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企業の匠

製造業、サービスを問わず、企業には「◯△の生みの親」、「△◯の達人」と呼ばれる人がいる。
そうした、いわば「匠の技」の数々がこれまで日本経済の強さを支えてきたのだ。日本の競争力低下とともに、そこがいま揺らいでいるという指摘が多いからこそ、各界の匠にスポットを当ててみたいー。

2014年10月号より

「綾鷹」が追求した急須でいれたお茶の味わい 日本コカ・コーラマーケティング本部 ティーカテゴリー緑茶グループグループマネジャー 薄井亜希子

緑茶単品シェア1位へ

人口減少の日本においても伸び続けている飲料市場。中でも伸び方の大きいのが緑茶市場だ。2000年代前半には、飲料市場における緑茶のシェアは、コーヒー、炭酸飲料、果実飲料、スポーツドリンクに次いで5位だったが、いまではコーヒー、炭酸に次ぐ3位となり、出荷量もこの10年で5割近く伸びている。

この緑茶市場において、緑茶単品のシェア1位は伊藤園の「おーいお茶」、2位がサントリーの「伊右衛門」という構図が定着していた。ところが13年には、日本コカ・コーラの「綾鷹」が伊右衛門を逆転、2位に躍り出た(日本コカ・コーラ調べ)。

綾鷹が発売されたのは07年。それ以前、日本コカ・コーラには「一(はじめ)」という緑茶があったが、思うような実績を残せず、モデルチェンジに踏み切った。それが育って、3強の一角を占めるまでになったのだ。

「でもここまで順調に育ってきたわけではありません」

と語るのは、日本コカ・コーラマーケティング本部ティーカテゴリー緑茶グループグループマネジャーの薄井亜希子氏だ。

今年、全国で開かれた「綾鷹茶会」。多くの人が綾鷹の味わいを体験した。

「綾鷹開発にあたっては、『急須でいれたようなお茶の味わい』をコンセプトとしました。そのために開発者が考えたのは、『にごり』を入れるということでした。にごりには旨味がつまっていますが、それまでは商品の安定性を考慮してにごりを取り除いていました。それをあえて入れることにしたのですが、当初は製造ラインをはじめ社内では大反対です。でも実際ににごりのある試作品を試飲してもらうなどし、粘り強く説得して、発売に漕ぎつけました」

商品化にあたっては、創業450年の歴史を持つ宇治の老舗茶舗、上林春松本店の協力を得た。上林春松本店は、豊臣秀吉ともゆかりが深く、日本のお茶文化を支えてきた。その伝統の技を活かし、さらには原材料として使用する茶葉の味わいと品質を上林春松本店と日本コカ・コーラで最終確認することで、綾鷹は誕生した。

それだけに、日本コカ・コーラは綾鷹の味には絶対の自信を持っており、その味を知ってもらえれば、販売も伸びていくはずと考えていた。ところがそうは甘くなかった。

「ペットボトルの緑茶でにごりのあるものは無かったため、にごりに抵抗を感じる方もいたようです。そうではなく旨味だということを知っていただくためのコミュニケーション活動も行ったのですが、渋みや苦みがあるのではないかと受け止める人も多かった。一定の理解を受けるまでにはなったのですが、そこからなかなかジャンプできないというのが実情でした」

そこで10年に戦略を大幅に見直した。前述のように、それまでは綾鷹のにごりという特徴への認知を上げることがコミュニケーション戦略の狙いだった。

「そこで、コミュニケーションのポイントを“急須でいれたような味わい”に変えることにしました。緑茶ユーザーは30代から40代以上。いまでは家に急須のない家庭もあるようですが、この世代の人たちは、必ず家で、お母さんやおばあちゃんが急須でいれてくれたお茶を飲んでいます。それだけに、急須でいれたお茶には、手間をかけていれたおいしい味わいや、人と人とのつながり、自分は日本人なんだと意識するなどの、ポジティブなイメージを持っていたからです」

