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企業の匠

製造業、サービスを問わず、企業には「◯△の生みの親」、「△◯の達人」と呼ばれる人がいる。
そうした、いわば「匠の技」の数々がこれまで日本経済の強さを支えてきたのだ。日本の競争力低下とともに、そこがいま揺らいでいるという指摘が多いからこそ、各界の匠にスポットを当ててみたいー。

2018年1月号より

世界ではアップルと伍すファーウェイ 初のAIチップ搭載端末も日本で発売へ ファーウェイ・ジャパン デバイス・プレジデント 呉 波

日本ではiPhone偏重だが、世界市場で見ると中国の華為技術(ファーウェイ)は米国アップル社と伍す存在。また、右肩上がりのSIMフリースマホ市場に限定すれば、日本で首位に立つのがファーウェイである。

商品投入量は他社を圧倒

いまではすっかり市民権を得た、格安スマホやSIMフリースマホ、あるいはMVNO(仮想移動体通信事業者。通信キャリアから回線を借り受ける形でサービスを提供)。通信キャリアとの契約に比べ、月々のランニングコストが圧倒的に抑えられるため、いまもこれらの市場は右肩上がりだ。同時に、スピードの速い世界だけに優勝劣敗やライバル間の攻防も激しい。

この市場が盛り上がったのは、まだ4年前の2013年秋のこと。当時、iPhoneにSIMフリー端末が登場したのを皮切りに、グーグル陣営もNexusという端末で応戦。さらに、翌14年春、従来のIIJやNTTコミュニケーションズといったMVNOにイオン、さらにその後、楽天をはじめとした数多くの企業が参入したことで、一気に市場が拡大した。

一方、端末を供給するメーカーは当初、格安スマホやSIMフリースマホのジャンルで日本市場に先鞭をつけ、しばらくシェアトップを走ったのは、台湾のエイスースが出したZenfoneだった。それから3年余り、SIMフリースマホの17年1月から8月までのシェアを見ると、中国の華為技術日本(以下ファーウェイ・ジャパン)がトップで35.6%、次いでエイスースが27.95%(BCN調べ)と、ファーウェイが差を広げて首位を守っている。

日本と韓国市場を統括する呉波さん。

では、この逆転劇はなぜ、起きたのか。3、4年前の勃興期と違い、SIMフリースマホの端末価格帯は、下はいまでも1万円台や2万円台の商品もあるが、上を見ると8万円台から9万円台のものもあり、一言で格安スマホとは括れない。その中でファーウェイ陣営は、ミッドレンジの、販売数量が稼げる3万円台のラインナップを豊富に揃える一方、フラッグシップ的な位置づけの、高価格帯の品揃えも増やしている。ミッドレンジの商品で販売数を積み上げ、ハイエンド機でブランド力も上げていくという両面作戦の商品投入量は他社を圧倒している。

14年末に登場したMate 7は6インチの大画面に大容量バッテリー、当時はまだ珍しかった指紋認証機能を搭載、それでいて価格は比較的抑えられ、同機もファーウェイの存在感を知らしめた端末だ。ファーウェイ・ジャパンでデバイス・プレジデントを務める呉波さんはこう語る。

「我々は、14年6月にG6という端末でSIMフリー市場に参入し、中価格帯から高価格帯で品揃えしてきました。ですので、ローエンドのロースペック、ロープライスのSIMフリースマホとは一線を画していますし、VOCというのですが、ヴォイス・オブ・カスターを通したレポートで、どんな評価や問題があるかを常に見るようにし、その声を商品に反映させています」

ハイエンドのMate 10

いまでは、ファーウェイのラインナップは比較的若年層向けとなるhonorやnova、さらに中核を担うPシリーズ、ビジネス用途を主眼とした大画面でハイエンドのMateシリーズなど多彩なラインナップを擁し、日本市場でのプレゼンスは年々上がっている。

また、価格.comのスマホ人気ランキングを見ると、20位までにファーウェイの端末が7機ランクインし、日本では今年6月に投入したP10 liteが1位を堅持していた(17年10月下旬時点)。最近も、honorシリーズの最新モデル、honor 9が10月12日に発売され、価格は税抜きで5万4800円、税込みなら6万円弱という価格だが、ダブルレンズカメラを搭載しており、ファーウェイの自信作の1つになっている。

さらに、17年10月16日にドイツで発表された前述のハイエンド端末の最新機種、Mate 10シリーズは、世界で初めてAIチップセットを搭載した商品として話題となり、iPhoneの最上位端末であるiPhone Xと真っ向勝負のスマホとも喧伝されている。再び呉波さんが語る。

「AIは、何かすごく難しいイメージを持たれがちですが、日常生活の利便性が大幅に改善できる、親しみやすい身近なものなんです。その一例が、物体認識機能。被写体がテキストか、あるいは人か犬か、はたまた料理か花かなどを端末が瞬時に判別し、それぞれに合った撮影モードを設定してくれるのです。こうしたことができるのは、AIのチップセットが1億枚にも及ぶ画像をすべて読み込み、学習しているから。結果、機能が高まっていろいろなものを判別できるようになっています」

ドイツでは、Mate 10 ProとMate 10の2機種が発表され、うち上位モデルの前者は、一次販売国に日本も入った。16年12月、前作となるMate 9が日本で発売された際、海外での販売価格よりも割安なプライス設定だったこともあり、Mate 9は商業的にも成功を収めた。Mate 10 Proは日本でも、17年11月28日の発表会でお披露目されるが、その際はサプライズ価格を期待したい。

「日本市場での目標は、持続的に生き残っていくことですし、消費者の皆さんに優しい価格になるよう、Mate 10 Proも最大限の努力をしていきます。もう1点、当社のフラッグシップモデルで使用しているスマホの部品は、日本製のスマホ以上に日本の部品メーカーのパーツを採用していますし、こうした協業はさらに拡大していくつもりです」(同)

日本でSIMフリー市場を牽引するファーウェイ・ジャパンは、これからも目が離せない存在だ。

(本誌編集委員・河野圭祐)

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