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経営者インタビュー

「月刊BOSS」と、日本最大級のビジネスマッチングポータルサイト「WizBiz」との提携に伴い、 17万社を超えるWizBiz会員の中から伸び盛りの企業を毎月1社をピックアップ。トップの事業への情熱に迫る。

2018年2月号より

【BOSS×WizBiz】段階的に進むキャッシュレス社会 デビットカードも順次浸透する
安渕聖司 ビザ・ワールドワイド・ジャパン社長

安渕聖司 ビザ・ワールドワイド・ジャパン社長

やすぶち・せいじ 1979年、早稲田大学政治経済学部卒、同年三菱商事に入社。90年米国ハーバード・ビジネススクールでMBA修了。99年米国投資ファンドのリップルウッドの日本法人立ち上げに参画。2001年UBS証券に入社。06年GEコマーシャル・ファイナンス(GECF)・アジアに事業開発(М&A)担当上級副社長として入社、07年にGECFジャパン社長兼CEO。09年GEキャピタル社長兼CEOに就任、16年GEによる三井住友ファイナンス&リースへの事業売却を経て、SMFLキャピタル社の経営を担う。17年4月1日より現職。

モバイルの進展で激変

── AI(人工知能)やフィンテックの進展の影響もあってか、メガバンクではこぞって大幅な人員削減を発表し、またATM(現金自動預け払い機)や店舗も減らしていくとアナウンスしています。そして地銀は再編の途上と、金融界も激動ですが、まず安渕さんは最近の動向をどう見ていますか。
1つは、2007年にiPhoneが出て10年、この間のモバイルのパワーってすごいものがあったじゃないですか。今後、20年まで消費が増えていくという見立ての中では、モバイル関連の伸びが全体の64%とまで言われています。要は、スマホを活用したモバイルのビジネスをどう取り込んでいくかで、金融界も大きく変わってくるということです。

日本でもスマホの所有率が直近で54%。それが20年には8割を超えてくると、やっぱりもう、スマホの世界なんですね。そうなると物理的な銀行の支店などが徐々に要らなくなってきて、我々が手がけているキャッシュレスのビジネスにモバイルのテクノロジーを掛け合わせていくことで、より便利になっていく。それに合わせて金融の形も変わっていかざるを得ないでしょう。

金融界は多くの支払い情報を持っています。そこがどんどん電子化してくると、たとえば我々のデビットカードを各銀行さんに出してもらっていますけど、デビットカードは1件1件のトランザクション(取引履歴)が全部、残るわけです。それを、AIを使った会計簿ソフトとか、そういうものにつなげていく。

その数字やデータを銀行にも提供することで消費のパターンがわかってくると、どこでお金が余っていて、どこで足りないか、あるいは自動的な資金運用ができたり、お金が足りないところには、そのギャップのファイナンス表を付けてくれたりと、そういったことが可能になるので、金融もどんどん高度化して変わっていくことになります。

── 金融界も対面サービスは段階的に今後も減っていき、いずれはなくなっていくのでしょうか。
いや、これから対面で必要なことも、実は増えていくと思います。信託銀行がやっているような、たとえばお子さんに遺産、財産を遺すにはどうしたらいいかといったご相談は、AIをもってしても、なかなかできない分野でしょう。そういった、いわばハイタッチのものとテクノロジーのものは棲み分けていくんじゃないでしょうか。その両方が、これからの金融機関には求められていくと思います。

もう1つはセキュリティ。フィンテックとは言っても、自分の資産や金融取引の情報をフィンテック関連企業に渡してしまって本当に大丈夫かといった不安は、そろそろ出てきています。一定以上の基準のセキュリティをしっかりと持ち、それが安心安全に使われ、だから信頼して情報やデータを渡してもいいんだという環境づくりは大事です。

そういう意味では、銀行が果たす役割は、ここでも増えてくるでしょう。銀行が持っている信用力ですね。たとえば、あるお店に「両替できます」と表示されていたとしても不安ですよね。そこには何かの権威づけや、信用のバックグラウンドも必要ですから。

── さて、日本が海外に比べて遅れているキャッシュレス社会を進めていく上で、その条件はどう考えますか。
デビットカードのような、割と小額の日常使いがこれから増えてくると思うんですね。
デビットは、米国ではもう20年以上も前から出ていて、デビットとクレジットカードを比べると、デビットはスーパーマーケットやドラッグストア、コンビニなど、米国でもそういうところでよく使われています。

