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経営者インタビュー

2017年5月号より

まずは国内での成長が重要 飲料分野は海外にも軸足
小郷三朗 サントリー食品インターナショナル社長

尾賀 真城 サッポロホールディングス社長

おが・まさき 1958年12月2日生まれ。東京都出身。国学院久我山高校を経て、82年慶應義塾大学法学部卒。同年4月サッポロビール(現・サッポロホールディングス)入社。97年東京支社流通営業部長、99年市場開発本部流通営業部担当部長、2002年ビール事業本部マーケティング部サッポロブランドグループリーダー、03年純粋持ち株会社に移行、04年から06年まで近畿圏本部、北海道本部、首都圏本部で支社長や流通営業部長などを歴任し、09年執行役員に就任して北海道本部長、10年取締役兼常務執行役員営業本部長、13年社長に就任。17年1月サッポロホールディングスのグループ執行役員社長に就き、この3月末の株主総会後の取締役会を経て、代表取締役社長に就任予定。座右の銘は「人生一度きり 今この瞬時を生きる」。趣味は読書、旅行。

ブランド力をさらに磨く

── 酒税法改正に伴って、ビール系飲料にかかる酒税は3段階に分けて10年がかりで行われる見込み(2020年から26年にかけて。現在、ビールにかかる酒税は77円、発泡酒が47円、第3のビールが28円。これが26年には一本化されて54円に統一される予定。伸長中の缶チューハイは28円から35円へ)ですが、まず、今後に与える影響はどう考えますか。
どちらかといえば、この変化の激しい時代に10年もかけるのかということと、段階的にということなので、要はお客様にとってみると、酒税が上がったのか下がったのか、わかりにくいんですね。最終的に、10年後に1本化した時にはお客様にもわかりますが、それでも10年かかる話ですから。まずは、我々は常にお客様に向き合い、常にブランド力を高めていく努力をしていかなければいけないと思います。

発泡酒も新ジャンル(=第3のビール)を出して、これまで戦線を拡大してきましたが、もう一度、サッポロビールの何たるかをお客様にわかっていただくには、やはり(看板ビールの)「ヱビス」であり「黒ラベル」であり、あるいは赤星の「ラガービール」や「サッポロクラシック」など、当社のビールをお飲みいただき、美味しさをご理解いただくことが一番、重要なことです。

もう1点、ビール業界は商品の量を売る産業ではありますけど、それだけではなく、1杯をいかに美味しく飲んでいただくかとか、時代の変化に合ったご提案に変化させていくことが大事で、その積み重ねに尽きます。今後、(ビール系飲料の)総需要が前年比でかなり上にいくというのはなかなか難しいと思いますが、既存ブランドを育てつつ、クラフトビール的な商品も含めて新しいご提案をしていくと。

── クラフトビールに関しては、キリンビール同様、サッポロでも別会社のジャパンプレミアムブリューを持っています。
たとえば米国では、ものすごくクラフトビールのマーケットが広がり、全体に占める比率も増えていますよね。ただ、日本と米国との比較でマーケットが根本的に違うのは、日本はビールメーカー4社で、年間のトータルでは90前後もの新商品が出るわけです。要は、すごくきめの細かいマーケティングをやっていて、それぞれの季節に合ったビール、あるいは地域に合った商品とか、いろいろな提案をしているということが挙げられます。

一方で、米国のビール市場はスタンダード商品があると、そのライト版など、数種類しか広がりはありません。その点、日本はすでにクラフトビール的な商品提案をずっとやってきたといえるでしょう。派生商品を含めて選ぶ選択肢が多いのです。

