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2013年1月号より

異端児「アディーレ」が目指す弁護士業の次世代スタンダード
石丸幸人 アディーレ  法律事務所代表

石丸幸人 アディーレ  法律事務所代表

1972年生まれ、北海道出身。95年横浜国立大学第二経営学部を卒業しセガエンタープライゼス入社。北海道勤務時代に酒気帯び運転で逮捕され有罪判決を受けて会社は解雇。そこから弁護士をめざし2001年司法試験に合格。04年にアディーレ法律事務所を設立、代表弁護士を務めている。

「アディーレ法律事務所」――。テレビコマーシャルや電車の中の広告などによって、最近よく名前を聞く法律事務所だ。こうした積極的なPR策によって急成長。設立から10年もたっていないにもかかわらず、所属する弁護士や司法書士の数は100人近くと、日本の法律事務所の中でもベスト10に入るまでの規模となっている。しかし出る杭は打たれるのが我が国の常。これまでの常識にとらわれない活動には、多くの批判も寄せられている。果たして改革者なのか破壊者なのか。同事務所代表弁護士の石丸幸人氏に話を聞いた。

法曹界の徳洲会

―― 最近、為替デリバティブの被害者救済に力を入れているそうですが、そもそも為替デリバティブの被害ってどういうものですか。
石丸 為替デリバティブは2004年に発売された金融商品で、本来、円安になった場合のリスクヘッジのためにできたものです。

ところが今日の円高によってこの商品は大きな損失を出しています。そしてそれが、中小企業の倒産の要因にもなっており、これ以上放置できないと考えたわけです。

―― 株にしてもそうですが、金融商品は自己責任で買うものです。損失が出たからといって文句を言うのはおかしいのではないですか。
石丸 本来はそのとおりです。でも、売るにあたり、この商品のリスクについて十分に説明していないケースもあります。なにより、為替のリスクヘッジなど必要ない企業が勧められるがままにこの商品を購入しています。これは販売方法に問題があると言わざるを得ません。しかも融資を受けている銀行から勧められた商品だから断りにくい事情もある。自己責任とばかりは言えません。

―― どのくらいの企業が被害を受けているのですか。
石丸 10年現在のデータによると、契約した企業数は約1万9000社、契約数ベースでみると、残存契約数は4万件以上、そして1契約あたり600万円の損失を出しています。

しかもその大半が泣き寝入りをしています。なぜなら、文句をつけたら融資に影響が出ることを恐れているためです。でもきちんと対応すれば、銀行との関係を悪化させずにこれ以上の支払いを停止することもできますし、損失を取り戻せる可能性もある。そこでぜひ私たちに相談してほしいと考え、本を出すなどしてPRしています。

―― アディーレは債務整理や過払い金請求に積極的に取り組んで規模を拡大してきました。過払い金請求もひと段落したから、次は為替デリバティブというわけですね。
石丸 自分たちの領域を増やすという意味ではそうかもしれません。成長していくには、領域を増やすと同時に地方にも展開していく。この両面を考えています。

―― アディーレの急激な拡大策が、既存の法律事務所や地元弁護士会と軋轢を生んでいるという話をよく聞きます。
石丸さんのやっていることを見ると、かつて徳洲会病院の徳田虎雄理事長が、地元医師会の反対を押し切って病院を各地につくっていったことを思い出します。
石丸 おっしゃるとおりで、徳洲会の法律事務所版をやろうと考えています。だから、既存の法律事務所などからは徹底的に嫌われています(笑)。

―― どこまで拡大していくつもりですか。
石丸 すでにアディーレ法律事務所の支店の数は30を超えていますが、最終的には253まで増やしたいと考えています。この数字が何かというと、日本の地方裁判所およびその支部の合計です。それがあるところにはすべて支店を出していきたい。といって、闇雲に出すというわけではなく、商圏や競合などの状況を考え、出張相談などで様子を見ながら順番に出していこうと思います。

―― そうなると、すでにその地域にある法律事務所は戦々恐々でしょうね。アディーレが出ることで、その地域の人たちにとって何かプラスになることはあるんですか。
石丸 地方に法律事務所が少ない場合は、どうしても殿様商売になってしまいがちです。私たちは最初、無料で相談に乗って、そのうえで見積もりを出して依頼を受けています。ところが地方では、最初の相談ですでにフィーが発生するところもあるようです。既得権益化することによって、自分たちがサービス業であるという意識が低くなってしまう。そのためクライアントに対して偉そうな口をきくというようなことになってしまう。しかも料金は不透明で
す。
その点、われわれはわかりやすい料金体系で、広告も打って気軽に相談できるようにしています。20世紀終盤から司法制度改革が始まりましたが、その目的は国民に十分な司法サービスを提供するためです。アディーレはそれを体現しているのです。

逮捕・収監中に一念発起

―― テレビCMには多額のお金が必要です。それをやっているぶん、アディーレに頼むと弁護士費用は高くなってしまうのではないですか。
石丸 費用についてはホームページなどでも簡単にわかるようになっていますし、他の法律事務所よりむしろ安いと考えています。
なぜそれが可能かというと、既存の法律事務所とはビジネスモデルが違うんです。
多くの法律事務所の事務員は、せいぜいコピーを取るくらいの仕事しかしていません。その一方で弁護士は、書類作成に追われている。労働集約型の最たるものでした。でもそれではあまりにも効率が悪い。そこでアディーレでは、書類などについても定型化、マニュアル化することで、そこにあまり労力をかけなくてもすむような体制を取っています。これによって効率的に大規模化することができ、結果として、全体の人件費を抑えながら、弁護士の給与を高くすることが可能となったのです。もちろん弁護士費用もけっして高くはありません。