一方のクレジットカードは、たとえば旅行であるとかスーツを買うとか、あるいは家電の購入など、やや高額なものというように使い分け、棲み分けができている。日本でもクレジットカードは米国同様の使われ方をしていますので、日常使いでのデビットカードは今後、順次増えてくるはずです。数年前に取った統計ですと、5000円以下の支払いは日本では、9割以上が現金なんですね。そこの部分をデビットが入れ替え、代替していくのが1つの流れになっていくと思います。

特に、ミレニアルと呼ばれる若い世代を見ると、育った時代背景がずっと低成長で失われた20年と言われてきたこともあってか、クレジットカードはそんなに好まない。でも、お金を使い過ぎないで済むデビットカード(預金残高の範囲で即時決済)については使ってみたい、あるいは実際に使っている人もいるのです。そこは1つ、潮流として変わってきていますね。

日本政府もキャッシュレス比率を、現在の18%から10年以内に2倍以上にして、4割にするという目標を立てましたので、そこに向かっていろいろな施策が打ち出されていくはずです。もう1つがインバウンド(訪日外国人の観光客)。この方々が16年で2000万人を超え、20年には4000万人、市場規模も8兆円と言われているわけです。

日本のモノでもコトでも、消費する際はキャッシュレスがすごく有効で、これはまた、地方振興にもなるんです。地方各地にインバウンドの方々が行かれて、そこで日本円の持ち合わせがなくてもお店で決済できれば、日本の良さを、より知っていただく機会が増えるわけで。

── Visaの日本法人としても、今後の事業の軸足は、クレジットカードよりもデビットのほうにあると。
いままでは使われていなかった分野をカバーするという意味で、デビットカードはこれから大きな伸びを示すと思います。もちろん、クレジットカードも依然としてあって、みなさんお使いなのですが、クレジットカードのほうはもう、日本でも十分に定着していますからね。

もう1つ、海外で使える非接触型ICカードを考えますと、たとえば豪州へ行っていただくと、大半が非接触カードなんですね。ロンドンの地下鉄もみんな非接触ですし。Visaの非接触の技術(具体的にはpayWaveという)を日本にも持ってきて、いま少しずつ広めているところです。

日本の方も非接触型カードを持てば、日本でも使えるし海外に行ってもそのまま使えると。アジアでも、シンガポールあたりでは、全体の4割以上が非接触型カードの決済になってきています。日常使いのデビットカードに非接触機能が載ったら、電子マネーのように使えますし。

Visaデビットの発行枚数500万枚を記念したイベントでは、発行銀行の幹部や、テレビCMで起用した女優の上戸彩さんも登場(2017年7月18日)。

電子マネーと違う点は、自分の口座なのでその口座から紐づけられていること。たとえばその口座を給与振り込み口座にすれば、より使いやすくなって利便性も向上します。しかも、単純な電子マネーとは違って毎回、お使いになったらスマホに支払い記録が届くんです。これはとても便利で、そこからたぶん、2クリックぐらいでさらに支払い後の残高を見ることもできる。

たとえば、いままでは月に3回、ATMに来るだけのお客様だった方が、デビットカードですと月に9回ぐらい使われています。ということは9回、お客様とコミュニケーションする機会があるわけで、お客様自身も、何にいくらお使いになったかがわかって残高も確認できる。そこに銀行からも特別金利のお得なキャンペーンなどのメッセージがスマホの画面に出せますので、銀行とお客様をつなぐ情報という意味でも増えてくると思います。

電子マネーとの違いは

── セブン&アイHDのnanaco、あるいはイオンのWAON、JR東日本のSuicaなど、電子マネーだけのものよりも、デビットカードと電子マネーが一体になったカードのほうが普及していくだろう、という見立てですか。
Visaでいえば、お支払いの5割以上がすでにデビットカードになっていますし、流通系の電子マネーなど、特定のポイントが付くようなタイプも依然として共存していくと思いますが、日本でも海外でも使えるとなると、デビットカードのほうが、より便利に使っていただけるのではないかと。

