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企業の匠

製造業、サービスを問わず、企業には「◯△の生みの親」、「△◯の達人」と呼ばれる人がいる。
そうした、いわば「匠の技」の数々がこれまで日本経済の強さを支えてきたのだ。日本の競争力低下とともに、そこがいま揺らいでいるという指摘が多いからこそ、各界の匠にスポットを当ててみたいー。

2017年1月号より

ビジネスの必須アイテム「手帳」の書きやすさ、使いやすさを求めて

「スバルのフルモデルチェンジ」と語った吉永社長。新型インプレッサは次世代スバル成功の試金石として位置付けられる。開発陣は“走りと愉しさ”をとことん追求した──。

プラットフォームの開発

10月25日に発売された富士重工業の新型「スバル・インプレッサG4/スポーツ」は、10月末までに8817台を受注。好調な滑り出しを見せている。すでに納車は3カ月待ちで、不振の国内自動車販売のなかでスバル人気は根強い。

さてそのインプレッサ、気合の入り方が従来のスバルの新型車とは大きく異なる。新車発表会で吉永泰之社長が「単なる1モデルのフルモデルチェンジではなく、スバルのフルモデルチェンジ」と語ったことからも、次世代のスバル車の方向性を示したものになっていることがわかる。開発責任者のスバル商品企画本部プロジェクトゼネラルマネージャーの阿部一博氏は、インプレッサの開発について次のように語る。

「インプレッサのフルモデルチェンジだけでなく、次世代スバルの基盤となる商品をつくっていくということ。次のスバルに繋げることを考えた時に、結果的にプラットフォームを一から作らないと商品力向上はできないだろうと提案しました」

インプレッサの開発を担当した阿部一博氏。

今回のインプレッサは、先代と比較して95%以上、部品が入れ替わっているという。新型プラットフォームの開発もあって、従来のフルモデルチェンジの数倍の予算を投入して開発されたクルマだ。

「スバルが提供するお客様価値『安心と愉しさ』を、明らかに差別化できるレベルにしようと考えました。先代のインプレッサは、バランスの取れたいい商品で、事業的にも大成功でした。新型インプレッサも全体的に商品力を高めましたが、特に3つのことについて大きく伸ばしています」

新型でこだわったのは、(1)世界トップレベルの総合安全性能(2)感動レベルの動的質感(3)スポーティ&先進デザイン+クラスを超えた質感、の3つ。企画段階から大幅な向上を目指して取り組んできたという。

総合安全については、全車標準装備の予防安全技術のアイサイトに加え、リヤ・ビークル・ディテクションという車線変更の際に後ろからクルマが近づくのがわかる装置や、衝突時に従来の約1.4倍の衝撃吸収量を持つ新型プラットフォームで安全性の向上を図っている。ここで注目したいのは、新型インプレッサから標準装備されることになった「歩行者保護エアバッグ」だ。

「どんなに車内のお客様を守っても、ぶつけてしまった時に歩行者を守れないのは、死亡事故ゼロを目指しているスバルにとって十分とは言えません。日本車では初になりますが、歩行者保護エアバッグを搭載しました。これを192万円の一番お求めやすいグレードから全車標準装備にしています。

その際にお客様負担にならないようにしようとコストを下げる工夫もしています。他社もエアバッグを装備していますが、フロントガラスとボンネットの隙間を拡げるために、ボンネットを上げてからエアバッグを開くという2段階爆発にしています。スバルはそれをやらずに1回の爆発でエアバッグがボンネットの隙間から出てくるようにしました。これは大変苦労しましたが、このシンプルな構造により原価が下がり、お客様の負担が抑えられるわけです。

アイサイトVer.2でクルマ対クルマの事故は84%減っていることがわかりました。ところが対人間では49%しか減っていない。クルマよりも人間のほうが横から飛び出したりと、様々なケースが多いからと考えています。その時にエアバッグがあれば救えるケースも出てきます」

走りと質感を実現

動的質感についてもスバルならではのこだわりがある。

「人間が感じる“感性”を数値化する研究をしてきました。だいたい10分の1秒の変化を人間は敏感に感じるんです。例えばステアリングを切った時に、ギクシャクする0.1秒を感じる。その変化を数値化して図面に落としていくには1000分の1秒単位の変化を測定する必要があります。その測定機器を作るところから始めてお客様が感じる気持ちよさを、プラットフォームを一新するこのタイミングで設計に反映し、ロールが小さく、リアの挙動が乱れないスムーズな走りを実現しました。ふつうはサスペンションにつけるスタビライザーをプラットフォームに直接つけることで、走りを追求した商品に仕上がっています」

インテリアの質感は、上級モデルの「レヴォーグ」や「フォレスター」を上回ったのではないかと言われるレベルまで仕上げた。エクステリアには「ダイナミック×ソリッド」を掲げて、“安全と愉しさ”をデザインで表現したという。

「総合安全性能と動的質感については、プラットフォームを一新することで商品力向上ができますが、見た目のところと触感はプラットフォームとは関係ありません。他の2つと同様にレベルを上げていかないとバランスが崩れてしまいます。特にデザインと質感は気を遣って欧州の競合車に負けないものにしました」

新型インプレッサは部品の95%が新しいものに。右は日本車初搭載の歩行者用エアバッグ。

このインプレッサを皮切りに、今後開発されるクルマも新型プラットフォームでの商品力向上が図られるという。

「次のフォレスターやレガシィも先代車との共用部品はほぼありません。ですから新型プラットフォームの開発は、スバルのフルモデルチェンジだったのです。変わらないものは、“安全と愉しさの追求”というスバルの方向性だけですね」

(本誌・児玉智浩)

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