我々には、北海道に開拓使麦酒醸造所があって、ここは本当に小ぶりな生産ロットなので、だからこそできる、北海道の地域だけで売るようなこともずっとやってきています。

メーカーの名前を冠した、細かい商品をクラフトと呼ぶこともできますが、定義がはっきりしていませんので、当社ではもっと細かく、あるいはもっと小ロットでという対応をしていきたいですね。ですから、クラフトビールであればたとえば、3000ケース(1ケースは大瓶20本換算)とか5000ケースしか作りませんとか、今回の生産分は完売で終了しましたとか、そんな形でもいいと思っています。

── そうした全体の積み上げの結果として、もう一度、往年のシェア20%に戻していこうと。
シェアありきではないと思っていますけど、さりとてシェアは低いより高いほうがいい。お客様の支持の結果としてシェアが生まれていることは重視しないといけません。いまよりも区切りのいい(シェア15%とか20%など)ステージに持っていきたいという気持ちはあります。

ポッカは海外にものびしろ

── オールサッポロビールとしては、ビールを中核としつつ、ワイン、あるいは市場が伸びている缶チューハイなどのRTD、それに清涼飲料、食品ですが、今後の成長のためのポイントは何でしょうか。
やはり国内が安定していないといけません。グローバルという考え方もすごく重要だとは思っていますが、国内が安定していないと難しいですよね。本業のビール、それからこの10年間で、ビール以外のジャンルの商品もずいぶん増やしてまいりました。焼酎しかり、洋酒ももう一度、「バカルディ」の商品をそろえ、(デイリーワインよりワンランク上の)ファインワインの拡充をし、RTDも作るようになってきましたから。

そういった意味では、ビール以外の分野の比率も伸ばしながら、トータルの総合酒類として、国内市場で成長していくんだというのが1つの基本です。

ポッカサッポロフード&ビバレッジは、いまさら缶コーヒーや缶ジュースなどの分野では、ほかに大きな強いメーカーがたくさんいらっしゃるので難しいところもありますが、ポッカだからこそ出せる商品を国内でもやらないと。

たとえばお茶も単なるお茶ではなく、「加賀棒ほうじ茶」がありますし、旧サッポロ飲料時代からの、「富良野ラベンダーティー」といったもの。あるいはポッカサッポロだからできる、得意領域のレモンも世界のレモンとか、徹底してレモンに強い会社を目指すとか。

また、ポッカはシンガポールを含めて、東南アジアでのブランド力がものすごくあるんです。そこは日本以上に強く、今年はインドネシア、ミャンマー、マレーシアにもポッカの工場ができますから、これらが整っていくとビジネスのポテンシャルが一段と広がります。

── ほかに、同業他社にはない強みとして不動産事業(別会社のサッポロ不動産開発があり、恵比寿ガーデンプレイスやGINZA PLACEなど好ロケーションに物件を保有)があり、不動産事業の営業利益は国内酒類事業に比肩する金額になっています。
2020年の東京五輪に向けて、首都圏エリアはまだまだ投資可能だと思います。ただ、今後も不動産事業をどんどん展開していくというよりは、既存の資産をさらにバリューアップし、安定的に稼ぐ部門として位置づけ、投資に関してはやはり本業重視でいきます。

── M&Aに関しては、同業他社はここ10年ぐらいの間に相次いで大型買収をしてきましたが、サッポロでは買収資金も含めてどのように考えていますか。
M&Aは、なかなかすべてがうまくいくということではないので、事前の準備や調査も必要。あとは、買収金額がずいぶん高騰しているという向きもありますので、何年で回収できるのか、我々が耐えられる規模なのか等、そこは冷静に判断していかなくてはいけないと思っています。身の丈以上のことを無謀にやろうとは思っていませんが、さりとてM&Aのチャンスはそう何回もあるわけではない点も踏まえ、総合的に判断していきます。

すでに発表しました、2026年までの10年の長期ビジョンと、まず最初の4年の中期経営計画とがありますが、いまは20年に向けての第1次中経にまい進します。大きく伸ばすのは、やはりお酒と飲料の分野になろうかと思います。特に、飲料分野は海外も含めてですね。

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