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2013年1月号より

“牛丼御三家”に直球勝負「東京チカラめし」の成算
平林実 三光マーケティングフーズ社長

平林実 三光マーケティングフーズ社長

1949年東京都生まれ。72年法政大学卒業後、飲食店に勤務。75年、定食屋「三光亭」を開店。77年「三光フーズ」設立。84年に居酒屋「だいこんの花」を開店。98年個室居酒屋「東方見聞録」を開店。2003年ジャスダック上場。04年東証2部上場。09年から270円居酒屋「金の蔵Jr.」を積極展開。11年には焼牛丼店「東京チカラめし」をオープンした。

第1号店を東京・池袋に出店後、わずか1年4カ月で110店舗にまで拡大した「東京チカラめし」。牛肉を焼くという、従来の牛丼とは異なるアプローチで「吉野家」「すき屋」「松屋」の牛丼御三家に勝負を挑んでいる。御三家で市場の9割という寡占状態の牛丼業界で、どう存在感を見せるのか。東京チカラめしを展開する三光マーケティングフーズの平林実社長に話を聞いた。

縮小する外食産業

―― ここ10年ほどは、外食産業の市場規模が縮小する一方です。現在の市場の動向について、どのように見ていますか。
平林 自分自身もハラハラしているというのが率直な気持ちですね。どこで下げ止まって、どういう状態になるのか。これだけコンビニエンスストアが巷にあふれて、食べ物関連の商品に力を入れている。当然、外食にも影響はあるでしょう。少子高齢化は進んでいますし、インターネットでモノが動くのも盛んになるでしょう。こういう背景のなかで、お客様の外食への利用動機とチョイス。ファミレスやファストフード、居酒屋も含めて、どういう店が選ばれていくのか。やはり生き残っていくためには、社会的信用と価値のあるブランドが基準になると思います。

―― 三光マーケティングフーズでは「東方見聞録」「月の雫」「金の蔵Jr.」など居酒屋で成長してきたわけですが、その居酒屋が特に厳しいと言われていますね。
平林 居酒屋は衣食住の「食」のなかでも日常的なインフラから少しずれたところでマーケットがありました。それが少子化とともに若い人がお酒に対して淡白になってきています。宴会のロットも少なくなって、これから忘年会シーズンですけど、あちこちに呼ばれて顔を出していたのが、その回数も少なくなってきている。二次会、三次会と流れる勢いもなくなっています。日常的な居酒屋の利用動機も減ってきています。

―― 若い世代のお酒離れが大きいのでしょうか。
平林 昔と現在では、若い人たちの生活習慣がまったく違ってきていますからね。飲むというのは、仲間が集って自然と流れの中で習慣づいていったんですが、現在は早く帰宅してインターネットにしてもスマートフォンにしても自分の世界に入ってしまう。いまは学生の時代から飲まなくなっていますよ。

―― パイが縮小するなかで、競争が激しくなり、低価格の居酒屋も増えてきました。
平林 いま尖閣問題から日中情勢が悪化して、中国からの観光客がずいぶん減っていますよね。中国や東南アジアからの観光客が和食を食べに行こうとした時に、日本の和食屋はやはり敷居が高く、値段も高いんです。その受け皿になってきたのがリーズナブルな居酒屋や回転寿司でした。ですから、低価格居酒屋にしても、中国人観光客が目減りしているのは影響が大きいんです。尖閣の問題が一巡すれば、またリーズナブルなところに戻ってくるのでしょうが、我々、居酒屋業界は国内の需要だけでは期待できない。

―― マーケットが縮小するなかでも、居酒屋の店舗数は増えています。より競争が厳しくなっている。
平林 あがいている感じですよね。健全で建設的な経営をしていくというものではない。なんとかしがみついている。

―― それでも起業を志す人は外食を選びますね。最近はネットでの起業が増えているようですが、外食で成功を目指す人は昔から多い。
平林 たとえばコンビニエンスストアの場合、開店資金等は本部が出して、のちのち自分の店にできますよと、人を募ります。それと同じことが外食産業にもあって、なかなか個人の方が駅前に店を構えるのは難しいのですが、本気になって起業したければ、我々のようなチェーンの仕組みを利用して資本金ゼロでも店を持つことができます。ラーメン屋などは小資本で独立可能でしたが、成熟産業になりだんだんと難しくなっています。これから伸びていくところならチャンスがあるでしょう。

我々は「東京チカラめし」で牛丼屋を始めましたが、私はこの店が若い人たちの起業する熱意に合ったタイミングで展開を始めたのかなと思っています。

居酒屋のようにインフラから外れたところではなく、日常食として多くの人に使っていただいている。その客層の中に、店の周辺の飲食店の従業員や物販の販売員の方がいて、その中には、自分で起業して経営していきたいという人がたくさんいます。その方たちに東京チカラめしは、いい出会いになるのではないか。ウチのシステムではイニシャルコストもリーズナブルにできますし、よい形で支援できると考えています。

