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経営者インタビュー

2016年9月号より

教養課程やゼミを抜本改革 大学経営にも「中内DNA」
中内 潤 流通科学大学理事長兼学長

中内 潤 流通科学大学理事長兼学長

なかうち・じゅん 1955年3月27日生まれ。78年慶応大学法学部卒。80年同大大学院経営管理研究科修士課程修了。84年同大学院商学研究科博士課程修了。90年商学博士。ダイエーには80年に入社。84年取締役、86年代表取締役専務、89年代表取締役副社長。03年4月流通科学大学理事長に就任。16年4月より学長も兼務。息抜きはドライブで、SUVを駆って、たまに淡路島などに出かける。

少子化の中で、大学はどこも生き残りを賭けて知恵の絞り合いだが、その中で異色な存在といえるのが流通科学大学(神戸市西区)。同大学は、ダイエー創業者で日本に「流通革命」の足跡を残した、故・中内㓛氏が創設した。そこで、同氏の遺志を受け継いで大学の理事長兼学長を務める中内潤氏に、サバイバルに向けた大学改革を聞いた。

劇的変化、入学後の半年

―― 今年4月から、理事長に加えて学長も兼務されています。その狙いは何でしょうか。
昨年度から、大学のカリキュラムでかなりの大改革をやっていますので、それが落ち着いてくる向こう4年間、とりあえず(兼務で)やってみようかなと考えています。その改革の中身ですが、具体的に言いますと、入学後の半年間は講義の時間がない形に変えています。昨年度から、教養課程の必修科目をほとんど全部、カットしましたので。

―― それは思い切った施策ですね。でも確かに、昔の私の学生時代を思い返しても、教養課程の講義って正直退屈でした(笑)。
それは個人差あると思いますが、大きな狙いはこういうことです。流通科学大学は文系で商学部を軸にしていますが、入学してくる学生たちの多くが、明確な目的を持っていないことに危機感を持っていました。

たとえば、弁護士を目指すなら法学部、医者なら医学部、建築技師なら工学部とか、目的が明確になる学部があるでしょう。でも、流科大のような商学部や経済学部、人間社会学部の学生たちに「将来は何になりたいの?」と問いかけても、ほとんどの学生が答えられないんです。卒業後、何となく就職できればいいみたいな感覚がありましたから。

そうではなく、自分が何になりたいかの将来設計をきちんと考えてから大学で学んでほしい。たとえば中学、高校で英語を勉強してきていても、ほとんどの学生は実用にならないでしょう。とりあえず試験に通ればいいという勉強の仕方だからです。そこで、本当に英語に興味がある学生は早い段階で、短期でもいいから留学経験をさせてみるのです。で、「これからは絶対に英語や」と思った学生に帰国後、英語を教えたら吸収力がまったく違うんですよ。

ことほどさように、入学したらいろいろなところへ行かせ、いろいろな話も聞き、自分が本当にやりたいこと、なりたいことが何かを真剣に考えてもらうわけです。ですから、新入生に企業訪問もさせますし、こちらから講師をお呼びして企業の話をしていただくこともあります。ほかにも、あちこちのショッピングセンターに行かせて、自由にフリーな立場で見させる。そこに身を置いて、自分が何に興味を持つのか。そういうことをチーム単位でやらせてレポート的なものでまとめさせています。

そうやって最初の半年間でいろいろな見聞をさせ、次の半年間でその興味が本当に確かなものかどうかを見極めてもらうのです。そして、2年生になる時に学部、学科を自由に選択できるようにもしました。ですから、観光学科で入学しても、後にマーケティング学科に移ったり、その逆になったりということもできる。

―― こうした試みは、ほかの大学でもやっているのでしょうか。
たぶん、ないと思います。英語とか、教養課程で必修の講義があると思いますが、それを全部、なくしましたから。先生方もよく受けてくれたと思います。学生にとって、自分には興味がない講義だったら、単位を取るために仕方なく受けるといった受け身の域をまったく出ません。それは、学生にとって大いなる機会損失だと思います。

