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企業の匠

製造業、サービスを問わず、企業には「◯△の生みの親」、「△◯の達人」と呼ばれる人がいる。
そうした、いわば「匠の技」の数々がこれまで日本経済の強さを支えてきたのだ。日本の競争力低下とともに、そこがいま揺らいでいるという指摘が多いからこそ、各界の匠にスポットを当ててみたいー。

2017年9月号より

胃から腸、人体から産業用、地球規模へと広がるシームレスカプセルの可能性 森下仁丹 カプセル事業本部副本部長 田川大輔

銀色の粒の仁丹で知られる森下仁丹。しかし、その姿は今や昔。仁丹製造で培った同社の世界最先端のシームレスカプセル技術は、健康食品、医薬品から産業用とさまざまな用途に広がっている。

狙ったところで溶かす

胃で溶けずに腸までとどく――。
最近、医薬品や健康食品のテレビCMなどで耳にするフレーズだが、具体的にはどんな仕組みになっているのかはわからない。しかし、その1つの方法がシームレスカプセルを使って、胃で溶けないようにして、腸で溶かす方法だ。

「最先端の開発をしていることも知ってほしい」と田川さん。

「シームレスカプセルは、基本的には球状で、大きさは0.5~8ミリ、皮膜の厚さも自由自在にできます」

こう話すのは森下仁丹カプセル事業本部副本部長の田川大輔さん。

「製法はノズルから中身と皮膜を落としてカプセル化するという方法で、カプセルの皮膜を多層構造にすることで、カプセル内成分の除放、遮光性などの機能や中のものも液体、粉末、親水性、親油性など、目的に合わせて入れて溶解させることができます。先に溶かしたいものは外側に、後で溶かしたいものは内側にと分けて詰め、ドラッグデリバリーとして目的のところで溶けるように放出制御ができるようになっています」

このシームレスカプセルは、界面張力を利用した「滴下法」という独自の技術で作られている(次図参照)。具体的には同心円の多重ノズルからゼラチンや寒天をはじめとした動物・植物性のゲル化剤の液状の皮膜物質と内容物を同時に吐き出させ、皮が継ぎ目なく内容物を包み込む。その皮膜の層を多層化させ、4層にすれば、いわゆるカプセルinカプセルになるというわけだ。

森下仁丹は1893年に薬種商として大阪で創業し、1905年には今に繋がる「仁丹」開発、販売を始めた。総合保健薬として発売された当時の仁丹は、ユニークな販売方法や広告もあって瞬く間に人気商品となり、発売からわずか2年で売薬の売上高1位になったという。

シームレスカプセルの製造原理

「仁丹は16種類の生薬を飲みやすく携帯性を高めるために純銀でコーティングしています。このコーティングは、今も輪島の箔職人さんに純銀の箔を作ってもらったものを使っています。このコーティングというのがポイントで、仁丹は生薬を固めたものですが、健康食品や医薬品には液体状のものが多い。そこで液体をしっかりと皮膜で包み携帯性を高め、いつでもどこでも服用できる適用範囲を広げようと考えたのがカプセル開発のきっかけでした」

とはいえ、開発着手直後はなかなかうまくいかず、試行錯誤を繰り返しながら、技術革新を進め90年代に入るとカプセルの多層構造化の技術を確立。現在では自社のヒット商品になっている機能性表示食品の「ビフィーナ」をはじめとしたサプリメント、他社製品の受託生産などを行い、その技術の高さから海外から引き合いも多い。そんなシームレスカプセルだが、開発中にはどんな用途があるのか戸惑いもあった。

「最初は何に使ったらいいんだろうというところがあったようです。しかし、乳酸菌の一種のビフィズス菌に整腸作用があるということで、それを腸まで届けられないかというところから、カプセルで包んで届けるということがブレークスルーになりました。今では当社の代表的な商品としては、健康食品などでの活用。ほかにも腸内フローラが注目されているなかで、プロバイオティクスを生きたまま腸まで届けるドラッグデリバリーのニーズが高くなり、そうした受託を行っています。売上ベースですと、当社の全体の売り上げおよそ100億円に対してヘルスケア事業が70%、このカプセル事業は30%ほどの比率になっています」

広がる用途

この“包んで運ぶ”というシームレスカプセルの用途や可能性は、これだけにとどまらない。田川さんが次のように話す。

「これまでは胃で溶けずに腸で溶けるというのが中心でしたが、今はさらに進み小腸でなく大腸で溶かすことも可能になっています。医療用としては、注射によるワクチン接種は衛生状態がよくない開発途上国で難しいところもある。そこでカプセルを使った経口ワクチンであればその心配もなくなります。また、人体だけでなく産業用としても合成樹脂や機械の中でも使えるようにして、建材や自動車部品などで使われるようになっています」

色とりどりのシームレスカプセル

さらにシームレスカプセルの用途として注目されているのが、環境浄化やレアメタルの採集といった微生物を使った地球規模での応用だ。

「微生物は自分の好きなものしか食べないものもあります。そこでその性質を利用して、環境浄化やレアメタルを集めるためにカプセルの中に微生物を入れれば、雑菌など入らず、微生物を直接その物質のあるところに送り込むことができ、良好な状態で微生物を働かせることができる。あとは、それを回収すれば目的の物質を集めることが容易になります」

また、現状では経口用が中心だが、今後は注射などを使って体内のピンポイントに薬剤投与などに応用することも可能で、その広がりは医療用、産業用ともに無限大だ。

「当社の包む技術、放出する技術、、制御する技術は年々ニーズが高くなっているので、こうした技術を必要としている企業とともに研究開発できればと思っています」

とはいえ、最先端の研究開発企業でありながら、一般的にあまり知られていないのが残念と田川さん。

「いまだに梅仁丹などのイメージが強く、最先端技術やってるんですが、どうしてもいい意味でも古い会社と思われているんですね。120年以上歴史のある会社がこうした最先端の研究をやっているのは面白いと思うので、そうしたことを知ってもらえればと思っています」

森下仁丹の挑戦は続いている。

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