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企業の匠

製造業、サービスを問わず、企業には「◯△の生みの親」、「△◯の達人」と呼ばれる人がいる。
そうした、いわば「匠の技」の数々がこれまで日本経済の強さを支えてきたのだ。日本の競争力低下とともに、そこがいま揺らいでいるという指摘が多いからこそ、各界の匠にスポットを当ててみたいー。

2018年2月号より

ホワイトカラーの業務に革命 RPAが導く仕事の生産性の向上 RPAテクノロジーズ 最高執行責任者 笠井直人

「人手不足」と言われ、少子化で労働人口の急激な減少が危惧される日本。そんななか、間接部門での生産性向上が期待されるのがRPAだ。RPAは日本の救世主となり得るのか、RPAテクノロジーズの笠井直人COOに話を聞いた。

人に代わって作業

RPAと聞いて、何かをイメージできる人はまだ少ないのではないだろうか。

RPAは、日本の少子高齢化による労働人口の減少を解決し、日本人の働き方を大きく変えることが期待されるロボット技術のこと。

しかしロボットとは言っても、メカニカルで大きな産業用ロボットやソフトバンクのペッパー君のようなコミュニケーションロボットとは異なる。ホワイトカラー向けの業務を自動化できるPC内で活躍するソフトウェアロボットと考えるとわかりやすい。しかし、単なるソフトウェアではないのがRPAだ。

「RPAは、効率化のためのソフトウェアではありません。人の手作業を記憶する簡単なツールだから、導入すればよいと思われがちですが、そうではありません。ロボットを入れることによって、オペレーション自体を変化に強くしていくことが最終的なゴールです。コスト削減を目指すのではなく、労働人口が減ることに対してオペレーションを強くする。ここを目指さなければ、導入しても意味がない」

RPAテクノロジーズ最高執行責任者の笠井直人氏

こう語るのはRPAテクノロジーズ最高執行責任者の笠井直人氏。RPAテクノロジーズは2008年にRPAへの取り組みを進め、10年にロボットサービスの「BizRobo!」(ビズロボ)の提供を開始した国内では先駆者的な企業だ。このビズロボが、単なるシステムやソフトウェアと決定的に異なるのは、導入した企業にとって、「労働者を雇用した」のと同じ意味を持つことだ。

「我々が定義しているロボットは、1つは代行できるということ。人の作業が代行できなければ人の代わりにはなれません。2つめは能力。人と比べてミスを連発したりスピードが遅いなら意味がありません。ここまでは自動化というソフトウェアのアプローチでもできるところですが、3つめの変化に強いことがロボットです。

システムを改修する時に時間がかかっては困ります。人が作業の変化に対応できるように、RPAもその作業の変化に対応できる。この3つを為していなければいけない。

よく言われますが、RPAは夢のテクノロジーではありません。人の機能で言えば手足だと思ってください。ですから音声認識や複雑な処理をするものではない。システム間の繋ぎや新しいテクノロジーとの繋ぎの部分で、人が行う単調なルーティンワークに対し、人に代わって柔軟に連携できるものです。

ビズロボは作業を記録するというアプローチになりますので、プログラミングが必要ないぶん、導入のスピードが速く、既存のシステムがそのままで使えます。人と同じレイヤーで作業をさせますから、業務を変える必要もありません。そのなかで圧倒的な処理能力がありますから、業務によっては人が10時間かかっていた作業が5分で終わるといった事例もあります」

ロボットも社員の1人

具体的な事例を見ていくと、わかりやすい。日本生命が導入したRPAは、「日生ロボ美」と名付けられるほど社員のなかに溶け込んでいる。日生は16の業務に6台のロボットを活用しているが、その1つのロボ美ちゃんの担当業務が、顧客の住所変更だという。導入前は、電話で聞き取った情報を社員が手作業で1件ずつPCで入力し、それを紙で印刷して別の社員がダブルチェックをしていたという。人が約5分かけて行っていたこの作業を、ロボ美さんは1件あたり約30秒で終える。10倍の速さとともに、入力ミスも起きない。人間の代わりにロボットが事務作業を行うことで、日生では6台の導入で20人以上ぶんの仕事をしているのだという。

「例えば親会社と子会社のシステムが繋がっていれば、日本生命様の事例である、住所変更はスムーズにシステムに反映されるのですが、現在はシステムがツギハギになってしまっている場合が多く、個社対応をしていることが多いです。その間を繋ぐのに人の手作業ができて、ルーティンワークになっている場合があります。それをロボットにすることで、人の時間を救っていく。社員はもっとクリエイティブな仕事ができるはずなのに、コピペのために使われていたわけです。そこを解放するのが大事です。エネルギーを解放すれば、新たな企画が生まれますし、オペレーションをさらに改善できるかもしれません」

ビズロボの導入事例は幅広く、全国で200社、2万ロボットが稼働している。PC上で行われるルール化した作業であれば、すべてビズロボが対応できるという。もちろんコスト削減にも繋がるのだが、笠井氏はその意図での活用は勧めないと話す。

「実際、コスト削減としての期待値は高いし、それで注目されている面もあります。日本の場合、経営は経営、現場は現場とそれぞれ動いていることが多く、コスト目的でRPAを始めると、現場からの反発が生まれます。とある企業では、ロボットは社員を楽にするためのもの、ロボットも社員もしくは派遣スタッフの1人としてマネジメントをしなくてはいけないというスタンスで非常に成功しています。業務整理もロボットにやらせる仕事も現場でマネジメントしている。いままでは、オペレーションは与えられるものというイメージでした。それがひっくり返って現場から上がって来ないと、労働人口減少には対応できなくなるのかなと思います」

RPAが労働人口減少の救世主になる日も近いのかもしれない。

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