―― まだ昨年度から始めた改革ですが、目に見える形での成果は上がっていますか。
成果を問うのは、昨年度からの4年間を経てからになりますが、一番大きかったのは大学の中退率、あるいは除籍率がかなり減ってきていることですね。もう1つ、入学式も昨年からガラッと変えました。会場の壇上に新入生全員に上がってもらい、一言ずつ話してもらうようにして、先生方はそれを聞くだけにとどめていただく。壇上には一切、上がりません。普通は逆ですよね。入学式も、受動的なやらされてる感から能動的なやります感に変え、当事者意識や目的意識をスタートから明確に持ってもらおうと考えました。

―― 今年度からは、改革の第2弾として「学生生活モデル」というものがスタートしたそうですが。
まず、カリキュラムの〝見える化〟ですね。入学後、向こう1年間はどんな先生のどんな講義があるのかはわかりますが、もっと踏み込んで、4年間のカリキュラムをすべて公開しました。

神戸市営地下鉄三宮駅の改札にある広告が目を引く。

たとえば、観光学科で学んで将来はホテルに勤めたい学生なら、ホテルコースを取ると1年ではこれを学び、2年生以降はこういう講義があるといったロードマップを明確にしました。そして、大学の最終年度ではこれを勉強しますというスケジュールを、入学時に見せてあげるように変えています。

また、インターンシップ制度はホテル側で準備しています、アルバイトも経験できますと。つまり、実際のホテル業に学生時代から慣れながら、同時並行でホテルに勤めるために大学で勉強もする、そういう姿ですね。それが今年度からスタートした学生生活モデルです。各学科ともコース別に全部そうして、学業のみならず、アルバイトや普段の生活までアドバイスしてあげようと。

―― 折からのインバウンド需要の高まりや4年後の東京五輪を考えると、学生も何となく観光やレジャー、ホテル産業はこれからいいと考えるでしょうけど、その意識が一過性なのかどうか、本気度が試されますしね。
高校時代に持っていたイメージと、大学入学後、実際にホテルなどへアルバイトに行って、あるいはホテルの方にも講演に来ていただきながら、いろいろと自分の五感をフル活用、総動員して見極めてもらいたい。「これならホテルに行こう」とか、「イメージと違ったからやめておこう」とか、いろいろ出てくると思いますが、特に自分の考えを軌道修正する場合、その見極めは早いほうがいいでしょう。

―― 2年後の2018年には、流科大創立30周年にもなります。
昔は、流科大も“オンリーワンとナンバーワン”という要素を大事にしていましたが、いまはその要素をほとんど(他大学に)キャッチアップされており、今後はどうしていくか、いろいろと模索しているところです。ただ1つ言えることは、本当の意味で面倒見のいい大学になっていきたいなということですね。

―― その18年は、(大学進学の)18歳人口が一段と減ってくる年と指摘されています。
競争が、より激しくなることはわかっているのですが、他大学と戦うことよりも、まずは自分のところで戦うことが大事です。「自分たちの大学はこれが売り物だ」というのを作らないといけません。18歳人口が減るのはわかっていても、いまはそれどころではなく、自分たちの大学の改革に必死というのが現実です。

―― 流科大と言えば、大手企業の経営者に講演してもらう「企業論特別講義」(昨年度で言えば、リクルートホールディングスやファンケル、YKKの各社長、大和ハウス工業会長らが登壇)も特色の1つです。
実は、これも改革しようと思っています。これまで、業種や業態に関係なく、企業トップの方にお話しいただいてきましたが、「私はホテルに行きたい」あるいは「自分は小売業に行きたい」といった声が学生に多ければ、該当企業の方にお話しいただいたほうが、より興味を持つのは当然です。

