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企業の匠

製造業、サービスを問わず、企業には「◯△の生みの親」、「△◯の達人」と呼ばれる人がいる。
そうした、いわば「匠の技」の数々がこれまで日本経済の強さを支えてきたのだ。日本の競争力低下とともに、そこがいま揺らいでいるという指摘が多いからこそ、各界の匠にスポットを当ててみたいー。

2015年6月号より

““女子会に定番の洋菓子 マカロンで脚光を浴びる不二家 不二家 野木工場次長 平井 健幸

洋菓子店のこだわり

不二家のプレミアムショップ「OTOWA FUJIYA」のディスプレイの前で解説する平井氏。

2010年の前後に、大ブームとなった洋菓子がマカロン。ブームは沈静するものと思いきや、いまや定番の菓子として、すっかり定着してきている。

世のオジサマたちは、まだ口にしたことがないという人もいるかもしれないが、3月14日のホワイトデーには「女子に贈るナンバー1商品」として、男子が洋菓子店に長蛇の列をつくるほどの人気だ。圧倒的な女子の支持を受けているこの洋菓子に、ついに洋菓子の老舗、不二家も参入。昨年11月に発売すると、人気商品として生産が追い付かない状況になってしまった。不二家のマカロン開発に携わった、同社野木工場(栃木県下都賀郡)次長の平井健幸氏は次のように語る。

「マカロンは非常に難しいお菓子で、湿度や温度条件によっては、機械でうまく焼けずに、ヒビが入ったり形がいびつになったりして、きれいな形のマカロンをひとつも作ることができないこともあります。そんな難しいお菓子を、全国の約1000店舗の各店で指導するわけにはいかないので、野木工場1カ所で作って、供給しています。発売当初は、思っていた以上に売れ行きが好調で、工場で作れば即、出荷するような状況。機械でうまく焼けないことがあると、朝の8時から次の日の朝8時まで、24時間工場に張りついたままになることもありました。すでに注文が届いていますから、出荷のためのクルマが工場の横で待っている。作るしかない状況で、あの時は本当に帰れませんでしたね(笑)」

現在でこそ工場の増強をして、生産調整ができるようになったが、やはりホワイトデーには在庫がゼロに近い状態になったという。工場の人員が足りずに、東京都文京区の本社の社員が野木工場まで日替わりで助っ人に向かったほどだ。発売からわずか半年で、マカロンは不二家に欠かせぬ一押し商品へと成長している。

ひと頃の大ブームが去ったあとに、なぜ不二家は参入を決めたのか。それは山田憲典会長の慧眼だった。

「山田が去年の夏に欧州を視察した際、マカロンに着目しました。弊社は洋菓子屋ですから、本格的なマカロンを作ろうと。

フランスなどでは、各店でマカロンをオリジナルな商品にしています。シェフやパティシエがそれぞれにこだわりを持ったマカロンを作っている。日本の和菓子屋がそれぞれオリジナルの饅頭を作っているのと同じで、非常に親しみを持たれているお菓子です。しかしながら、マカロンはこれまで、商品化が検討されては日本人になかなか合わなかった。それが品質的にも向上してマカロンブームが起こり、ずいぶん売れるようになってきました。

不二家も技術的にはマカロンを作ることはできましたが、各パティシエがこだわりを持って作る商品だけに、前述のように機械で量産化することが大変でした。また、味のほうも、完全に日本オリジナルで、不二家独自のマカロンにこだわった。フランスのマカロンはすごく甘いんですね。山田からは、特に品質面で、いいものを追求するように言われてきました。表面がパリッとして、中がしっとりしたマカロンを目指しました」

コラボ商品も登場

不二家のマカロンは直径が約40ミリと、やや小ぶり。マカロンの特長でもある色合いとオシャレ感を大切にしつつ、原料と品質にこだわった。カラフルさをアピールするためにスタート時から8種類のバリエーションを出し、売り場の華やかさやかわいらしさを前面に打ち出してきた。さらに季節商品のマカロンも開発。弾けるキャンディ入りクリームをサンドした「スパークリングマカロン」を発売するなど、遊び心にもあふれた商品も投入している。定番のマカロンの価格は1つ150円で、一般的な洋菓子店のマカロンに比べて安価に設定されており、かつ日本人の味覚に合う商品設計で一躍人気商品になってきたわけだ。

ハローキティとのコラボは大人気商品に。
FUJIYA CO., LTD.
1976, 2015 SANRIO CO., LTD. APPROVAL No.G560083

「不二家のマカロンは、自社工場でアーモンドを自家挽きしたアーモンドプードルを使っています。香りと仕上がりはぜひ試していただきたいですね」

不二家の洋菓子チェーン向けの製造個数は1日あたり約2万5000個。今後はコラボ商品等の新たな仕掛けも始めていて、さらに野木工場の生産ラインを増強していくことも視野に入れている。

そのコラボ企画の先鞭となったのが、サンリオとの提携だった。2月6日に発売した「ペコ&ハローキティマカロン」は、発売前から問い合わせが殺到。当初、関東の不二家洋菓子店約50店舗での数量限定販売だったこともあり、「どこで買えるのか」という問い合わせが本社の広報室にまで入ってきたという。

ハローキティの「身長がりんご5個分、体重がりんご3個分」であることにちなみ、りんご味。不二家の看板キャラクターのペコちゃんとハローキティのイラストがプリントされ、専用ボックスに入れて販売されている。ファンにはたまらないマカロンになった。

「マカロンは、女子会やケーキのデコレーションにも使われますし、コラボ商品等も広げていけますから、まだまだ販路は拡大できます。ただ、数量を追って品質が下がっては意味がない。手作り風の品質をお求めになりやすい価格で提供することにこだわって、お客様の喜ぶようなマカロンを作っていきたいですね」

大阪では1日に約500個売れた店もあったとか。第2次マカロンブームの火付け役は不二家になるかもしれない。

(本誌・児玉智浩)

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