── その過程では、Visaの非接触型技術である、payWaveの普及をますます促進されると思いますが、一方で、日本で非接触型カードといえばFelica陣営が大きな存在としてあります。
確かに、日本では2001年ぐらいからFelicaのプロダクトがあって、そことの共存は続くと思っています。たとえば三井住友銀行さんが出しているデビットカードを見ていただくと、券面の表にはpayWaveが載っていて、裏にはいiD(NTTドコモ系)が載っている。そういった共存しているカードもすでにありますので、Felicaと共存するスキームは日本では長く続くと思います。特に鉄道系の電子マネーは圧倒的な強さですので、我々が「トランジット」と呼んでいるそうした分野では、Felicaはずっと使われていくでしょう。

中小企業の決済にも商機

── 今後、ほかに成長期待が大きい分野は何でしょうか。
これから伸びるかなと思っている分野は、いわゆるB2Bのデビットカードですね(17年11月9日にみずほ銀行との提携による法人向けデビットカードを発表)。中堅中小企業のオーナーの方々は、仕事の決済も個人のクレジットカードを使っておられたりするんですけど、なかなかそんなに大きな金額のクレジットリミットはつかないですし、ベンチャーのスタートアップ企業でもお使いいただける。この分野は我々も増やしていく予定です。

従来のビジネスは、いわゆるエクスペンス関連、たとえば旅費や交際費といった部分を法人カードで払っているケースが多かったんですね。これからは、原材料費を支払うような部分も含めてデビットで払えるようになってくると思います。

── 東京五輪を睨み、20年夏までを見据えた戦略はどうでしょう。
Visaは、五輪ではワールドワイド・パートナーですので、まずは五輪の会場とかオフィシャルストアで、たとえばさきほどの非接触型など、未来のキャッシュレス決済の形をお見せできるかが大きなところになってくると思います。前回のリオ五輪では、ペイメントリングといって、リングに支払いシステムを組み込んだものを体験してもらったりとか、世界のオーVisaでいまもいろいろ研究しているところです。

支払い面で目指しているところの究極は、徐々に支払いを意識しないで済むようにすること。たとえば、お店にレジがあってそこに並んでというのではなくて、米国ではウォルマートなどが実施していますが、プリオーダーしてお客様は商品を取りに行くだけと。いわば、マンションの宅配ロッカーみたいなイメージですね。決済の未来の形として何ができるかということを、五輪を1つのショーケースとしてお見せできればと考えています。

── 最後に、ビットコインやAI、IoT、フィンテックなど、最近の話題のキーワードとも絡めた将来の展望ですが。
Visa自身はカードを出していないことから、我々はペイメント・テクノロジーの会社であると定義しています。「Visaネット」という、世界中をつないだ支払いのネットワークですよね。そこにはいろいろな決済データが入ってきて、そこの分析を通じていろいろな付加価値を提供できたり、いろいろなリスクマネジメントのツールがあります。

また、もうすべてを自分たちで作る時代ではない。我々は“コー・クリエーション”と呼んでいますが、お客様のニーズ、消費者のニーズを、どう組み合わせてAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェイス)を使えば実現できるかという研究を、いま一生懸命にやっているところです。

たとえば、自分で自分のカードの利用金額の制限を自由に変えられるとか、あるいは海外に行く時はいくらぐらいの持ち合わせにしたほうがいいとか、実際に海外ではカードコントロールのアプリもできていて、いずれ日本にも入ってくるでしょう。

我々はネットワークやデータ、セキュリティといったテクノロジーを社内で持っていますので、それらを使ってフィンテック関連の人たちとも一緒にやっていきたい。フィンテック企業には一部、投資もしていますし、逆に、我々のようなプラットフォームにフィンテックが乗ってくることでできることもありますから。

ほかにも、当社のお客様である北國銀行さんが、社員食堂をすべてキャッシュレスにしたんです。電子マネーも使えるのですが、ともあれ現金は一切使えないと。

キャッシュレス先進国の北欧では、子供たちが現金を見たことがないと言っているくらいですしね。一方、日本の企業は認証技術などが得意なので、キャッシュレス社会でチャンスが出てくると思いますし、高齢者の方々を、いかにデジタイズしていけるかが鍵でしょう。

(聞き手=本誌編集委員・河野圭祐)

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