あるいは、ブライダルとか金融関係の講師でもいいのですが、いまは講師の選定で、選ぶ業界がバラバラなんです。もう少し、そこは業界を絞って特別講義を考えていきたいですね。その特別講義を、より充実したものにしていくうえでも、さきほどの学生生活モデルを確立していかないといけません。この夏にメドをつけて、後期から、来年の講師の人選をし、具体的にお願いしていこうと思っています。

商業高校とも連携を強化

―― 一方で、大学経営を見る理事長の立場からすると、中長期ではどんな考え方を。
とりあえず(理事長、学長の)両方見ているわけですが、向こう5年は、たとえば寮を作ったりとか、将来に向けての投資の時期かなと考えています。同時に自分たちの地盤固め。学生のためにどれだけのことがしてあげられるかが最も大事な点で、そこが固まって初めて、「さあ、打って出るぞ。どこそこと競争するぞ」といった話になると思います。まずは地盤固めをしていかないと、戦うに戦えません。

とにかく、流科大3500人強の学生たちにいかに満足してもらえるかを第一に、学内の図書館やレストランも改装しながら、あらゆる点で誇りを持てるようなことに取り組んでいきます。

―― すでに、今後のさらなる改革も考えているということですか。
ゼミも、以前は2年の後期は必修でしたが、それも廃止にしました。「それではゼミの応募率が落ちる」とも言われましたが、結果は、逆に上がっています。なぜか。1、2年生で何をやりたいかが明確になってくれば、自ずと「このゼミでこの勉強をしたい」というものが出てくるからです。ただ、特定の先生にゼミ募集が集中したらどうするか、あるいは分散をどうするかというのは、また次の課題ですね。

―― 就職は、以前伺った時は流通小売業で4分の1ぐらいということでしたが。
いまは30%近くまで上がってきていますが、小売業はアルバイトで接するイメージがどうしても強く、きついとか厳しいといった印象があるようです。

そこで、「リテール人材育成プログラム」というものを作り、小売業は、商品を仕入れて入ってきたら補充し、レジで売っているというだけではなく、きちんと各企業で商品開発や店舗開発などもやっていることを教えて、そこが理解されれば、より小売業に興味を持ってもらえます。そういうこれまでの固定観念的な小売業のイメージは、根底からガラッと変えたいですね。

―― 国内外で、他大学との提携やアライアンスはあまり考えていないですか。
海外でいくつか提携校がありますが、これも全部見直しをしようと。提携しているというだけでは、あまり意味がありませんから。むしろ、提携という意味ではいま、高校、特に商業高校と少しずつ提携をし始めています。

具体的には、流科大の先生方に商業高校へ出向いていただき、マーケティングの話や商品開発の話をしていただいてます。商業高校、イコール簿記会計の勉強というのは過去のイメージで、最近はマーケティング系や経営系の授業も多くなってきていますので、マーケティングの先生などにも活躍の場が広がっているんですよ。

大学入口付近にある故・中内㓛氏の胸像。

―― 最後に、流科大の近未来像についてはどう考えますか。
とりあえずは、さきほども言いましたように地盤固めです。もう一度、自分たちの強みとは何なのかを、教員も職員も全員が認識することですね。その過程で、いわゆる従来の大学とは違った形になっていくかもしれません。教育の場が、たまたま大学であると。あるいは18歳から22歳ぐらいまでの人たちを鍛える場だと考えています。

ですから、奨学金制度も今回変えて、勉強だけしていてもダメ。クラブ活動やボランティアなど、何か勉強以外の社会的な活動をしないと、奨学金対象として認めませんという形にしました。机上でコツコツやることだけが勉強ではないと考えていますから。

ともあれ、これまでの大学のイメージにこだわらず、原点に戻ろうと。そして、学生に学びたいことを見つけてもらいたいですね。(大学創設者の故・中内㓛氏の語録である)“ネアカ のびのび へこたれず”の精神を忘れずに、もう一度、オンリーワンとナンバーワンを再構築していきたいと思います。

(聞き手=本誌編集委員・河野圭祐)

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