自らの集大成

―― 牛丼業界に参入したキッカケはどういうものだったんですか。
平林 私が30年以上前に独立起業したのは、牛丼屋なんですよ。最初は定食屋で始めようとしていて、もう少し絞り込んで牛丼とカレーでオペレーション化しようとしていました。ただ、そのころは、牛丼は市民権を得ていなかったんです。辛抱強くやっていたら大きくなれたかもしれませんが、私もまだ若かったし、外食の環境も盛り上がっていましたから選択のチャンスがたくさんありました。そして東方見聞録や月の雫など、居酒屋ではそれなりにやってきましたが、業界はダウントレンドですし、将来的なことも考えて、東京チカラめしで牛丼に再度挑戦してみたいと。自分の集大成としての思いもあります。

―― 牛丼業界は御三家の寡占が続いていましたから、居酒屋業界から黒船がやってきたような印象をもたれているように見えます。
平林 牛丼業界は、牛丼という単品でここまで成長できた、めずらしい恵まれた業界です。たとえば居酒屋は、駅前を見ると個人店からチェーン店まで、いろんな規模の店が入り混じって、激しい競争のなかでメニューをとっかえひっかえしながら雑草のような戦いをしてきたわけです。ファミレスもそうで、すかいらーくさんだって、いまは店に「す」の字もないでしょう。比べると牛丼業界は御三家でずいぶん陽の当たる道を歩いてこられた。

世間一般の人は、なぜ寡占化された業界で強い御三家を相手にするのかと思うでしょう。それが常識的な捉え方だと思います。しかし、そこには寡占化されたゆえに矛盾もあれば隙もある。我々が長年、居酒屋でやってきた経験や戦略をもってすれば、まだまだ戦える。

―― 1号店から1年強で100店舗を超えるという急激な出店ペースですが、手ごたえはいかがですか。
平林 なければ出店をやめてますよ。百何十店も出せば数十億円かかるわけですからね。でもコンビニの出店数にくらべれば、ウチなんてインパクトないでしょう(笑)。

―― 今期も90店舗の出店を計画されています。
平林 松屋さんは100店出すまでに30年かかっているそうですが、それはその時代環境だからです。今日のマーケット競争はその比ではない。同じことをやっていては潰されてしまいます。消費者への認知を一気に広めなければいけません。

また、この手の商売は仕入れも重要なんです。米国のサプライヤーさんであっても消費者であっても、短期でもそれなりに一目置いてもらえるようにならなければいけません。経営戦略のうえでのパッケージコストですね。
牛丼だけでは終わらない

わずか1年強で100店舗を突破。

―― 一部店舗では330円で販売されていますが、焼き牛丼が1杯290円は安いですね。この価格設定では利幅が薄いのでは。
平林 薄いですね。でもウチはまだテストケースです。自分たちの基準の価格帯は320~330円を考えています。まずはある地域では290円で探り、ロードサイドでは330円でいってみようというテスト段階ですね。

―― 焼き牛丼だけでなく、チーズ焼き牛丼や焼きカレーなど、メニューの幅も広がっていますね。
平林 チーズ焼き牛丼などは、もう1周2周と味も改良しながら回っているんですよ。いまは焼肉定食とか野菜と焼肉炒めとか、こちら側に幅を広げていこうと思っています。私は牛丼を売りとして据えつつ、牛丼だけで食べていこうとは思っていません。日常食のコンビニエンス・ファストフードを作ろうと思っています。これからは麻婆豆腐丼とかチャーハンも出していくかもしれませんよ。

でも気になるのは、国民食と言われる存在になった牛丼で、東京チカラめしの焼き牛丼は今後、存在を消費者から認めてもらえるのかということです。豚や鳥などは、煮るよりも焼いたほうがおいしいんです。世界の食の中で、肉を煮るのは日本や欧州の内陸など農耕文化のところ。ほとんどはステーキや焼肉など、肉を焼いています。

牛丼マーケットで少しでもお客様の理解を得ていきたい。これを軸にしながら、新しい食の業態を広げていく。お客様も巻き込んでいけるような食のコンビニエンスという提案をしていきたいですね。

―― 吉野家が「牛焼肉丼」(並480円)、松屋が「焼き牛めし」(並380円地域限定)、すき屋が「豚かばやき丼」(並630円)と、焼きメニューを出してきています。
平林 そうですね。でもなぜあんなに高くしているんでしょう。日常食で利便的なところに位置している業態で、それに準じた形でオペレーションがセットになっているわけですから、矛盾を感じますよね。もし、下がった売り上げや利益をカバーしようとしているのであれば、理念に反する気がします。

と言っても、ウチは別に低価格にこだわっているわけではありません。無名な新しい店が業界で生きていくうえで、同じ客層で勝負する時に、価格が妨げにならないように打ち出しただけです。そこから価格や量、品揃えなどを走りながら考えていく。過去の業界の習慣はあるのかもしれませんが、いまはそんな時代ではありません。消費者に喜んでいただくというのがなければ、自分の首を絞めることになります。

外食だけでなく、重厚長大産業やアパレル産業でも、成功しているところはスピードがあり、価格競争力があります。こんな多様化した時代ですから、それができているところが、何かを切り開き、認知されていくのだと思います。

(聞き手=本誌・児玉智浩)

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