―― どうしてこういうビジネスモデルを思いついたんですか。
石丸 私は司法試験に通るまで、ずっと民間企業で働いていました。その経験があるからでしょうね。いくつかの会社に勤めましたが、それに比べると既存の法律事務所の経営のシステムは、あらゆるものが非効率的で発展途上です。普通の企業の起業努力をそのままコピペすれば、スピードも効率も上げることができる。それができれば他の法律事務所と差別化できると思ったし、これがネクストスタンダードになると確信したんです。

―― 石丸さんは、大学を卒業してセガに入社、北海道勤務の時に3度酒気帯び運転をやって逮捕され、その収監中に弁護士を志したそうですね。
石丸 ええ。もともと私は小さい頃から高望みする子供で、小学生の時には大企業の社長か総理大臣になると言っていました。社会人になった時は、まだ終身雇用、年功序列が残っていましたから、会社の中での出世も考えていました。

アディーレ法律事務所が編纂した為替デリバティブ被害の啓発本。

ところが逮捕されたことによって、それは無理になってしまいました。おそらく解雇されるだろうし、寮も出ていかなければならなくなる。仕事も住むところもなくなってしまう。そこから人生をどうやって巻き返すかと考えた時に、浮かんできたのが弁護士として独立するというものでした。ですから私の場合、手段としての弁護士です。特に法律が好きなわけでもありません。従来の弁護士からは、こういう発想が許せないということになるんでしょうけどね。

それでほかの会社で働きながら、3年間頑張ってダメだったら諦めようと考えていました。2年半で司法試験に合格することができたのですが、研修中に感じたのが、先ほど言ったようなあまりの非効率さでした。

それでも最初はわからないことが多いため、他の弁護士事務所で働いたのですが、そのうちにこれは早くしないと時代に越されてしまうと考え、司法試験合格から3年後の2004年にアディーレ法律事務所を設立しました。ちなみにアディーレとはラテン語で「身近な」という意味で、弁護士がもっと身近な存在になるようにとの思いを込めて名付けています。

―― 最初からクライアントはついたのですか。
石丸 すぐに来ましたね。何しろ宣伝になることは何でもやりましたから。まずホームページを開設する。当時はまだHPを持っている法律事務所は少なかった。あるいはホットペッパーに無料相談のクーポンつき広告を掲載する。小冊子もつくったしDMもやりました。その結果、毎日深夜の3時まで働かなければならないほどの相談が舞い込んできました。

目指すは日本一

―― 独立からわずか8年で弁護士・司法書士合わせて100人の大所帯までに成長したわけですが、この先、どこまで拡大していくつもりですか。
石丸 来年も40~50人の新人弁護士を採用する予定です。そうなると、日本には4大法律事務所とそれに続くところが1つあって、その次に位置するところまでになるはずです。でもどうせなら日本一を目指します。弁護士の数、実績、支店数、すべてにおいて日本一です。

―― それだけの弁護士をまとめあげるのは大変でしょう。みな最難関の国家試験を通っているわけですからプライドも高い。ところがここに勤めると、突然、地方の支店勤務を命じられるかもしれない。プライドがそれを許さないのではないですか。
石丸 昔だったら大変だったでしょうね。でも近頃の弁護士は、若ければ若いほど、弁護士の数が増えるのに比べて仕事がそれほどないことを知っています。昔のように何も知らなくてもふんぞり返っていられる時代ではないことをよく認識していますし、自分たちがサービス業であることを理解しています。こうなるとやりやすい。昔なら、いやなら辞めればいいと考えていたかもしれないけれど、いまは辞めたら仕事がない。それに、アディーレがやっているスタイルが、ネクストスタンダードになることをよくわかっている。だから地方勤務を命じられたとしても、「わかりました。数字を上げてきます」という人ばかりです。

―― その話を聞いただけでも、弁護士の世界が様変わりしていることがわかります。ライバルはいないんですか。
石丸 既存の法律事務所についてはまるで気にならないですね。時代の流れから言っても、抵抗勢力はいずれ力が弱まっていくはずです。むしろ、若手の一部に、われわれのやり方と同じことをやっているところが出てきています。そのほうがよほど脅威ですね。
実は法律事務所というのは、うちでできたのに他ではできない、というのはそんなにないんですね。

―― すでに足元にライバルが迫っているかもしれない。
石丸 ですから、いまのうちにわれわれがシェアを取り、盤石なものにしておかなければいけません。たとえば、債務整理ひとつとっても、広告を打たないと参入できないようにする。そうなれば、体力のあるわれわれのほうが有利ですから。
考え方としては、一般の会社の競争と同じです。よそが出てくる前に、出てこれないだけの体制を築いてしまう。ユニクロの柳井(正)さんも、ソフトバンクの孫(正義)さんも、楽天の三木谷(浩史)さんも、みなそうです。それとまったく同じことなんです。

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