念。

■独立して始めたレンタルビデオ■

―― コミックバスターというマンガ・インターネット喫茶をFC展開するアクロスですが、原田社長の社会人としてのスタートは井上書店という雑誌や書籍の卸会社だったそうですね。

原田 ええ。高校を出て大阪工業大学に進んだのですが、父が入院したこともあってお金を工面しなければならなくなりました。そこで、大学を休学し井上書店に入社、タバコ屋の店先などにあった雑誌売り場に本を配送し、営業も行うという仕事を始めました。当初は、いずれは大学に復学するつもりだったのですが、ここでの仕事は面白かったし、社長の人柄がすばらしくて、結局大学は中退、ここで働き続けることになりました。

―― そんないい会社を、なぜ8年で辞めてしまったのですか。

原田 1982年の秋のことです。その頃大阪にできたレンタルビデオ店を覗いて衝撃を受けました。すぐに25万円近い再生専用ビデオデッキを買い、寅さんのビデオを借りて家で見てみました。テレビと違って好きな時に見ることができる。しかも途中で止めて、あとで続きを見ることもできる。こんな便利なものがあるのか、と思うと同時に、このビジネスは絶対やるべきだ、と思ったのです。
というのも、ものすごく利益率がよかった。当時のレンタルビデオは、入会金が1万円、レンタル料は1本3000円もした。当時はまだビデオデッキを持っている人が少なかったから、客は1日15人くらいしか来ない。それでも売り上げは20万円ほどあったのです。
そこで井上書店の社長に、社としてレンタルビデオ屋をやろうと提案したのですが、ウンと言わない。そこで、自分でやるしかないと独立を決意しました。

―― これから何が流行るかという時代を見る目があったんですね。

原田 26歳で京阪奈という会社を設立して、東大阪でレンタルビデオ店を始めました。20坪ほどの店でしたが、本当に繁盛して、最終的には5店舗にまで拡大しました。
でもそれ以上に大きくなったのが、レンタルビデオ店の開業サポート支援です。レンタルビデオ店に参入したいけれどどうしたらいいかわからないという人が本当に多かった。そこで開業のノウハウを教えると同時に、ビデオや什器を卸すようになったのです。やがてその事業がどんどん拡大していったため、この部門をアクロスとして独立させたのです。

―― そこからマンガ喫茶へと転身したわけですね。

原田 90年代後半になると、ビデオの価格も安くなり、競争も激化したためレンタルビデオ店も資本がないと生き残れないようになってきました。そこで何かないかと考えていたら、新宿のマンガ喫茶が話題になっていた。そこで自分でやってみたら、ぼちぼちお客さんがはいったんですね。
もともとレンタルビデオ店でレンタルコミックを扱っていたこともあって、ある程度のノウハウもあった。そこで次に、そのノウハウをもとに、マンガ喫茶の開業支援を行うようになったのです。

―― ここでも時代の波にいち早く乗ったわけですね。

コミックバスターは地域の実情に合わせた店づくりを行っているため、同じ店舗は2つとない。大型店ではビリヤード台まで置いてある。

原田 ところが、レンタルビデオと違って、マンガ喫茶の成功率は約5割。やってみないとうまくいくかどうかわからない。そこで何かいい方法はないかと考えていたちょうどその時期に、NTTがISDNの定額サービスを始めたのです。
もともと社員にパソコンを持たせ、社内メールで情報を共有するなどITには興味がありました。そこでマンガ喫茶でインターネットを使えるようにしたらどうかと考え、京橋(大阪)の店でサービスを開始しました。
すると、これまでとは違うお客さんが来るようになった。たとえば英会話スクールの外国人講師が生徒を連れてくる。
これはいけるかもしれないと思って、次に地方の店でやってみたらこれもうまくいく。ならばどこでやってもうまくいくに違いない。そう確信して、マンガ・インターネット喫茶のFC展開に本格的に取り組むようになったのです。これがちょうど2000年頃のことでした。
いまではコミックバスターは全国に151店舗となりました。しかもマンガとインターネットだけでなく、店舗によってはビリヤード台やカラオケを楽しむことができます。

―― もはやマンガ喫茶などという言葉ではとらえられないほど複合化・多様化しているんですね。

原田 我々は自分たちを空間提供業だと考えています。そこで提供するのはアメニティやエンターテインメントではなくホスピタリティです。来ていただいたお客さんに快適に過ごしていただく。オーナーの方たちにも、そのことを訴えています。

 

■今年が第二の創業■

―― ところでアクロスは、2007年に上場申請しながら公開を中止しています。何があったのですか。

原田 コミックバスターが軌道に乗り、上場を申請したのですが、その直後に業績の下方修正が避けられなくなってきていました。そこで証券会社のアドバイスもあって中止したのです。いまでは正しい決断だったと思っています。
でもなぜ上場しようと考えたかというと、社員にプライドを持ってほしかった。それはいまでも同じです。それでいまから5年後をメドに、もう一度上場にチャレンジしようと考えています。
そのためにはもう一つ、経営の柱をつくらなければなりません。それが介護です。現在、樹楽という、宿泊もできる小規模デイサービスを40カ所でFC展開しています。日本には要介護でありながら介護施設を利用できない高齢者が80万人もいらっしゃいます。この人たちのお役に立ちたいと考えています。そのためにもできるだけ早く1万カ所で展開したい。
デイサービス事業は3年前から始めましたが、これをやることで私の考えも変わりました。それまでは社員や加盟店が食べていければいいくらいの意識でしたが、いまでは世の中に役に立つためにも、きちんと成長していこうと考えています。
今年、会社設立30周年を迎えました。これを第二の創業と捉え、もっともっと頑張っていくつもりです。名前も本名の「健一」から「健市」へと変えました。気分一新の再スタートです。

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WizBiz代表・新谷哲の著書「社長の孤独力」(日本経済新聞出版社)

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