消費者に緑茶飲料を飲み比べてもらって、急須でいれたような味わいのお茶はどちらか、という味覚調査、11年からは和の専門家100人による味覚調査を実施し、その調査結果に基づくTVCMを開発。調査結果の定量データを提示するCMは話題になった。

パッケージも一新した。いまの綾鷹のボトルラベルには急須の絵が入っているが、発売当初にはなかったものだ。これも「にごり」から「急須」にシフトするにあたり、消費者によりわかりやすくアピールするために採用したものだ。もっとも社内には「スタイリッシュじゃない」と反対の声もあったというが、消費者調査の結果を信じて、薄井氏は押し切った。

結果は吉と出た。“急須でいれたようなお茶”を前面に出し、コミュニケーションと店頭活動の強化とパッケージ変更により、綾鷹の販売は急速に伸び始めた。その勢いはいまも続き、60カ月以上連続で、対前年比で売り上げを伸ばしている。そして昨年、緑茶単品のシェアで伊右衛門を抜いて業界2位となったのは冒頭に記したとおりである。

世界の飲料メーカーのトップであるコカ・コーラ社でも、単一ブランドで10億ドル以上売り上げる商品は、わずかに17ブランドを数えるのみ。そしてその中のひとつが綾鷹だ。綾鷹の場合、コークなどと違い日本国内でしか流通していない。それでいて17ブランドの一角を占めたことは快挙と言っていい。

2本目の柱の育成目指す

飲料の世界はサバイバルゲームの世界でもある。毎年数多くの新商品が生まれるが、その大半が、あっという間に市場から消えていく。定番商品として、長年にわたり消費者に愛され続ける商品が生まれる確率は「千三つ」とも言われている。

「開発して市場に出るまでには、何百人もの人が携わっています。営業活動をしている人も含めると何万人です。だからこそ、ひとつの商品を市場に定着できた時の喜びは非常に大きい。綾鷹は、発売からこの10月で8年目となります。完全に定着したとはまだ言えないと思いますが、それでもお茶ブランドのひとつとして認識していただけるところまでは来たのではないでしょうか」

薄井氏にとっても、綾鷹は1ブランド以上の意味を持つ。

「綾鷹には多くの人の思いがこもっている」と薄井亜希子氏。

薄井氏はコンサル会社を経て1998年に日本コカ・コーラに入社するが、その面接で「本当においしい緑茶を世の中に送り出したい」と訴えた。普通、日本コカ・コーラに入社する人は看板商品であるコークなど、炭酸系飲料を志望するケースが多い。ところが薄井氏は静岡県出身。しかも祖母の実家が製茶卸業を営んでおり、小さい頃からお茶は常に身近にあった。

それだけに、かつてのペットボトル入りのお茶の味わいには満足できなかったという。そこで、自らの手でおいしいお茶を市場に送り出したいと考えたのだ。

その夢がかない、しかも綾鷹が日本コカ・コーラのお茶製品としては例のない大ヒットとなったのだ。薄井氏自身「本当に楽しんで仕事をしています」と打ち明ける。

また今年に入ってからは「綾鷹」が目指した味わいを五感で体験できる「綾鷹茶会」を全国10カ所以上で開催。東京の茶会には6000人もの人が訪れるほどの人気となった。

6月には新商品「綾鷹まろやか仕立て」を発売した。綾鷹よりも低温のお湯でじっくり抽出することにより、渋みを抑え、まろやかな甘みとすっきりとした後味を実現した。

「綾鷹は味わい深いけれど少し渋い、というお客様がいます。そういう人に飲んでほしい。おかげさまでセールスは順調ですし、認知度やトライアル率も通常の新製品を大きく上回っています。綾鷹とのカニバリもミニマムでおさまっています。これからはまろやか仕立てが綾鷹に並ぶ2本柱となるよう、じっくりと育てていきたいですね」

 

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